NNAカンパサール

アジア経済を視る March, 2021, No.74

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─世知辛い世の中編─

新型コロナウイルス対策として長期に渡り活動制限令が発令されているマレーシア。景気は冷え込み、首都クアラルンプールの繁華街ブキビンタンでもシャッターを閉めたままの店が目立つ=マレーシア・クアラルンプール(NNA撮影)

新型コロナウイルス対策として長期に渡り活動制限令が発令されているマレーシア。景気は冷え込み、首都クアラルンプールの繁華街ブキビンタンでもシャッターを閉めたままの店が目立つ=マレーシア・クアラルンプール(NNA撮影)

マレーシア

IT系ベンチャーに勤める夫が、連日オンライン採用面接をやっている。より良い条件を求めて短期間で転職を繰り返す「ジョブホッパー」が多いと言われる当地。「短期間で転職を繰り返していますね」「ポジションが詰まっていて昇進できなかった場合どうしますか」と質問事項は転職と昇進に関するものばかり。志望動機のようなものは一切聞かない。

マレーシアの就労環境は日本に比べたら牧歌的に思われがちだが、夫の職場はバブル期のサラリーマンも真っ青のモーレツぶり。午前様になることもしばしばで、景気が冷え込んでいるコロナ下でも耐えられず次々辞めてしまうという。

無事1人採用したが、どうも働きぶりが思わしくないよう。上司に相談すると一言。「じゃあ、辞めてもらったら?」。定着してほしいのかと思えば、採用する側もドライ。ジョブホッパーもむべなるかな。(旗)


韓国

日本の第35回童謡こどもの歌コンクールで銀賞を受賞した2歳の村方乃々佳ちゃん。韓国でもそのかわいらしさが話題となり、1月4日に開設されたユーチューブのチャンネル登録者数は30万人を上回った。

最近ではアイドルグループ少女時代のテヨンさんが、乃々佳ちゃんをまねて『いぬのおまわりさん』を歌う映像を会員制交流サイト(SNS)でシェアし、「大好きです。これからもいい歌たくさん歌ってくださいね。応援しています」とのコメントを載せた。だが、そこに反日的で悪質なコメントが書き込まれて物議を醸した。彼らは乃々佳ちゃんを応援する韓国の公式ファンページでも中傷を続け、ついに乃々佳ちゃん側は法的対応を予告する事態に。

ネット上でのヘイトスピーチは以前から社会問題となっているが、むやみに人を傷つける行動は国際的な恥だと気付いてほしい。(智)


タイ

2月12日、旧暦で新年を迎えた。タイ政府は昨年11月、この春節(旧正月)までに中国人旅行者の受け入れを本格的に再開したい考えを示していたが、国内で新型コロナウイルス感染症の第2波が発生し、それどころではなくなった。ならば国内旅行を振興しようと、特別公休日を追加して3連休にしたが、消費者心理は冷え込んでしまっているようだ。

どんよりとした雰囲気とは対照的に、商業施設はデコレーションで彩られ、春節商戦が繰り広げられている。むしろ昨年より華やかさが増しているような気がする。中国人旅行者がほとんどいない今年は、中華系タイ人の消費喚起に注力する――。大型商業施設を運営する小売企業は意気込む。

小売企業と消費者の温度差を感じずにはいられないが、企業は消費者の心に火を付けることができるのだろうか。赤い服を着て街ゆく人々の動向が気になるところだ。(香)


インドネシア

新型コロナの感染者への差別や偏見は、インドネシアでも見られる。コロナに感染した友人は陽性と判明した時、保健所や町内会長にも連絡した。普段なら病気の時にはご近所同士で助け合って食べ物を差し入れるのに、隣人から家の前を通ることすら避けられてしまった。回復した後も、本人はおろか家族も2カ月にわたって避けられ、差別を受けた。

陽性だと分かっても報告しない人も出てきている。差別を受けたくないし、感染者と報告すれば何かとわずらわしいというのが言い分だ。政府への報告がなされなければ、正確な感染経路を追うこともできない。コロナ感染者への差別は、非常に危険である。

当地での累計感染者数は120万人を超えている。政府は感染予防策の周知だけではなく、コロナ感染者が差別ではなく、支援を受けられるように教育や情報提供を進めていくべきだ。(エ)

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