カンパサール

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各国のプレゼント・ごちそう事情

祝祭を祝う人の数だけ贈り物がある。「バレンタインデーにはチョコレート」のような定番のプレゼントはアジアの祝祭では少なく、両親をはじめとする親族、友だちや同僚の間で食べ物を贈り合うのが一般的だ。そして、みんなで集まれば食べるのはごちそう。シンガポールの「魚生」や「湯圓」が定番といえるが、他は家庭によってそれぞれのごちそうがある。

春節 in シンガポール

店舗の壁一面にうずたかく積み上げられるクッキー(Green Create)

贈り物はみんなで食べられる物を

春節のプレゼントといえばみかんが最もポピュラーだろう。特に「マンダリンオレンジ」はあいさつ回りの必需品だ。主にスーパーマーケットで箱ごと大量に買う。価格は1箱10シンガポールドル(約870円)~20Sドル。

あいさつ回りでは縁起が良いとされる偶数個を持って行く。相手に2個渡し、相手からも2個もらう。みかんの黄色やオレンジ色は黄金の象徴であり、金運をもたらすとされるみかんを循環させることで、互いにお金が入ってくるとの意味を持たせている。

クッキーはスーパーやデパートでは高級品もあるが、チャイナタウンで買う人が多い。なんと言っても品ぞろえが豊富で、約4.5Sドルから買える手軽さが受けている。 パイナップルタルトや薄焼きロールクッキー、アーモンド入りクッキーなどが売れ筋。子どもからお年寄りまで誰でも食べられるため、あいさつ回りにも持って行きやすい。

肉干は干肉に甘いタレを塗り、炭火で焼いたもの。牛、豚、鶏の種類があり、ポークジャーキーが最も好まれるようだ。専門店での購入がお勧め。春節前になるとチャイナタウンの人気店「林志源」や「美珍香」は買い求める人で長蛇の列となり、2時間待ちもざら。値段は300グラム当たり13Sドルから。味はバーベキューや辛い「辣味」などもある。

近所に配ったり、あいさつ回りに持って行ったりする。家族や親戚が集まる席には欠かせず、お茶漬けやアルコールのお供ともなる。

春節とは:旧暦の正月に当たり、中華圏で最も重要な祝祭。ベトナムではテトとして、韓国・朝鮮半島でもソルラルとして祝う。今年は2月8日。

ソンクラーン in タイ

ツバメの巣入りドリンクの詰め合わせ(Green Create)

親や目上の者への思いを形に

タイ正月であるソンクラーンの時期にはメーカーが「両親の健康を願おう」とキャンペーンを打ち、チキンエキスドリンクやツバメの巣入りドリンクなどを贈る人が多い。「目上の人を大切にする」との気持ちを表すための伝統という。

ソンクラーン期間中、個人間や、親族の年上の人に贈ることも近年浸透しているようだ。また、企業の場合は日本のようにお歳暮を贈る習慣があるため、この時期の贈答品として選ばれることも多い。

スーパーでの価格は1つ55バーツ(約187円)から。12~15個をバスケットに入れ、リボンできれいに飾って贈る。

ソンクラーンとは:タイ正月。年長者らの手に水をかけて清める風習が転じ、往来で誰もが水をかけ合う「水かけ祭り」としても知られる。今年は4月13~15日。

ラマダン in マレーシア

親戚や近所の家を訪問する子どもたち。用意してあるお菓子を食べるのが楽しみ(マレーシアごはんの会提供)

高栄養で体にやさしい

日の出から日没までの飲食を絶つラマダン中は「デーツ(ナツメヤシの実)」を贈ることが多い。食事が許される日没後、まずこれから食す習慣があるためだ。デーツは「神が与えた食事」ともいわれ、栄養価が高く、空っぽの胃にやさしいという。市場やスーパーで100グラム当たり2リンギット(約58円)から買える。

ラマダン明けの祭り「ハリラヤ」ではクッキーや菓子の詰め合わせを贈る。クッキーは大量に手作りして配り、ハリラヤ中にみんなで食べる。

また、日本のお年玉のようにお金を包んで渡す。身内だけでなく、近所の子どもにもあげるため、多い場合は50~100人に上ることもあるようだ。

ラマダンとは:イスラム教の断食月に当たり、日の出から日没まで飲食を絶つ。今年は6月6日~7月5日。その後、断食明け大祭(ハリラヤ)へと続く。

カンパサール本紙を読む(2016年1月号より抜粋)

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