NNAカンパサール

アジア経済を視る May, 2017, No.28

【プロの眼】マレーシア市場進出のプロ リック・スー、大友佑圭理

増えるハラル関連OEM
認証申請しやすく

マレーシア

日本でもインバウンド客の増加に伴い「ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)」という言葉を耳にする機会が増えました。ハラルへの正確な理解促進と、ハラルを活用した企業の商機獲得を促すハラル・ジャパン協会が関連トピックを紹介していきます。

見本市会場は試食する人でにぎわった

見本市会場は試食する人でにぎわった

4月上旬、マレーシアの首都クアラルンプールでハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)製品見本市「マレーシア国際ハラル見本市(MIHAS)」が開かれました。今年の日本の出展企業は前回より減ったものの、展示エリアは例年にも増して大盛況でした。

日本パビリオンにはハラル認証を受けた餌で養殖したマグロを出品する愛育フィッシュ輸出促進共同企業体(愛媛県)、ハラルしょうゆを製造する丸十大屋(山形県)、鮮度保持輸送サービスを新たに紹介した日本通運などが出展しました。空輸した新鮮なマグロを使った解体ショー、日光軒(栃木県)によるハラルラーメンの手打ちショーなどのライブイベントも好評で、今年の「ベスト・カントリーパビリオン」を受賞しました。

他にも照り焼きチキンソースなどの実演販売を行った日本食研(愛媛県)、食品添加物や健康食品原材料などを取り扱う丸善薬品産業(大阪府)の現地法人マルゼン・ケミカルズ(マレーシア)などのブースが来場者の注目を集めていました。

サービスや小売りも

ひっきりなしの引き合いがあった日本食研のブース

マレーシアで事業展開をしている日本企業の業態は、1970年から80年代は家電などの製造業中心でしたが、近年はサービス業や飲食業、小売業などが増えています。サービス業が海外に進出するのは日本の消費人口が減少傾向にあるからだけではなく、サービス業に従事する労働力が不足していることも理由の一つと考えられます。

マレーシアの都市部を見ると、百貨店の伊勢丹、スーパーマーケットのイオン、居食屋のワタミ、らーめん山頭火、高級すしの勘八、すしチェーン店のすし金、紀伊國屋書店なども目立ちます。ブックオフ・コーポレーションは昨年、現地法人が大型ショッピングモールにリユースショップを設け、地元メディアに大きく取り上げられました。また、ファミリーマートもクアラルンプールの中心地にマレーシア1号店を出して人気を集めています。

一般的には、マレーシアは国民の約68%がムスリムでイスラム国家の色が強いという印象ですが、なぜハラルではない日本の食材、豚骨ラーメンや和食居酒屋が受け入れられているか、疑問を持つ日本の方も多いのではないでしょうか。

その理由の一つは、都市部には非ムスリム系民族(華僑系やインド系)が集中しているからです。特に華僑系は都市部で商業に従事しているため、週末には市内のショッピングモールの日本食レストランに並ぶのです。多民族で構成されるマレーシアでは、国の一般的な平均統計に基づいての市場調査が当てはまらないこともあります。

近年、生産材料のOEM(日本のブランド名での生産)委託およびハラル関連商品OEMの依頼が以前より増えてきました。今まで日本国内の需要に対して材料を製造、提供してきたメーカーが、マレーシアの原料メーカーに生産原材料や中間生産材料の輸入、OEMの依頼をしています。

4月上旬にもハラル・ジャパン協会に相談のあった日本企業と現地工場のミーティングがあり、双方とも中間材料の開発、OEMという新しい分業生産体制の構築を推し進めることで合意しました。

優れた環境

ハラルマークのあるつまみ。パッケージには日本語も書か れている

日本企業にとって、マレーシアのハラル認証工場にOEMを委託するメリットとして以下の点が挙げられます。

同工場で製造された材料や製品はマレーシアのハラル認証機関、マレーシア・イスラム開発局(JAKIM)の認証を申請しやすくなるということです。日本国内のハラル市場と非ハラル市場向けに販売できるだけでなく、第三国であるその他のイスラム地域への輸出も可能になります。市場が拡大できる上に、日本国内でのハラル認証申請にかかるコストの削減、時間の短縮ができる環境がそろっているのです。

マレーシアの優れた環境が評価され、日本企業から製造や進出に関する相談も増えています。輸出入を行いたいとの相談も以前よりあり、実際に成功する日本企業の例もたくさんあります。次回はマレーシアマーケットへの輸出(ハラル・非ハラル)について書きます。

本稿に関するお問合せは一般社団法人ハラル・ジャパン協会<http://www.halal.or.jp/contact/>までお願いいたします。


Rick SOO(リック・スー)

マレーシア出身の華僑。日本で大学と大学院を経て、日本の上場企業に入社し海外事業を担当。現在、マレーシアのSOO&CO法律事務所およびSOO Corp. 日本駐在代表、マレーシアAZIASSETコンサルタント役員。ハラル・ジャパン協会海外ビジネス顧問、同協会マレーシア支局局長。

大友佑圭理(おおとも・ゆかり)

外資系IT企業に勤務後、不動産会社役員。現在ハラル・ジャパン協会理事を務めマレーシア進出を担当する。

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