NNAカンパサール

アジア経済を視る March, 2021, No.74

【アジア・ユニークビジネス列伝】

「ムスリムにノンアル除菌剤」
「こだわり過ぎのパンダ人形」

それを売るのか、そんなサービスがあってもいいのか。アジアは日本では思いもよらない商品やサービスに出会う。斬新で、ニッチで、予想外。「その手があったか!」と思わずうなってしまう、現地ならではのユニークなビジネスを紹介する。


【インドネシア】
ムスリムにノンアル除菌剤
フマキラーが仕掛ける新商品

フマキラーインドネシアが生産販売を始めた除菌剤「ベープ・サニテック」。病院や工場、学校などでの使用を想定した業務用の5リットルサイズのほか、60ミリリットルの携帯用サイズも(同社のホームページより)

フマキラーインドネシアが生産販売を始めた除菌剤「ベープ・サニテック」。病院や工場、学校などでの使用を想定した業務用の5リットルサイズのほか、60ミリリットルの携帯用サイズも(同社のホームページより)

フマキラーは、インドネシアで除菌剤「VAPE SANITEC(ベープ・サニテック)」の生産販売を開始した。同国では30年以上にわたり蚊取り線香や殺虫剤などを製造販売してきたが、除菌剤を生産するのは初めて。国内では珍しいノンアルコールタイプの除菌剤で、新型コロナウイルスの流行が拡大する中、イスラム教徒(ムスリム)が多いインドネシアで需要を取り込む。

同商品は、日本では昨年3月に「ウイルシャット ノンアルコール除菌プレミアム」として発売されており、原材料の全てに食品成分を使用。細菌やウイルスを99.99%除去する効果があるという。

フマキラーが日本で取り扱う製品にはアルコール除菌剤もあるが、「インドネシアではイスラム教徒に配慮してノンアルコール処方とすることを決めた」と開発を担当する杉山隆史マネジングディレクター。

フマキラーインドネシアが除菌剤を生産するカラワン工場(同社提供)

フマキラーインドネシアが除菌剤を生産するカラワン工場(同社提供)

実は新型コロナウイルスが流行し始めた当初、インドネシアの保健当局が早い段階でアルコール除菌剤の使用を推奨したことから、消費者には嫌悪感もなく受け入れられていた。だが、その一方で手荒れを気にする人がいることに加え、日中の気温が上がるインドネシアでは火気厳禁のアルコール除菌剤を車内に放置すれば危険が伴う。

杉山氏は「ベープ・サニテック」について、ノンアルコール処方であることに加え、グレープフルーツの種子エキスという天然抗菌成分を使用した100%食品成分のため、「子どもやペットにも安心して使っていただける」と強調。今後は日本で取り扱っているような、さまざまな用途への商品展開も視野に入れていると明らかにした。


【台湾】
こだわり過ぎのパンダ人形
生後12日の姿を自宅でも

生後12日の円宝(ユエンバオ)(写真下)と、1月から販売開始されたぬいぐるみ(上)。1体999台湾元(約3,700円)で3,000個限定(台北市立動物園提供)

生後12日の円宝(ユエンバオ)(写真下)と、1月から販売開始されたぬいぐるみ(上)。1体999台湾元(約3,700円)で3,000個限定(台北市立動物園提供)

昨年6月28日、台北市立動物園で誕生したメスのジャイアントパンダ「円宝(ユエンバオ)」。12月末から一般公開され、愛くるしい姿で人々を魅了しているが、そのユエンバオに負けず劣らずかわいいと話題なのが、同園で発売されたパンダのぬいぐるみだ。

モデルはもちろんユエンバオ。ただ、その姿は現在の子パンダではなく、生後12日の生まれたてほやほやの姿というのがみそ。同園はメーカーと協力し、重さが生後12日当時のユエンバオの体重と同じ450グラムになるようぬいぐるみを製作。体長やピンク色の皮膚なども忠実に再現し、当時のユエンバオを抱いたような感覚が味わえる。

同園によると、日本の上野動物園が同様のパンダのぬいぐるみを販売していたことから着想を得た。ただ、リアルにこだわった結果、ぬいぐるみとしては重すぎることから生産元から空輸した際、中に何か入っているのではと税関で「疑わしい物品」として止められるハプニングも。

現在、開園中はほとんどの時間を寝て過ごしているというユエンバオ。このぬいぐるみがあれば、いつでも触れ合いタイムが楽しめる…かも?

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