カンパサール

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アジアで発見 ロングセラー

ベトナム人の常備薬のゴールデン・スター。痛みやかゆみなど、塗ればすぐに効果を発揮するという。

ゴールデン・スター(ベトナム)

家庭の常備薬、あらゆる不調にひと塗り!

手のひらサイズで持ち運びも便利

こめかみに塗って気分すっきり

ゴールデン・スターの説明書から。薬を塗る部分や使用法などが示されている

ゴールデン・スターが最初に発売されたのは1950年代とされ、一家に一つ必ず常備されていると言われるほどの人気があった。 頭痛やめまい、鼻づまり、乗り物酔いを鎮めるかぎ薬として、痛みやかゆみを感じる患部に用いる塗り薬として、あらゆる不調に効果を発揮する。

輸出品としても引っ張りだこで、最盛期には20の国・地域に輸出していたという。ベトナム・ホーチミン市のドラッグストアでは10グラム入りが1万5,000ドン(約75円)と、360ミリリットル入りの缶ビールの半分ほどの価格だ。

冷戦時代には、ベトナムと関係が深かった旧ソ連や東欧でも人気があったようだ。旧ソ連に在住経験がある駐在員はコラムで80年代を振り返り「タイガー・バームのベトナム版であるゴールデン・スターを、関節炎や頭痛、風邪など、あらゆる症状向けに使っていた」と記している。

■独自の方法で調合

ゴールデン・スター説明書 ゴールデン・スターの説明書から。薬を塗る部分や使用法などが示されている

ゴールデン・スターの製造と販売を手掛けるのは老舗漢方薬メーカーのOPC薬品。「シナモンやペパーミント、カヤプト、トゥルシーの4種の油を使い、独自の方法で調合した」と説明している。古くからのベトナムの伝統を感じさせるデザインや香りで、現在も海外で人気がある。アマゾンやイーベイといったECサイトでは、品切れのことも多い。米国のアマゾンでの価格は8米ドル(約900円)以上と、ベトナムでの価格の10倍以上で売られている。

初めて手に取った人にも、どこか懐かしさを感じさせるゴールデン・スター。ただ、ホーチミン市在住の30代女性が「子どもの頃にしか使ったことがない」と語るように、世代交代の波が押し寄せているようだ。

この女性がよく利用している類似商品は地場の「OPCユーカリオイル」で、ホーチミン市では25ミリリットル入りで4万3,000ドン。「頭痛や腹痛の時によく使う」と話す。名前の通り、オイル状の製品だ。

シンガポール製の「イーグルブランド・メディケイテッド・オイル」は漢字で「徳国 風油精」と書かれたラベルが印象的。6万5,000ドンと高めだが、ベトナムではかなり一般的に使われている。ただ、先の女性は「においがあまり好きではないので、ユーカリオイルの方をよく使う」と話す。

■家庭のにおい

ゴールデン・スターのクラシックなデザインのふたを開け、鼻を近づけてみるとオレンジ色のクリームの香り。タイガー・バームほどの刺激はなく、ほんのりかんきつ系が混ざっているような気がする。ベトナムの昔ながらの「家庭のにおい」は、この香りのことなのかもしれない、と想像を膨らませた。(文・小堀栄之)

【製品DATA】
名称  :ゴールデン・スター
製造企業:OPC薬品
ブランド:ゴールデン・スター
店頭価格:10グラム入り1.5万ドン(約75円)
展開国 :ベトナム、米国、ロシア、東欧など

カンパサール本紙を読む(2016年4月号より抜粋)

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