カンパサール

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ローカライズ、ニッチ、BOP アジアへ進む、日本ブランド

アジア各国地域で異なる衛生習慣を研究し、現地仕様に落とし込むローカライズ商品。オンリーワンの技術で日常生活の隙間に入るニッチ商品。そして感染症の危険と隣り合わせで暮らす貧困層を支える商品。大小の日系企業が技術力やマーケティング力を駆使して開発した衛生商品を解説しながら、アジア各地のニーズを探る。

タイル床専用の洗剤 速乾性、甘い香りを重視

フロアマジックリン 花王

花王の床用洗剤「フロアマジックリン」(写真上)は、タイでシェア6割を占めるヒット商品だ。同国の住宅に多いタイル床に対応させて速乾性を高め、タイ人が好む甘い香りを取り入れている。また住環境の向上で新たな床材に適した新商品も8月に発売する。

素足でもべたつかない快適な床を訴求し、足と床のイラストを採用。ピンクや赤といった明るい色が好まれ、両色のボトルが売れ筋だという(花王提供)

クリスタルシャインは高級感にこだわった。香りはパフューマリー・ダイヤモンド、パフューマリー・ゴールドの2種類(同)

【Insight 1】素足の感覚を大切に

タイでは経済成長に伴い、1990年代から硬質のタイル床の住宅が増加。掃除はモップがけが主流だが、床用の洗剤は普及していなかったことから、1997年に同商品を販売した。

タイの生活習慣として、室内では素足で過ごし、ひんやりしたタイル床を好む人が多い。ファブリック&ホームケア事業ユニットの野島史絵氏は、「素足の感覚は、日本人が思う以上に敏感で大切にすべきポイント」という。

以前の消費者調査で、モップがけをした後、乾く前に子どもが歩いてべたつくので、扇風機で乾かしているといった声もあった。そこで2008年に速乾性を高める成分に改良し、素足の感覚がより快適に感じられるようにした。その結果、大幅な売り上げ増につながった。

【Insight 2】掃除後も香り楽しむ

ユリ、ベリー、バラなど6種類ある香りも特長だ。日本ではレモンなどフレッシュな香りが使われるが、タイ人は甘い香りを好む傾向があり、種類を増やしてきた。さらに掃除後も香りを楽しみたいという要望に応え、13年には香り成分を2割増やしている。

【Insight 3】上質床をきれいに保つ

8月には新商品「クリスタルシャイン」(写真下)を投入。光をより反射できる成分を加え、掃除するたびに床が輝くことを訴求する。近年タイの新築住宅では、より光沢度の高いタイル床が増えており、住環境の変化に伴うニーズを取り込む狙いがある。香りも香水のような高級感を持たせ、ボトルはダイヤカットに仕立てた。野島氏は「おしゃれできれいな家を保ちたいと考える人が増え、床掃除をより重視するようになっている」と話す。

カンパサール本紙を読む(2015年7月号より抜粋)

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