NNAカンパサール

アジア経済を視る December, 2018, No.47

「東西」の本から「亜州」を読み解く

アジアの本棚

『未来の中国年表-超高齢大国でこれから起こること』

近藤大介 著


「人口はうそをつかない」

最近、ベストセラーになった『未来の年表』という本がある。人口動態の予測をもとに高齢化によるあまり明るくない日本の未来の姿を描いた内容だが、今回紹介する本は日本以上に急速に高齢化が進む中国の未来を予測している。

2018年5月末時点での中国の人口は13億9,216万人。日本の11倍で、言うまでもなく世界最大。私が共同通信の記者で北京駐在だった05年の年明けに、夜勤でテレビを見ていると、唐突に病院の内部が映り「13億人目の中国人が誕生しました」というニュースが報じられて、慌てて速報したのを思い出す。なぜその日のその時間に北京の病院で生まれた子供を「13億人目」と認定したのか、など今でも謎は多いが、それから13年でさらに9,000万人も人口が増加しているわけだ。しかし、中国もこれから歴史上初めて戦争などによらない平時の人口減少を体験、それに伴って日本の後を追って高齢化が加速してゆく。これは過去の一人っ子政策が招いた少子化の結果だ。

本書によれば、中国の専門家が人口ピークを迎えるとみているのは35年ごろで、おおむね15億数千万人で天井を打ち、国連の予測では24年にインドに抜かれる見通し。さらに50年には、中国の人口は今よりも少ない13億6,400万人前後まで減少、なおかつ約5億人が60歳以上になっているとみられている。政府は一人っ子政策を転換したが、教育や住宅など子育てコストの高さを警戒する若い世代には何人も子どもを作る気はなく、17年の出生数は逆に減少した。

日本の高齢化も大問題だが、年金や介護保険などインフラをある程度整備しておく余裕があった。しかし、中国はこれからの20~30年で何もかも準備しないとならず、「未富先老(富む前に老いる)」という強い懸念がある。しかも、高齢化は中国の競争力を支えて来た労働人口の急速な減少を伴う。近い将来「人手だけは常に豊富」といういまの中国のイメージはがらりと変わってゆくはずだ。

いま米国がしきりに叩こうとしている、中国政府の産業強化計画「中国製造2025」も、人工知能(AI)を駆使した無人化や自動化が柱のひとつになっている。中国がこの計画では簡単に米国に妥協できないのは、今後の労働人口急減への対策の面があるからだと分かってくる。指導部のメンツの問題だけではない。

筆者は中国駐在経験のある出版社の編集者だが、同僚に「人口の観点で中国の未来予測を書いてみてはどうか」と言われたのが執筆のきっかけだったという。中国の経済データには政治的な水増しなどいろいろ問題があるが、人口統計は相対的には信頼度が高いとされ「人口はうそをつかない」と言われる。本書には、男性が女性より3,000万人多い男女人口のアンバランスの問題、大学生が3,700万人と日本の13倍いる事実、中間層の定義(筆者によれば現在のパスポート保有者1億2,000万人がひとつのメドだが、20年には倍の2億4,000万人になるとの予測も)など興味深いデータを多々引用している。いまの中国社会・経済の中核データを頭に入れる上でも手ごろなデータブックとも言える。


『未来の中国年表-超高齢大国でこれから起こること』

  • 近藤大介 著 講談社
  • 2018年6月発行 800円+税

ベストセラー『未来の年表』の手法である、「人口」の観点から未来を予測する方法を、人口超大国の中国にあてはめて解説。筆者の近藤大介氏は東京大学卒業後に講談社入社。講談社(北京)文化有限公司副社長を経て、現在、『週刊現代』編集次長。Webメディア『現代ビジネス』コラムニスト。

【本の選者】岩瀬 彰

NNA代表取締役社長。1955年東京生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業後、共同通信社に入社。香港支局、中国総局、アジア室編集長などを経て2015年より現職

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