NNAカンパサール

アジア経済を視る February, 2018, No.37

[1〜3位]

アジアでは経済成長に伴い鉄道をはじめとする社会インフラ整備の需要が膨らみ、情勢は短期間で大きく動くことも多い。日本勢も売り込みに力を入れる中、最近のNNAのニュースから関連ランキングをまとめた。

2040年にガソリン車が全面禁止、バイクは35年電動化NNA POWER ASIA 2017年12月25日付

台湾

都市部の幹線道路は渋滞が頻発し、大気汚染の元凶になっている=台北(NNA撮影)

台湾行政院(内閣)の頼清徳院長(首相)は2017年12月21日、2040年にディーゼル車・ガソリン車の新車販売を禁止し、電気自動車(EV)に完全移行する方針を打ち出した。台湾では大気汚染が深刻化しており、12月中旬に台中市などで大規模な市民抗議活動が行われるなど、政府に対策を求める声が高まっている。政府は25年の「脱原発」実現に伴う再生可能エネルギーへの移行と並行し、ディーゼル車・ガソリン車からEVに完全移行する「EVシフト」を国家政策として推進していく姿勢だ。

計画では、自動車の全面EV化に先立ち、19年末までに2ストロークエンジンのバイク150万台と旧式ディーゼル車8万台を全面淘汰(とうた)。さらに、30年までに政府公用車と公共路線バス(約1万台)を全面EV化に移行する。

自動車業界関係者からは「拙速だ」との声も挙がるが、張景森・政務委員(無任所大臣)は、「30~35年にEV技術の大衆化が実現し、EVの競争力がディーゼル車・ガソリン車を上回るのは確実」と述べ、「2040年」の目標設定は現実的との見解を示した。

35年からはバイクもガソリン車の販売を禁止する方針だ。交通部(交通省)は電動バイクへの買い替えを促すため、1995年から免除している排気量150cc以下の小型バイクの「牌照税(ナンバープレート使用税)」徴収復活を検討する。

日系を含めた完成車メーカーには今後、EVシフト政策に沿った生産・販売戦略が求められることになる。

自動車産業、17年は生産や輸出など軒並み下落NNA POWER ASIA 2018年1月18日付

韓国

韓国産業通商資源省が1月16日発表した2017年通年の「韓国自動車産業動向」(速報値)によると、生産と国内販売、輸出はいずれも前年を下回った。生産台数は計411万4,900台で2.7%減。国内販売と輸出が共に不振だったことや、最大手の現代自動車を含めた一部メーカーでストライキが起き、操業がストップしたことなどが影響した。

国内販売は1.8%減の179万3,300台。国産車は自動車にかかる消費税の優遇措置(2015年8月~16年6月)で16年の販売が急増したことへの反動などで2.0%減の154万2,500台にとどまった。ただ、スポーツタイプ多目的車(SUV)や大型車の販売は好調だった。輸入車は独フォルクスワーゲンや独アウディの販売中断にもかかわらず、独BMWや日本車の売り上げが伸び、16年からほぼ横ばいの0.4%減の25万800台だった。

輸出は大型車とSUVの輸出が大きく伸びたものの、それ以外の車種は軒並みマイナスとなり、全体で3.5%減の252万9,200台。自動車景気の世界的低迷が背景にあるとみられる。

1~11月の地域別輸出量を見ると、欧州連合(EU、30.1%増)とロシア(54.3%増)向けは大幅に増えたものの、米国向けが8.0%減、中東向けが12.7%減、中南米向けが11.3%減など振るわなかった。

一方、17年は環境対応車が躍進した。ハイブリッド車(HV)は国内販売が33.5%増、輸出が2.3倍増。電気自動車(EV)の国内販売は現代自動車の「アイオニック・エレクトリック」が人気で、2.4倍増の1万3,541台だった。輸出も49.9%増えた。

フン・セン首相、会談で中国と300億円規模の覚書NNA POWER ASIA 2018年1月12日付

カンボジア・中国

カンボジアのフン・セン首相(手前左)と中国の李首相は首脳会談し、総額300億円規模の覚書を交わした=プノンペン(フン・セン首相のフェイスブックより)

カンボジアのフン・セン首相は1月11日、中国の李克強首相と首都プノンペンで会談し、総額18億人民元(約308億円)規模の覚書計19件を交わした。多分野でカンボジアの「中国化」が一段と強まりを見せている。

メコン川流域5カ国との首脳会議と、カンボジアと中国の外交関係樹立60周年を記念してカンボジアを訪問した李首相は「フン・セン首相の下、カンボジアに必要な支援を供与していく」と強調。中国が推進する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」と、カンボジアが推進する「産業開発政策2015―2025」の中で、両国の関係強化を図っていけるとの見解を示した。

覚書の主な内容を見ると、社会インフラ面では、(1)南西・東部での第2期送電線整備計画への融資(2)国道3号線の首都プノンペン―南部カンポット間の敷設(3)シアヌークビル高速道路事業への融資――などの大型案件が並ぶ。ソフト面の主な内容は(1)技術移転施設の開発促進(2)経済・技術協力の強化(3)農業近代化に向けた共同計画の策定――など多分野にわたる。

中国がカンボジアへの支援を強化するのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国への影響力を拡大させる狙いがあるとみられる。ただ、カンボジア国内では中国への過度な依存は危険との見方もあり、フン・セン首相は難しい舵取りを迫られていると言えそうだ。

出版物

各種ログイン