NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2022, No.92

ビジネス書から語学本まで

アジア本NOW

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、世界各地のユニークな食文化の体験談をまとめた新書を紹介。


世界珍食紀行

山田七絵(編)

食のカルチャーショックは理解の入り口

まず、本のタイトルからしてわくわくする。思いもよらぬ食文化を「ゲテモノ」と恐れつつも、興味をかき立てられてしまうのが人間のさが。見たことも聞いたこともない珍食が並び、ページをめくる手が止まらなくなる。

本書は、開発途上国の専門家が集うアジア経済研究所(アジ研)の職員37名が、世界各地で体験した食のカルチャーショックをつづったエッセー集。同研究所発行の情報誌ほかで連載の『世界珍食紀行』および『続・世界珍食紀行』が好評を博し、新書化されたものだ。

登場するのは35の国・地域。中国から始まり、アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニア、そして最後にまた中国と、世界一周をするように、各地の職員が経験した珍食エピソードが紹介されていく。

「動物園の味がした」というインドネシアの牛の鼻のサテ、塩こしょうで食べるラオスのカブトムシ素揚げ、モサモサした食感というカンボジアのタランチュラ、などなど。アジアだけでもインパクト大の珍食が次々登場。ベトナムの職員による「ゲテモノ類は原形が頭をよぎると食べにくい」という感想は、経験者ならではの含蓄のある言葉だ。

しかし、連載の企画・編集を担当する職員の山田七絵氏が前書きで「異国で遭遇する奇妙な食体験が、その地域の社会や文化をより深く理解するきっかけになる」と記述しているように、どの体験談にも異文化への好奇心とシンパシーが根底にある。

フィールドワーク先で歓迎のごちそうとして出てきた珍味を、戸惑いつつもありがたくいただき信頼関係を深めるといった、職員たちの奮闘ぶりもうかがい知れて面白い。

写真はオールカラーで、豊富に掲載。ちょっと変わった世界旅行を味わえる一冊だ。

世界珍食紀行(文春新書)

2022年7月20日
山田七絵(編)
文芸春秋
1,078円 電子版あり

BOOK LIST

※紹介文は版元から引用(原文ママ)

ユーラシア・ダイナミズムと日本


2022年7月20日
渡邊啓貴(監修)、公益財団法人日本国際フォーラム(編)
中央公論新社
2,970円 電子版あり

日本外交の新地平を切り拓くためには何が必要か。ウクライナ戦争、アメリカのアフガニスタン撤退、中国の一帯一路。影響圏拡大をめぐって大国がせめぎ合うユーラシア。劇的に変化する国際環境の中で日本が採るべき道とは。第一線で活躍する有識者が日本外交の課題を論じる。

新中国論
台湾・香港と習近平体制


2022年5月
野嶋剛(著)
平凡社
1,056円 電子版あり

巨大な権力を掌握した中国。なぜ香港・台湾に対し、超強硬策を示すのか。 中国という国家の本質を香港・台湾から探る新しい中国論!

韓国の「街の本屋」の生存探究


2022年5月31日
ハン・ミファ(著)、渡辺麻土香 (翻訳)、石橋毅史(解説)
クオン
2,200円

韓国各地に個性的な街の本屋が誕生し「本屋巡り」が定着するほど注目を集める一方で、日々どこかで本屋が店を閉じている。長年にわたり韓国の出版業界を見つめてきた著者が、奮闘する街の本屋の姿を中心に「本の生態系」を描き話題となったノンフィクション。

ベトナムにおける「共同体」の存在と役割
現代ベトナム農村開発論


2022年5月20日
竹内郁雄(編著)
明石書店
5,940円

現代ベトナムの農村開発において、市民社会資本すなわち「共同体」がいかに存在しいかなる役割を果たしているのか。1986年来のドイモイ=市場経済化下の同国農村の経済社会等を対象に経済学・経済開発論を援用しつつ具体的に考察し究明する。

厨房で見る夢
在日ネパール人コックと家族の悲哀と希望


2022年2月
ビゼイ・ゲワリ(著)、田中雅子(監訳・編著)
上智大学出版
1,650 円

ネパールから来日したコックとその家族が直面する言葉・仕事・健康・教育の問題。当事者や送り出すネパール側だけでなく、受け入れる日本側の課題も多い。ネパールから留学生としてやってきた臨床心理士の視点から、在日ネパール人コックとその家族の、苦悩と希望を描き出す。

躍進する未来国家豪州 停滞する勤勉国家日本
2032年の世界の中心 オーストラリアに学べ


2022年7月31日
飯島浩樹(著)
いろは出版
1,595円

28年以上経済成長を続け、コロナを収束させた医療大国でもあるオーストラリア。実はこのベンチャー企業的な国家には日本人が学ぶべき要素がたくさんあります。TBSシドニー特派員で約30年在住している著者が、ブリスベンオリンピックを開催する2032年の未来予測を交えながら、日本人が知らないオーストラリアを分かりやすく伝えます。

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