NNAカンパサール

アジア経済を視る April, 2022, No.87

【アジア・ユニークビジネス列伝】

「走る窓口で荷物発送」
「見えない障害を支援」

それを売るのか、そんなサービスがあるのか。アジアでは思いもよらない商品やサービスに出会う。現地ならではのユニークなビジネスから今回は、物流大手がマレーシアで始めた「走る発送窓口」と、シンガポールの国際空港による「見えない障害を支援する」取り組みを紹介する。


【マレーシア】
走る窓口で荷物発送
配送用トラック改造

DHLエクスプレスがトラックを改造した移動式窓口をマレーシアに導入(同社提供)

DHLエクスプレスがトラックを改造した移動式窓口をマレーシアに導入(同社提供)

ドイツの国際物流大手DHLエクスプレスのマレーシア法人は2月16日、トラックを改造した移動式窓口を導入したと発表した。中国を除き、アジア太平洋地域では初という。

移動式窓口は3月末まで首都クアラルンプール北部のソラリス通りに設置し、その後、首都圏各地を巡回する予定。今後の設置場所は、同社のソーシャルメディアやウェブサイトで確認できる。改造したトラックの上部には太陽光パネルを搭載しており、サービス窓口の電力は太陽光でまかなう。二酸化炭素(CO2)の排出削減に貢献できるという。

また、同社は宅配ロッカーの拡充に向け、宅配ロッカー運営の地場パーセル365と提携した。2月16日時点でクアラルンプール、スランゴール州、ペナン州、ジョホール州、サバ州の計74カ所に設置しているが、6月末までに300カ所に拡大する計画。利用者は荷物を受け取るだけでなく海外発送もできる。

マレーシアのみならず、DHLが展開する220カ国・地域に荷物の発送が可能。DHLの箱や封筒、その他の梱包材も利用することができる(DHLエクスプレス・マレーシア公式フェイスブックより)


【シンガポール】
見えない障害に配慮
チャンギ空港の支援

提供する資料の一部。「私は荷物をコンベアの上に置きます」と書かれている(CAG提供)

提供する資料の一部。「私は荷物をコンベアの上に置きます」と書かれている(CAG提供)

シンガポールのチャンギ国際空港を運営するチャンギ・エアポート・グループ(CAG)は、自閉症やダウン症、認知症など外見からは分からない障害がある人に空港で配慮の行き届いたサポートをする取り組みを始めた。

障害がある人向けの利用ガイドを提供。「チャンギ空港ソーシャルストーリー」と題し、空港へ向かうところから旅行を終えて空港を後にして自宅へ向かうまでの一連の流れを、写真と短文の説明で細かく解説している。

障害の情報は秘匿したストラップ。サポートや時間の融通が必要になる可能性があることを空港スタッフや周囲の人にさりげなく伝えることができる(CAG提供)

障害の情報は秘匿したストラップ。サポートや時間の融通が必要になる可能性があることを空港スタッフや周囲の人にさりげなく伝えることができる(CAG提供)

どの説明文も「私は〇〇で、△△をします」など、障害のある人でも認知しやすい書き方になっている。ウェブサイトからPDFでダウンロード可能で、印刷して本人が持ち運べるようにもした。

空港スタッフには、適切に支援できるよう訓練を行った。特に、目印としてケアアンバサダーのピンバッジを付けた約300人は、障害者支援団体のレインボー・センター・トレーニング・アンド・コンサルタンシーでの研修を経て、支援に必要なさまざまなスキルを持つ。今後さらに人数を増やす方針だ。

チャンギ・エアポート・グループのデイモン・ウォン副社長(顧客体験、地上業務、カスタマーサービス担当)は、「(空港という)慣れない場所での慣れない手続きは、外見では分からない障害のある人にとっては特にストレスが伴う。少しでも必要な支援を提供できたらと思い、取り組みを始めた」と語った。

出版物

各種ログイン