NNAカンパサール

アジア経済を視る February, 2020, No.61

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─新年快楽!アジアのお正月編─

(新華社)

中国

元日に自室でゴロゴロしていると、ノックの音とともにハウスキーパーの女性が入ってきた。てきぱき作業をこなしながら「日本には帰らないのか」とたわいもない会話に移る。彼女との交流は、年末年始休暇のささやかな楽しみの一つだった。

安徽省に15歳の息子を残し、上海に出稼ぎに来ている彼女。ベッドシーツを整えながら、息子とは毎日電話しているよと笑顔で話す。元日から仕事をこなす彼女をねぎらいつつ、「きょうは休日手当が付くね」と振ると、さらにうれしそうな表情になった。

中国の今年の春節(旧正月)は1月25日。クリスマスや正月には盛り上がらない中国の街中だが、これから春節に向けて赤い装飾で彩られ、にぎやかになっていく。正月気分がまだ抜けないこちらを尻目に、彼女は今が年末。帰省までのカウントダウンが始まっているせいか、作業は普段よりも早かった。(亀)


マレーシア

毎年恒例、元日に開催される華人組織の新年会に今年も出席した。広東省某市から移民した華人子孫の集まりで、中華料理店の巨大な宴会場に円卓をぎゅうぎゅうに設置し、約600人の会員が一堂に会する。

席札も漢字、メニューも漢字、式次第も漢字、プロジェクターの字幕も全て漢字。カラオケは中国歌謡曲。義母はチャイナ服を着て羽根扇を手に、ステージで歌い踊っていた。多民族国家マレーシアではなかなか目にしない華人色の濃い集まりだ。

今年は孫を連れ歩いて義父母は鼻高々。以前にも触れたが、義父の11人兄弟のうち孫がいるのはわが家だけ。普段無口な義父がしきりに孫自慢をしていた。義父母孝行にはなったが、このイベントがある限り年末年始を日本で過ごすことはないだろう。こたつに入ってみかんを食べながら箱根駅伝を見る正月はもはや遠い。(旗)


香港

自宅マンションを出るとすぐ前の歩道に人だかりが。春節(旧正月、1月25日)を迎えるために玄関などに飾る「春聯」の無料手書きサービスをしていたのだった。提供していたのは先日の香港区議会(地方議会)選挙で当選した民主派議員。支援してくれた地域住民へのお礼だという。

地元の書道家と思われる若者が、金の飾りを施した真紅の用紙に、「身体健康」、「万事如意」などの縁起の良い文言を何枚も書いている。選挙権がなく投票していない当方の依頼にも快く応じて書いてくれた。

議員が春聯のサービスをしていたこの日は、旧正月準備で年末の大掃除などを始める旧暦12月24日だった。そうとは知らずに持ち帰った春聯を飾るために玄関を掃除。ドアに春聯を貼るとふんわりと墨の香りが部屋に漂った。後日は部屋全体も掃除しなければ。(保)


韓国

韓国の旧正月には、家族が集まりテレビを見る家庭が多いという。韓国には日本の紅白歌合戦のような年末年始の代名詞となる番組はない。そこで誰もが楽しみにしているのは、各局が放送する「映画特選」だ。

連休期間中は、各局で朝から深夜まで次々と人気映画が放送される。前年に公開された準新作映画から名作モノまで、映画専門チャンネルも顔負けのラインアップ。ノーカット版が基本でCMがあっても1〜2回と、家でも映画の世界にしっかり入り込める。

外に出れば正月映画が封切られている。大物俳優を起用した映画がずらりと並び、家族3世代で劇場に訪れる姿も散見される。老若男女問わず連休中に、映画漬けの日々を送る人も多いのだとか。韓国映画のレベルの高さは、こうした環境から生まれているのだろう。(公)


シンガポール

シンガポールのジョブマッチングサービス会社が「クリスマスから旧正月(春節)に増えるアルバイト」のランキングを公表した。1位は「大掃除の手伝い」。日本では年末に家中を掃除するが、こちらは春節前。雇用も生まれるし、誰かに頼んでやってもらおうという感じだ。

「クリスマスプレゼントや紅包(ホンバオ、お金を包む赤い封筒)のラッピング」「バクワ(バーベキューポーク)の買い出し」といったアルバイトも。人口の大多数を占める中華系の人は、親戚に配る紅包をたくさん用意し、贈り物用のバクワは長蛇の列に並んで人気の店のものを買わなければならない。見事に需要にマッチする。

イベントごとに同伴する「友人・恋人のレンタル」も9位にランクインした。家族や友人の集まりで、何かと気を遣うことが多いのは万国共通。面倒事をお金で解決するのも一手だろう。(薩)


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