NNAカンパサール

アジア経済を視る June, 2017, No.29

【プロの眼】マレーシア市場進出のプロ リック・スー、大友佑圭理

巨大なムスリム市場、
日本企業はどう進出するか

マレーシア

日本でもインバウンド客の増加に伴い「ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)」という言葉を耳にする機会が増えました。ハラルへの正確な理解促進と、ハラルを活用した企業の商機獲得を促すハラル・ジャパン協会が、前回に続きマレーシア関連トピックを紹介していきます。

近年、日本国内ではハラルがよく話題になります。東南アジアにはムスリム(イスラム教徒)が多く、南アジア地域も含めるとその人口は約5億5,000万人に上るといわれます。これは日本の人口の4倍以上のマーケットです。この巨大市場に日本企業はどう進出するのでしょうか。

ハラル・ジャパン協会まとめ

日本企業は東南アジア諸国へ進出してきましたが、自動車や家電、電子機器・機械などの分野が多く、食品産業やサービス産業では他の国より出遅れている状態です。その理由の一つとして、日本の企業が持つハラルマーケットに関する情報が少なく、ハラルへの理解も不十分であることが挙げられると思います。

マレーシアから日本への輸出を見てみましょう。マレーシア・ハラル視察ツアー(ハラル・ジャパン協会主催)で4月に訪問したハラル産業開発公社(HDC)から輸出額の情報を得ました。

日本ではあまり知られていませんが、マレーシアが輸出するハラル関連商品の仕向地として日本は第4位で、その輸出額は22億リンギ(約576億円)にも上ります。

一方、日本からマレーシアへのハラル商品輸出額をハラル産業開発公社に確認したところ、「日本企業のハラル商品はまだまだ少なく、統計上の数字はありません。しかし、これからのジャパニーズハラル商品に期待します」との回答でした。これが現実です。東南アジアには多くのムスリム人口があるのに、この市場に参入する日本の企業がまだまだ少ないのです。

当協会マレーシア支局のムスリムスタッフは「日本製商品は品質も信頼性も高い。安心で安全だ。しかしハラル関連の商品は非常に少ない」と残念そうに言います。

「一般的な日本企業の海外ハラルマーケットに対する認識は不十分」。これが日本ブランドのハラル商品が市場に少ない最大の理由でしょう。

出所:ハラル産業開発公社

ただ、大手の日本企業はすでに動いています。今年上半期、菓子製造大手から「マレーシアでの支社設立とハラル生産」の相談を受けました。この企業が日本に持つ生産工場はハラル認証を取得していないので、そこで作る商品はもちろんハラル認証がありません。そのため、マレーシアのハラル工業団地の工場を買収するとともに生産材料をマレーシアで調達し、現地で製造した商品についてマレーシアのハラル認証を取ろうとしています。

当協会マレーシア支局が現地で活動した時に地元の人たちから指摘されるのが、「いま日本国内にはマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)と相互認証していないハラル認証機関が多く、分かりづらい面がある」という点です。また、「認証審査の費用も本場マレーシアの方が安い場合がある。マレーシアで取得したハラル認証は世界で最も多く承認されているので、世界中のハラルマーケットへ輸出しやすい」とも言われます。

これが、日系の食品関連製造業者が最近マレーシアを進出先に選ぶ理由の一つと思われます。マレーシアで製造されている日本ブランドの食品は、主な材料を日本とマレーシア国内で調達するため、日本からマレーシアへの材料の輸出も増加しています。マレーシア現地の企業は日本製材料の品質を高く評価しているので、日本製材料を採用する可能性も高く、新しい市場の開拓も可能です。

マレーシアの首都クアラルンプールのスーパーマーケットに並ぶ日本メーカーの菓子(上)と競合メーカーの菓子

つまり、日本から海外での生産に必要な材料の輸出は増加し、「日本ブランド」および「材料は日本、マレーシアはプロセス」と訴求する商品も増えてきています。こうした商品は現地でも「Japanese Ingredient― Malaysian Packaging」、「Japanese Ingredient ― Malaysian Process」というキャッチフレーズでプロモーションしています。

実際に今年に入ってから、既に日本の大手2社、中堅5社、中小6社から支社設立や市場開拓の相談がありました。業種は食品・菓子製造、食品材料製造、食品添加材料製造、飲料水製造、美容化粧品製造、健康食品製造、医療関連機材、環境関連機材などにわたります。

日本からマレーシアへのハラル関連製品の輸出はまだまだこれから。この大きなブルーオーシャンへ進出するお手伝いができればと思います。

本稿に関するお問合せは一般社団法人ハラル・ジャパン協会<http://www.halal.or.jp/contact/>までお願いいたします。


Rick SOO(リック・スー)

マレーシア出身の華僑。日本で大学と大学院を経て、日本の上場企業に入社し海外事業を担当。現在、マレーシアのSOO&CO法律事務所およびSOO Corp. 日本駐在代表、マレーシアAZIASSETコンサルタント社役員。ハラル・ジャパン協会海外ビジネス顧問、同協会マレーシア支局局長。

大友佑圭理(おおとも・ゆかり)

外資系IT系企業に勤務後、不動産会社役員。ハラル・ジャパン協会理事。マレーシア進出担当。

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