NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2019, No.56

一帯一路の現場から

アジアを走れ、次世代モビリティー

「100年に1度の変革期」にあると言われる自動車産業。メンテナンスの手間が少ない電気自動車(EV)、トラック運転手不足や過疎地の交通弱者の「ラストワンマイル」を救う自動運転、配車・カーシェアによって自動車は所有から共有へと、「自動車」という言葉の意味が変わりつつある。2030年頃の人々のモビリティー(移動)はどうなっているのだろうか。乗用車のほとんどがEVになったり、歩行者と自転車が混在する住宅街を全自動運転車が走ったり、アジア大都市の渋滞が解消したり─ということはなさそうだ。しかし次の100年、いや10年後に向けた自動車産業やモビリティーの価値観を変える萌芽(ほうが)や挑戦は、既にアジアや世界各地で起こりつつある。各地の様子を追ってみた。

  • 次世代モビリティー 溶ける二輪・四輪の境界

    次世代モビリティー
    溶ける二輪・四輪の境界

    中国首都の北京から南へ400キロメートルにある山東省・聊城市の朝。ここに次世代モビリティーの現実が一つある。地元の小学校前は、おもちゃ箱をひっくり返したかのようににぎやかだ。次々に校門前に横付けされるさまざまなデザイン・形状の電動三輪車や小型四輪車。道路を横断していると逆走中の小型車にぶつかりそうになった。日本人が考える「EV」の想像を超えるEVが縦横無尽に走っている。正式なナンバープレートがない未登録車が多い。

  • 自動運転の未来都市、実現なるか

    自動運転の未来都市、
    実現なるか
    中国・雄安新区訪問記

    中国政府が世界最高のハイテクと環境対応の未来都市「雄安新区」を北京近郊に建設すると発表したのは2017年4月だ。「国家、千年の大事業」とされ人口2,000万人を超える北京の機能の一部を、東京23区の3倍近い広大な土地(面積1,700平方キロメートル)に移転させる狙いだ。発表から1年後にはモデル地区とも呼べる「雄安市民サービスセンター」が完成。自動運転バスや無人移動販売機、無人清掃車が走り回り、スーパーマーケットも無人という未来型都市ができたと報じられているが、実際はどうなっているのか。

  • 自動運転車のある風景

    自動運転車のある風景
    日本・中国・欧州で乗ってみた

    「自動運転」という言葉が新聞紙面を賑わしている。トラック運転手不足の解消、相次ぐ高齢ドライバー事故の対策や過疎地で移動手段を確保するという「ラストワンマイル」の解決策として期待が高まる。日本、中国、欧州の自動運転の現場を歩き、モビリティーの将来像を考えてみた。

  • 今年はMaaS元年?

    今年はMaaS元年?
    新たなモビリティーの可能性
    トヨタとフィンランド大手に聞く

    「今年は日本版MaaS元年」。国土交通省が今年6月に新たなモビリティー(移動)についてまとめた指針の中で使った言葉だ。シェア自転車や鉄道といった複数の移動手段の経路検索・予約・決済を一つのサービスとして捉える「MaaS(マース、モビリティー・アズ・ア・サービス)」。この概念を2016年にフィンランド首都ヘルシンキで事業化したMaaSグローバルは、日本進出の準備を進めている。同社のサンポ・ヒエタネン最高経営責任者(CEO)と、トヨタ自動車が福岡市で取り組む同様のサービス「マイルート」の責任者である未来プロジェクト室の天野成章室長代理にそれぞれ話を聞いた。

  • 奇想天外か近未来か

    奇想天外か近未来か
    欧州の最先端モビリティー

    架線で充電!「eハイウェイ」

    独電機大手シーメンスは、スウェーデン商用車大手スカニア、地元輸送会社と連携し、架線からトラックに給電する「eハイウェイ」システムの実証を独フランクフルト近郊のアウトバーンで5月7日に開始した。トロリーバス(架線式バス)のトラック版ともいえ、2022年まで実証する。約10キロメートルの架線区間の外でトラックのバッテリーが不足した場合は軽油で走行する。シーメンスとスカニアはスウェーデンでも16年から実証を継続している。

  • 一帯一路の自動車生産

    一帯一路の自動車生産
    ロシア・欧州市場にらむ吉利汽車

    東はロシア、西は欧州連合(EU)加盟国ポーランドに接するベラルーシ。日本人にはなじみの薄い国だが、ベラルーシは近年、中国とEUを結ぶコンテナ鉄道輸送「中欧班列」の欧州の玄関口として物流業界では注目を集めつつある。中国の経済圏構想「一帯一路」の沿線に位置し、中国から地続きという地の利を生かし、2017年11月には中国地場ブランド首位の吉利汽車(ジーリー)の生産拠点が稼働した。人口1,000万人弱の国で、吉利はどんな戦略を描いているのか。現地を訪問した。

  • 日系メーカーの浮沈を握るアジア

    日系メーカーの
    浮沈を握るアジア
    成長市場で優位性保てるか

    日系シェアはインドネシア98%、タイ86%

    アジアは日本の完成車メーカーにとって重要な位置を占める。1人当たりの国内総生産(GDP)が3,000米ドル(約32万円)を超えると本格的な自家用車普及(モータリゼーション)が到来するとされるが、それぞれ人口1億人前後を抱えるフィリピンやベトナムがこれに相当し、さらに14億人の巨大市場インドが次に控える。

  • モータリゼーションめぐる課題解決に向けて

    モータリゼーションめぐる課題解決に向けて
    交通事故、渋滞、大気汚染、温室効果ガス

    中間層が厚みを増し、念願のマイカーを手に入れる人々が増えているアジア。急速な自動車の普及(モータリゼーション)は同時に、慢性的な交通渋滞や排ガスを原因とする大気汚染、交通事故などの社会問題を引き起こしている。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared/Service(シェア・サービス)」「Electric(電動化)」のいわゆるCASEは、アジアのこうした課題の軽減に新たな波をもたらそうとしている。

  • 電動化、ASEANでじわり

    電動化、ASEANでじわり
    本格普及は25年以降か

    電動化をはじめとする自動車に関する先進技術の普及は、先進諸国とアジアの新興国の間ではタイムラグが発生すると考えられている。米コンサルタント会社ベイン&カンパニーは、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内では、先進国に比べて、政府の電気自動車(EV)購入奨励策が少ないことや、メーカーが先進国向けの生産を優先し、ASEANへの供給台数が少ないことで販売価格が高くなっていることが普及のネックと指摘する。量産化が進み、販売が本格化するのは2025年以降とみている。

  • 電動化、ASEANでじわり

    次世代技術でアジアを拓く
    日系新興企業の挑戦

    自動車が普及の途上にある東南アジアでは、電気自動車(EV)や自動運転などの次世代技術の浸透は、先進国に比べて遅れると考えられている。そうした中、いち早く東南アジア市場で、次世代技術を使った事業に乗り出した日系企業がある。彼らはアジアのモビリティー市場にどのような未来像を思い描いているのだろうか。

  • 現地法人の人材不足、経理の“見える化”で乗り切れ

    現地法人の人材不足、
    経理の“見える化”で乗り切れ

    クラウド型国際会計サービス「GLASIAOUS」の魅力

    成長するアジア各国で日本企業の事業は活発化しているものの、現地法人の中核となる優秀なローカル人材が不足している。特に会計・経理や財務部門を統括するマネージャー層の流出は、事業の不安定化をもたらしかねない─。人材不足という課題が立ちはだかる中、現地の日系会計事務所と連携しながら記帳などを効率化し、駐在員らが営業マーケティングや生産管理などそれぞれの“本業”に専念する仕組みを提供してくれるのが、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供しているクラウド型国際会計アウトソーシングサービス「GLASIAOUS(グラシアス)」だ。

  • アジアで存在感、大田区企業のアイデア技術

    アジアで存在感、
    大田区企業のアイデア技術

    切削、穴開け、曲げ、溶接、プレス、研磨、めっき、組み立て、設計──ものづくりに関わるさまざまな技術力を持った製造業3,500社が集積する東京都大田区。現代のグローバル化したものづくり時代にあっても、その創意工夫と高い技術力で成長するアジア市場に挑む大田区企業がある。

  • 工業団地&インフラマップ 〜自動車メーカー編〜

    ASEAN+インド一覧

    工業団地&インフラMAP
    〜自動車メーカー編〜

    日系自動車メーカーの牙城とされる東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の自動車市場。各国の自動車市場の推移と販売台数のメーカー別シェアを掲載した。ASEAN全体では日系メーカーのシェアは8割を超え、ユーザーからの日本ブランドへの信頼は高い。今回から新たに、成長著しいインドの工業団地&インフラも掲載する。

  • 国事業を成長の軸に戦略転換で高成長図る

    【トップは語る】

    中国事業を成長の軸に
    戦略転換で高成長図る

    二トリホールディングス代表取締役会長兼CEO 似鳥昭雄

    「お、ねだん以上。ニトリ」のキャッチフレーズで家具・インテリアの製造・小売りを全国展開するニトリホールディングス(ニトリHD)。創業者の似鳥昭雄会長は、1972年に視察した米国西海岸の住まいの豊かさに衝撃を受け、家具・インテリアの提供を通じて日本人の暮らしを高めようと誓った。それから半世紀。新たな使命として、アジアの人々の暮らしを豊かにすることを目指している。

  • 途上国でコンテナ港を革新

    【アジアインタビュー ①】

    航途上国でコンテナ港を革新
    ICTSIのラソン会長兼社長

    フィリピンやインドネシア、中国をはじめとするアジアのほか、中東や南米、アフリカなど世界19カ国・地域で32の港湾を運営・管理するフィリピンの港湾運営大手インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービシズ(ICTSI)。米中貿易摩擦が激化し、グローバル経済が不安定化する中でも、エンリケ・ラソン会長兼社長は長期的な視野で世界経済の動向をみつめ、逆にチャンスを捉えることの大切さを説く。途上国の貿易を後押しするコンテナ港の効率化はこれからも必要とされるとして、ICTSIの存在意義に自信を示す。

  • アジアに未来あり、思うほど差はない

    【アジアインタビュー ②】

    アジアに未来あり、
    思うほど差はない
    総合家電メーカー目指す
    アイリスオーヤマ

    プラスチック収納ケースなどの生活用品を製造販売してきたアイリスオーヤマ(仙台市)。旧来の大手電機メーカーが採算悪化で家電事業を次々と手放す中、こうした家電メーカーの早期退職者らを積極的に採用し、流れに逆行して「総合家電メーカー」を目指す。「日の丸家電」が苦しめられた中国や韓国市場では、サーキュレーター(空気循環器)や布団乾燥機など「なるほど家電」で攻める。ニッチ市場で勝負を挑む大山晃弘社長にアジア戦略を聞いた。

  • 若者は海外を見よ

    【アジアインタビュー ③】

    若者は海外を見よ
    丹羽宇一郎氏

    伊藤忠商事入社後、世界各国との食糧貿易で頭角を現し、社長、会長まで上り詰め、反日デモが激化する北京で初の民間出身の中国大使を務めるなど激動のアジアをみてきた丹羽宇一郎氏(80)。米中貿易戦争など新たな局面を迎えた世界情勢にどう対峙していくべきか。NNAの岩瀬彰代表取締役社長がインタビューし、日本と日本人ビジネスマンへの提言を聞いた。

  • アジアの30年

    アジアの30年
    「あの時、その時、NNAは」
    記念座談会

    香港で創業以来30年間、「アジアの今」を伝え続けてきた株式会社NNA。座談会で記者らが激動のアジアの30年間を振り返るとともに、NNAの情報発信のあり方を語り合った。

  • ビール編

    【アジア業界地図】

    ビール編

    キリンビールの調べによると、2017年の世界のビール生産量約1億9,090万キロリットルのうち、アジアは全体の32.5%を占め、地域別で9年連続首位だった。国別では、中国が16年連続で首位。ただし、ベトナム、インド、フィリピンがそれぞれ前年比で15.4%、1.8%、7.9%の増加となった一方で、中国が3.9%減にとどまったことで、アジア全体では1.4%減少した。

  • タイのコインランドリー市場に勢い

    【アジア取材ノート】

    タイのコインランドリー市場に勢い日本企業も参入、都市で需要狙う

    近代化に伴い生活様式が変わりつつあるタイで、国内外の企業が相次いでコインランドリー市場に参入している。日本企業では、遠隔管理型コインランドリー店舗の企画・開発・運営を手掛けるWASHハウス(宮崎市)が6月、同社初の海外拠点となる合弁会社をタイに設立。既存の企業に加え、新たに参入する各社が、核家族や1人暮らしの若年層が多い都市部で需要の取り込みを狙っており、競争激化が見込まれる。

  • 冬虫夏草とチベットの生活

    【プロの眼】辺境写真家 栗田哲男

    第2回
    冬虫夏草とチベットの生活

    チベット地域やインドなどアジアの辺境の人々と文化をカメラに収めている辺境写真家の栗田哲男氏。今回は、中国奥地の高山地帯で高級生薬「冬虫夏草」を採取して暮らすチベット族の家族の姿を紹介します。

  • フランス植民地時代の残照色濃く残る街

    【アジアの穴場】

    フランス植民地時代の残照色濃く残る街
    ターケーク(ラオス中南部)

    東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも最貧国、日本からの直行便がなく最も遠い国、そして「何もない国」(旅行会社の宣伝文句)といろいろな形容詞で語られるラオス。だが、その各地にはかつての宗主国フランスの面影が色濃く残っている。中南部メコン川沿いのカムムアン県の県庁所在地ターケークもそうした地方都市の一つで、歴史と仏教の街である。

  • newsselection

    アジアで活用進むAI
    日本企業、
    人々の暮らしを便利で豊かに

    ディープラーニング(深層学習)の開発により飛躍的に進歩したAI(人工知能)技術。いまやロボットなど一部の専門分野だけでなく医療や家電にまで浸透し、われわれの生活を豊かにしている。2045年には人工知能が人類を超えると予測される中、AIはアジアの経済社会にどんな変化をもたらすのか。日進月歩で成長するアジアのAIの最新記事をNNA POWER ASIAからセレクト。

  • 『専門知は、もういらないのか』

    【アジアの本棚】

    『専門知は、もういらないのか
    ──無知礼賛と民主主義』

    「反知性主義」に押し流される世界

    米国の「反知性主義」については、日本でもある程度知られるようになってきた。医学や法律から外交まであらゆる専門知識を軽視し、無知で構わないという一種の居直りに近い考え方のことだ。

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