NNAカンパサール

アジア経済を視る December, 2021, No.83

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─ネット通販編─

今年も11月11日に中国インターネット通販最大の販促イベント「双十一」が行われ、電子商取引(EC)大手アリババグループの先行セールを含めた取引総額が過去最高の約9兆6,000億円にも上った。中国だけでなく、通販はすでにアジアの人々の生活に欠かせない消費手段となっている。アジア各地の記者たちから届いた「ネット通販」にまつわるコラムを紹介する。

中国インターネット通販最大の販促イベント「双十一」が行われた。アジア各国でも同様のイベントが定着している

中国インターネット通販最大の販促イベント「双十一」が行われた。アジア各国でも同様のイベントが定着している

中国

スマートフォンに届くダイレクトメール。毎年11月11日に合わせて行われるインターネット通販の販促イベント「双十一」を控え、セール情報が次々と送られてくるようになった。今年は当局がスパムを控えるよう通達を出したせいか、メール数は例年よりだいぶ少なくなった。

いつも利用している通販サイトをのぞいてみると、今年は環境に配慮した消費やチャリティーへの取り組みを前面に押し出したプロモーションを行っていた。世界的な取り組みが進む「カーボンニュートラル」(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)や格差解消を目指す「共同富裕」など、まさに今年の世相を反映したものだった。

セールはきょうが本番。例年であれば「取引額が過去最高!」といったニュースで世間がにぎわう。一風変わった今年のセール、どんなニュースが飛び出るか注目だ。(東)


インドネシア

インドネシアの電子商取引(EC)業者が、合同で開催するセール「全国オンラインショッピングの日(ハルボルナス)」。7月7日、8月8日にも行われてきたが、11月11日のセールは、特にプロモーションが多いと期待が高かった。

友人たちの中には、普段からECサイトの「欲しいものリスト」機能を使って、数十個から時には100個を超える商品をリストに追加している人がいる。当然、全てを購入するわけではない。給料が入った時にすぐに買える状態にしておくためや、セール時には、プロモ情報を受け取れるようにするためだという。面白いことに私の周りでは、男女関係なく「欲しいものリスト」を作成していた。

11日当日。あとは購入ボタンを押すだけ。セールが始まってすぐの午前0時1分に注文を完了。お目当ての商品を割引価格で手に入れることができた。(エ)


フィリピン

実店舗とインターネット通販は、どちらの方が商品の価格が安いだろうか。調査に行ってみると、家電製品はほぼ互角だった。機能の確認や店員への質問などがその場でできることが実店舗の強みだが、現場に行く手間が省けるネット通販も捨てがたい。

同じ数字が並ぶ「11月11日」は特大セールが実施される。新型コロナウイルスの影響で売り上げ減に頭を抱える小売業者は書き入れ時となり、一発逆転のチャンスが転がる。消費者もお目当ての商品めがけ、スタートダッシュを決めたいところだろう。

外出・移動制限が緩和されたことに伴い、今年は実店舗を訪れる人が多いかもしれない。忍び寄るのは感染再拡大の影。保健省は警鐘を鳴らす。飲食店に入ると、客の多さに圧倒される。店員もクリスマス期間で浮かれ気味だが、少しくらいは羽を伸ばしたい。もう「制限」はこりごりだ。(D)


インド

大手インターネット通販企業が世間を騒がせている。同社の売買プラットフォームで大麻が売られていることが、中部マディヤプラデシュ州の警察の捜査で明らかになったためだ。この企業はこれまでにいくつもの不正行為で調査を受けており、今回の件が同社をますます窮地に追い込んでいる。

インドの電子商取引(EC)企業は模造品販売をなくそうと努力している。今後はさらに、違法薬物の販売に自社のプラットフォームが使われないよう、各社は新しい対策を講じなければならない。

当局の引き締めは日に日に厳しくなっている。さらに、複数の団体が今、大麻の販売を理由に大手EC企業に対して厳しい対策を取るよう求めている。違法薬物の売買に自社のプラットフォームが悪用されるのを阻止できない場合、悪用された企業は深刻な事態に陥る恐れがある。(虎)


韓国

冷凍庫を開けると、あるものでいっぱいになっていることに気付いた。生鮮食品をオンラインで購入したり、ケーキをテークアウトしたりすることが多くなった昨今、知らず知らずのうちに保冷剤が増えてしまっていた。

一般的な保冷剤の中身はプラスチックの一種である高吸水性ポリマーという素材でできている。燃えにくくて水に溶けにくいため、一般ごみとして処理すると環境へ悪影響を及ぼすことが指摘されている。廃棄方法を調べていると、住民センターに回収箱が設置されていることを知った。汚損しているもの以外は全て回収対象で、洗浄と殺菌処理を施した後、地元商店街のスーパーや飲食店に配布し再利用するという。

環境に優しい上、保冷剤を購入する店側の負担を減らすこともできるこの取り組み。「サスティナブル(持続可能)」は身近なところにあった。(辰)

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