NNAカンパサール

アジア経済を視る April, 2023, No.99

ビジネス書から語学本まで

アジア本NOW

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は若手建築家がアジア各地の民家を巡った探訪記。


アジア「窓」紀行
―上海からエルサレムまで―

田熊隆樹(著・写真)

窓からのぞいた世界の「深さ」

好奇心をくすぐる1冊だ。著者は現在、台湾を拠点にする若手建築家。「あなたの家を見せてもらえますか?」という現地語を覚えてアジアと中東の民家を単独で巡り、窓などの建築的特徴や暮らしぶりを文章のほか写真、スケッチで記録。窓を研究する財団法人のウェブサイト連載をまとめ、書籍化した。

海外の建築に興味が湧き、旅立ったのは2015年。大学院を休学し、約8カ月かけて中国・上海から西へ西へと移動した。訪問地の多くが、地図などを見て直感的に選んだ辺境の町。しかし、魅力的な民家や人々に遭遇する著者の「引き寄せ力」は抜群だ。中国の黄土高原では地面を掘って造る伝統住居「ヤオトン」の住人と巡り合い、カンボジアでは高さ4メートルもある高床式住居が並ぶシュールな集落にたどり着く。

18地域のさまざまな民家が登場するが、貫かれているのは「パッと見るだけでは分からない、世界の深いところを見たい」という強い好奇心。窓の構造、素材、装飾などから土地の風土を考察し、人々が生み出した暮らしの知恵を一つ一つ探究していくさまは実に小気味よい。「何かに突き動かされていたようだった」と振り返るが、ともに深淵をのぞいた気持ちを味わえる。

自宅を見せてくれたお礼にと、他国では珍しいとされる穴開き硬貨の5円玉を用意して旅立ったという筆者。サービス精神たっぷりに自宅を案内する人々との交流エピソードは笑いと感動が交差し、短編小説のような読後感がある。世界の広さを知ると同時に、誰もが懸命に生きていると感じ入る1冊だ。

アジア「窓」紀行
―上海からエルサレムまで―

2022年12月22日
田熊隆樹(著・写真)
草思社
2,420円 電子版あり

BOOK LIST

※紹介文は版元から引用(原文ママ)

中国的経営イン・デジタル
中国企業の強さと弱さ


2023年1月30日
岡野寿彦(著)
日本経済新聞出版
4,180円 電子版あり

中国企業のビジネスモデルの変化、中国の先端IT企業の変革の実態を、ファーウェイ、小米、アリババの綿密なケーススタディを通して明らかにする。そして日本企業が進化する中国企業に伍して世界で「戦略的不可欠性」を獲得するための道を示す。

新興国は世界を変えるか
29カ国の経済・民主化・軍事行動


2023年1月19日
恒川惠市(著)
中央公論新社
946円 電子版あり

中国は海洋進出を進め、ロシアはウクライナに軍事侵攻を行う。力をつけた新興国は世界にどのような影響を与え、どこへ向かうのか。本書はアジア、中南米、東欧など29カ国を新興国とし、経済成長、政治体制、軍事行動を分析する。

アジア多情食堂


2023年2月15日
森まゆみ(著)
産業編集センター
1,320円

50代から60代にかけて、アジアの国々を訪ね歩いた著者の旅紀行。(中略)現地の人々とのふれあいや美味しい食事との出会いのほか、その国の歴史や文化を著者独自の視点で考察したユニークな旅の記録。時に旅情豊かに、時に舌鋒鋭く描かれる森まゆみならではの旅を味わえる一冊。

香川にモスクができるまで
在日ムスリム奮闘記


2023年1月
岡内大三(著)
晶文社
1,980円 電子版あり

香川県には、2019年時点で約800人のインドネシア系ムスリムからなるコミュニティーが存在していたが、信仰のための施設≪モスク≫はまだなかった。(中略)モスク建立に奔走する長渕剛好きのインドネシア人フィカルさんとの出会いから、著者は祖国を離れ地方都市で暮らす彼らのコミュニティーに深く関わるようになっていく──。

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