NNAカンパサール

アジア経済を視る April, 2023, No.99

【ビジネスノート】

ペットと豊かに暮らす
タイのブームに熱視線

タイでペット市場が拡大している。所得向上や少子化の進展に加え、新型コロナウイルス感染症の流行による外出制限もブームに拍車をかけた。家族の一員としてみなす家庭も増えているという。ペットフードや動物病院、ペットサロンなどの需要が伸び、日系企業からの注目度も上昇。日本で培った高品質でユニークな商品・サービスを武器に、現地で存在感を示している。(NNAタイ 須賀毅)

タイでは所得向上に加え、新型コロナウイルスや少子化がペット市場の拡大に拍車をかけている=バンコク(NNA撮影)

日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は、タイで行う日本製品の販売促進事業で、ペット用シャンプーや爪とぎ、おもちゃなどのペット商品の取り扱いを始めた。大手電子商取引(EC)サイトを中心とする「ジャパン・モール2022」(22年10月~23年2月)における取り組みで、従来の化粧品や日用品に加え、3回目となった今回から初めてペット商品をラインアップに加えた。

同事務所の宮口莉央ディレクターは「新型コロナウイルス感染症の影響で、タイでペットケア需要が拡大したことに注目し、今回新たな分野として追加した」と説明。ペット用シャンプーやネコ用の爪とぎ、おもちゃなどを取り扱ったが、特にデザインが好評だった爪とぎやネコ用おもちゃ(ネコじゃらし)が好調だったという。

サンコーの室内向け商品(同社提供)

ペット用品を販売するサンコー(和歌山県海南市)の林佑光子氏は「東南アジアでもトップクラスで盛りあがっており、一目置いている市場。昨年はタイの展示会にも出展した。非常に多くの来場者がおり、タイのペット市場が拡大していることを肌身で感じた」と話す。

同社は今回のジャパン・モールに、ペット用キャリーの中でペットがすべりにくく、キャリーの底面の汚れを防ぐ「おくだけ吸着キャリー用マット」を出品。林氏は「今回のキャリー用マットの販売はまずまずといったところ。国によってそれぞれの文化があるので、喜ばれる商品を選定するのは非常に難しく、今は模索している段階だ。タイへの進出は未知数だが、どこまで消費者に認知してもらえるかがこれからの課題になる」と話した。

ジェトロの宮口氏も、ペット用品は初めての取り扱いだったことから、まだまだ商品を知ってもらう段階だったと評価。今後、タイの消費者にジャパン・モールでペットケア用品を取り扱っていることを認知してもらい、日本製のペット用品が広く知られる機会を提供したいと意欲を示した。

タイ商務省商業開発局によると、同国のペット関連の市場規模は毎年平均8.4%のペースで拡大しており、26年には667億バーツ(約2,600億円)に達すると予想されている。

ジェトロ・バンコク事務所が2月末まで実施した『ジャパン・モール』では、ネコ用爪とぎなどが好評だった(サンコー提供)

イヌ、ネコが8割
子供代わりの存在

タイ国立マヒドン経営大学院は、24歳から41歳までのタイ人1,046人(女性66.8%、男性22.3%、その他10.9%)を対象にペットに関するアンケートを実施。そのうち100人から個別のヒアリングを行った。

それによると、飼っているペットの内訳は「イヌ」が40.4%、「ネコ」が37.1%で合わせて全体の8割近くを占める。「その他」は22.6%で、ニシキゴイなどの「観賞魚」、インコなど「鳥」が人気だ。

調査を主導したブーニング准教授らの分析によると、タイの各家庭のペットの位置付けは大きく「子どもの代わり」「社会的なステータスシンボル」「人間に癒やしを与えてくれる存在」の3つに分類できるという。

調査で最も比率が高かったのは「子どもの代わり」の49%。続いて「ステータスシンボル」が34%、「癒やしを与えてくれる存在」が18%だった。ブーニング氏は、ペット登録数の増加と少子化の関連性を指摘。「タイでは17年以降、少子化が顕著になっており、子どもの減少と反比例するように、ペット登録をする家庭が増えている」と説明している。

ペット関連市場が拡大する中、同大学院は「ペット関連の製品やサービスを提供する企業は、各家庭におけるペットの位置付けに応じた戦略を練る必要がある」と指摘する。

例えば、ペットが経済的余裕などを示す「ステータスシンボル」だとみる消費者向けには、一般的な商品やサービスとの差別化・個別化を明確にする必要があるとした。また、会員制交流サイト(SNS)が普及する現在、人々が親しみを感じ、信頼するインフルエンサーによる「口コミ」の影響力を積極的に活用すべきだと提案している。

一方で急拡大するペット市場について、関連する企業は「命を扱う産業として動物の権利に敬意を払い、モラルが十分に守られるべきだ」とくぎを刺す。

日系サロンも進出
「技術差は歴然」

タイのペット関連サービスの需要拡大を受けて、日本とシンガポールでペットサロンを運営するソプラ銀座(東京都中央区)が、タイに進出した。

首都バンコクのトンロー地区にある2階建ての一軒家を店舗に改装し、昨年12月20日に営業を開始。シャンプーやトリミング、スパ、ドッグラン、ペットホテルなどのサービスを提供している。同社の須田哲崇社長によると、現在の利用者は、日本人駐在員家庭とタイ人の富裕層向けが半分ずつぐらいだという。

初の海外店舗としてシンガポールに出店したのが、その10年前の12年。当時、シンガポールと同時に出店に向けた市場調査を行ったのがタイだった。ただし、ペットを飼っている家庭はまだまだ少なく、所得水準も含め、タイへの出店は難しいと判断した。

須田氏は「当時に比べて、ようやくペット産業の市場としてのポテンシャルが整ってきた。ただし、まだまだ黎明(れいめい)期の段階」と評価する。

バンコクには、日系、地場を合わせて複数のペットサロンがあるが、ソプラ銀座が訴求するのはトリミングなどでしっかりした技術を持った日本人トリマーと、日本製のケア製品を使った日本と同様のスパメニューだ。タイにあるトリミング技術を教える専門学校の授業時間は30時間ほど。犬種や毛質、個体の性格に合わせた技術を、専門的に2年間学んだ日本人トリマーとの差は歴然だと説明する。また、ケア用品でも日本製と他のものは仕上がりに大きな差があるという。

利用者からは想定以上の高評価を得ているという。現在は日本人のトリマー1人、タイ人のアシスタント5人体制だが、7月をめどに日本で専門技術を学んだタイ人トリマーを追加する方針だ。イヌとネコ、それぞれのペットホテルも用意しており4月のタイ正月(ソンクラーン)を前に需要が増えるとみている。

現時点で2号店以降の出店は検討していないが、日本製のペット用ケア用品やお菓子、おもちゃといった物販を拡大する方針だ。

ソプラ銀座は経験豊富な日本人トリマーによる質の高いサービスで差別化を図っている=バンコク(同社提供)

専用パークで遊べる
フレンドリー物件増

関電不動産開発による分譲一戸建て住宅事業「エアリー・クルンテープクリタ」内に設けられた「ペットパーク」=バンコク(同社提供)

ペットを飼う家庭の増加は不動産開発にも影響を与えている。

バンコクでコンドミニアム(分譲マンション)や分譲一戸建て住宅事業を展開する、関電不動産開発(大阪市北区)の担当者は「これまでペットフレンドリーなコンドミニアムが少なかったこともあり、特にコンドミニアムでペットフレンドリーを広告で打ち出しているプロジェクトが増えている印象だ。タイのペット業界も盛り上がってきていると聞いており、今後ますますそうした物件が増える」とみる。

同社がバンコク東部で開発を進める分譲一戸建て住宅事業「エアリー・クルンテープクリタ」にも、ペットと遊べる350平方メートルほどの「ペットパーク」を用意した。

担当者は「一戸建て住宅プロジェクトでは、バンコクからの住み替え需要をある程度想定している。バンコク都心部とは異なる暮らしの提案として、子どもがのびのびと遊べたり、学んだりできるスペースの確保を意識した。タイではペットとの時間を子どもとの時間と同様に捉える人が増えており、ペットと遊べる空間を提供している」と話す。

高架鉄道(BTS)駅構内のペット用品専門店=バンコク(NNA撮影)

「伴侶」と旅、病院も増加
各国で活発な関連ビジネス

タイだけではなく、アジア全域で盛り上がるペット産業。他国でも活発なペット関連のビジネスの動向を紹介する。

韓国ではペットを「伴侶動物」と呼ぶ。最近は「ペット同伴の旅行」の需要が増し、関連商品やサービスが相次ぎ登場。同伴を禁止していた百貨店などでも、最近はケージに入れることを条件に許可するケースが増えているようだ。EC大手のインターパークは昨年、ホテルやペンションを利用すればクーポン贈呈やペットと一緒に楽しめるサービスを受けられるキャンペーンを実施。また、ペット同伴可能な宿やアクティビティー、飲食店を紹介する宿泊施設予約サイトも現れた。

韓国の農林水産食品教育文化情報院によると、国内で飼育されるペットの猫の数は22年に前年比12.7%増加。単身世帯や高齢世帯の増加を背景に猫を飼う人が増えており、猫用フード市場も年10%のペースで伸びると予想されているという。

良品計画は、昨年9月に中国でオープンした「MUJI鄭州旗艦店」(河南省鄭州市)で、中国では初めて新しいペット用品シリーズを投入。第1弾は豆袋クッション、展開可能なスクエアタイプの犬小屋、おやつなど。中国現地の商品チームが開発した。

インドでは日系の動物病院が増加。シンガポールに本拠を置く日本発のスタートアップが、外資初となる動物病院を運営する。ITの活用で予約、支払い、遠隔診察にも対応して支持を伸ばし、デリーやグルガオンなど首都圏で施設を増やしている。

米農務省によると、フィリピンのペットフードの今年の売上高は前年比9%増の4億3,400万(約559億円)米ドルに達する見通し。フィリピンの犬の飼育頭数は世界5位と多く、米国にとっては有望な市場になっている。

(NNAニュースより、カンパサール編集部まとめ)

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