NNAカンパサール

アジア経済を視る December, 2017, No.35

【アジアに行くならこれを読め!】

『世界トップシェアを勝ち取った田舎の小さな工場の奇跡』

著者が社長を務める塗料メーカー、オキツモ(三重県名張市)は1990年代後半、初の海外本格生産拠点としとてタイに工場を設ける。著者にとっては海外赴任も、責任者を務めるのも、工場を建設するのも、何もかも初めて。そんな人間ができるのは「タイのことは何も分からないので教えてください」と謙虚にタイ人に接すること。当時はまだ若者だったタイ人スタッフのうち5人が、二十数年たった今も経営幹部としとて現地法人を引っ張っているという。同社は現在までに中国、インド、欧米に計7拠点を置いている。

もともと耐熱塗料や潤滑塗料、光触媒塗料などでシェアを持つが、新たなヒット商品を模索していた。電子基板用レジストインキという、これまでと全く異なる畑違いの製品を開発できたのは、良いパートナーと出会い、提携を始めたことが大きいという。即断即決のオーナー企業も少なくないアジアでの事業体験から、商談では「こちらが条件や内容を詰めてから会わないと、ぐずぐずしているうちにその話が流れて」しまうこともしばしばあると説く。

アジア通貨危機、リーマンショックなどを経てもなお、ニッチな製品で生き残り、伸びてきた同社。ものづくりや技術に自信を持ち、アジアへの進出を考えている日本の中小企業にとって本書は参考書の一つになるだろう。


『世界トップシェアを勝ち取った田舎の小さな工場の奇跡』

  • 山中重治 幻冬舎メディアコンサルティング
  • 2016年10月発行 1,300円+税

創意工夫がなければ生き残れない(本書より)

目次 のぞき見
  • ・「社長!2億円の受注がなくなりました!」
  • ・異国での苦境
  • ・「放熱」という新領域
  • ・「開発先行型企業」からの脱皮
  • ・アメリカ、中国、東南アジア、ヨーロッパへ

山中重治(やまなか・しげはる)

1967年三重県生まれ。耐熱塗料、光触媒塗料メーカーのオキツモ(三重県名張市)社長。会社経営では「選択と集中」「合議制」などを排し、ニッチかつユニークな製品を生み出す。

『「世界」で働く。』

ビジネスの基本は根回し、人を介さずにビジネスなし、違う考え方を受け入れる――。アフリカでのビジネスで大成功している著者が示すこれらの秘訣は、もちろんアジアでも通じることだ。いや、もうアジアやアフリカなどの地域で分類するのではなく、新興国・途上国か否かで分けた方がいいのだろう。冒頭で見たように、アフリカでもアジアでも、コツは驚くほど似ているのだから。

低廉な労働力などを求めてアジアへ出てきた日本企業。それが高騰してきた近年はアフリカもスポットライトを浴び始めている。

そのアフリカでタフな交渉を続けてきた著者によると、日本人が「持ち帰って検討します」と回答すると、相手はがっかりするという。「自分の目の前にいるのはこんな小物なのか」と。このような答え方は日本でしか通じないようで、中国をはじめとするアジアでも事業展開している著者は(反応は)「それらの国々でもほぼ一緒」と指摘する。いまアジアで汗をかいているビジネスパーソンには思い当たる節があるのではないか。

アフリカで政府系の国際競争入札に応札する場合、ライバルは価格競争力のある中国企業、インド企業になるという。日本を含むアジア勢がアフリカでも火花を散らす。もちろん欧米企業も競合相手。やはり、もう「地域」の枠はあまり意味を持たなくなってきているようだ。


『「世界」で働く。』

  • 金城拓真 日本実業出版社
  • 2016年2月発行 1,400円+税

どんな案件も成功確率は50:50(本書より)

目次 のぞき見
  • ・世界中、ビジネスの基本は「根回し」
  • ・途上国の1+1=?
  • ・商談は自分のフィールドで行う
  • ・会社の看板は無意味
  • ・日本人の強みは「空気を読める」こと

金城拓真(きんじょう・たくま)

1981年沖縄県生まれ。自称「何でも屋」。アフリカ10カ国で多数の会社を経営し、「日本におけるアフリカン・ビジネスの第一人者のひとり」と呼ばれる。著書に『世界へはみ出す』(2013年)、『プータロー、アフリカで300億円、稼ぐ!』(12年、石川直貴名義)など。16年から中国ビジネスも始めた。

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