NNAカンパサール

アジア経済を視る November, 2022, No.94

【アジアエクスプレス】

ソムリエ接客まるでカフェ
タイに広がる大麻ビジネス

タイ政府が6月に麻薬として禁止するリストから大麻を除外したことを受けて、バンコク各所で娯楽目的での大麻の販売所が出現している。「大麻ソムリエ」と 呼ばれる専門家が接客し、食用と喫煙用を扱う店舗も。店の責任者は「事業ライセンスを取得しており、完全な合法」と話す。大麻ビジネスの現状を取材した。(NNAタイ副編集長 坂部哲生)

カフェのようなしゃれた空間のディスペンサリー(大麻販売所の通称)=8月24日、バンコク(NNA撮影)

ベスポークライフサイエンスのダレン・ホワイト社長(左)と「大麻ソムリエ」のスタシニーさん=8月24日、バンコク(NNA撮影)

バンコク中心部を走る高架鉄道(BTS)アソーク駅の近く。今年7月オープンした「KANAピュアディスペンサリー」は一見カフェのような店構えだが、ここで販売されているのは大麻だ。

運営するのはベスポークライフサイエンス。タイの上場企業で、不動産開発などを手がけるブティック・コーポレーションの子会社ベスポーク・シナジーが100%出資した。タイ在住計18年というオーストラリア人のダレン・ホワイト氏が運営会社の社長を務める。

店内で陳列されているのは全て娯楽用の大麻だ。医療用でも使える高品質のタイ産大麻を娯楽用に販売する店舗としては、バンコク初になるという。

タイでは、これまで大麻を医薬品や化粧品に使うことを認めるなど、段階的に規制緩和を進めてきた。現地の事情に詳しいタイ日系企業、東洋ビジネスサービスの梅木英徹取締役は「大麻は医療目的のみ解禁されているが、事業ライセンスを取得していれば大麻の加工や抽出は可能になっている」と話す。

一方のホワイト氏は「6月9日をもって娯楽向けも認められた」と適法性を主張する。政府からも事業ライセンスを取得している。業界にはライセンスのない事業者が多いが、製造元が分からないため品質に不安があるという。

同店で陳列されている大麻は全て、北部ナーン県にある国立ラチャマンガラ工科大学ランナー・ナーン校と同社が共同で開発し、県内の施設で栽培したもの。これまで大麻草15株がタイの保健省食品医薬品委員会(FDA)の承認を得ている。価格は最も安いもので1グラム当たり900バーツ(約3,500円)。高品質を理由に価格は他店の2~3倍と高額に設定しているという。

驚きなのは、向精神性の成分テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有率の高さだ。最低でも10%で、中には28%という製品もある。タイではTHCの含有率が1%未満のものはヘンプ、1%以上のものはマリフアナと区別されている。梅木氏は「タイ政府高官は公の場でのマリフアナ使用を認めない立場だが、取り締まる法整備が追い付いていないのが実情」とコメントする。

ワインのように
大麻をセレクト

KANAウエルネスクリニックの外観=9月19日、バンコク(NNA撮影)

KANAピュアディスペンサリーで接客するのは、小さい頃から大麻に関心があって知識が豊富だというタイ人女性のスタシニーさん(41)さん。肩書は「大麻ソムリエ」だ。ワインソムリエがレストランや飲食店で客にふさわしいワインを選定したり、食事に合わせたワインを提案したりするように、大麻ソムリエも不眠症やストレスなど客一人一人の状況や好みを把握し、それぞれのニーズに合った大麻を勧めているという。大麻に関する専門的な知識も伝える。

スタシニーさんによると、日本人の観光客や駐在員も店を訪れるという。先日も、幼い子どもを連れた若い母親が遠くからしばらく様子をうかがった後、意を決したかのように店にやってきたそうだ。

ベスポークライフサイエンスは9月中旬に、BTSのプラカノン駅付近に診療所「KANAウエルネスクリニック」をオープン。専門医が不眠症やストレスなどの症状に悩む患者に対し、大麻オイルなどを処方する。ホワイト氏は「3年以内にクリニックとディスペンサリーを合わせて50店舗まで拡大したい」と話す。

観光客集うカオサン
「大麻ハブ構想」も

カオサン通りの小売店で売られる大麻=10月20日、バンコク(NNA撮影)

バンコクで人気の観光地カオサン通りでは、タイ初の「大麻ハブ構想」が浮上している。音頭を取るのは、カオサン通りの事業者組合のトップのサンガ氏。

カオサン通りでは現在、露天商が外国人観光客に声をかけて大麻を売る光景がみられる。ハブ化することで、外国人観光客のさらなる誘致につなげたい考えだ。

しかし、バンコク首都庁(BMA)はサンガ氏の考えには後ろ向きのようだ。現地紙「バンコクポスト」によると、チャックラパン副知事は「最終的な決定権は保健省にあるが、近くにお寺や学校があることを考えれば現実的な構想とはいえない」と話している。

 ※在タイ日本国大使館は、「日本の大麻取締法は国外犯処罰規定が適用され、タイを含む海外に居住する日本人が大麻の栽培や輸出入、所持、譲渡等を行った場合に処罰対象となる可能性がある」として、安易に大麻に手を出さないよう注意喚起しています。

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