NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2022, No.84

【インド】
インドワインが降臨
飲み口は「パワフル」

インドワインを日本で広める取り組みが始まった。日本航空(JAL)が食品輸入販売会社アンビカコーポレーション(東京都台東区)の依頼で、インド南部ベンガルール(バンガロール)と成田を結ぶ路線でインド産のワイン516本を初空輸。東京都内の航空券販売店で2021年11月18日から、空輸したワインを販売する。日本では珍しいインドワインはパワフルな味が特徴で、「愛好家に通用する」との評判もある。JALはワインの初空輸を機に貨物需要の増加、アンビカはインドワインの日本での流通拡大を目指す。(NNAインド 天野友紀子)

インド南部ベンガルールから到着したワインと、アンビカのニッティン代表=6日、成田空港(JAL提供)

インド南部ベンガルールから到着したワインと、アンビカのニッティン代表=6日、成田空港(JAL提供)

11月6日、インドの老舗ワイナリー、グローバー・ザンパ・ビンヤーズのワイン516本が成田空港に到着した。JALは日本通運の協力を得て、832キロを空輸。ベンガルール―成田便で初のワイン輸送となった。

貨物需要増加のきっかけに

JALのベンガルール―成田便はもともと2020年3月に毎日1便で就航予定だったが、コロナ禍で就航を延期した。21年3月から、毎月数便を臨時便として運航している。

JALベンガルール支店の小林春佳氏によると、他路線はコロナ禍で旅客需要が激減しても、一定量の貨物があるため継続運航できた。だが、新規就航地であるベンガルールは貨物需要が不十分で、他路線のようには便を飛ばすことができなかった。そこで同支店は、需要の掘り起こしに着手した。

ベンガルールの北部、ナンディ・ヒルズにあるグローバーのワイナリーは、ガイドブックでも紹介される観光名所だ。JALは、同社のワインを唯一、日本に卸しているアンビカにアプローチ。ワインは船便輸送が一般的だが、11月18日のボージョレ・ヌーボー(フランス産ワインの新酒)の解禁に合わせて空輸し、ボージョレとともに店頭に並べることで「PRにつなげよう」と説得した。

販売場所の「有楽町JALプラザ」では毎年、ボージョレ解禁に合わせてフランスから空輸した新酒を販売している。グローバーのワインは21年、フランス産の新酒と一緒に店頭に並ぶ。11月30日まで販売する予定だ。

ベンガルール便の主要貨物は自動車部品や衣類だが、小林氏は「(現地の特産品である)ワインやコーヒーなど、意外性のある商品も輸送して日本に広めることが目標。(それらの)認知度を上げて、貨物需要につなげたい」と意気込む。

インドワインは「パワフル」

インドのコンサルティング会社ILOコンサルティングなどによると、同国には約60社のワイナリーが存在する。年間生産量は19年時点で推定1,760万リットル。ベンガルール周辺や西部ナシクが一大産地だ。

ナシクのワイナリーを2度訪れたことがある日本人ソムリエは、「たっぷり太陽を浴びて完熟したブドウから作られるワインはパワフルでフルーティー。珍しいというイメージを払拭(ふっしょく)して、愛好家に通用するワインが作られている」とインドワインを評価する。世界での流通量はまだ少なく知名度も低いが、18年時点でオランダや香港、シンガポール、オーストラリアなど多くの国・地域に輸出されている。

グローバーがインド西部ナシクに持つワイナリーでの搾汁の様子(NNA撮影)

グローバーがインド西部ナシクに持つワイナリーでの搾汁の様子(NNA撮影)

インドの食品を主に手がけるアンビカは、15年前にグローバーのワインの輸入を始めた。日本国内の約5,000社の飲食店・企業を顧客に持ち、ワインは主にインド・ネパールレストランに出荷している。代理店を通じてワイン専門店や、自社サイトで個人消費者にも販売。17年7月~20年6月は、年平均5万4,300本余りを出荷した。

チリと欧州の牙城、関税が障壁

日本ではグローバーのほか、大手のスーラ・ビンヤーズのワインが輸入されているが、インドワインの流通量はかなり少ない。

財務省の貿易統計によると、20年の日本のボトルワイン輸入の国別シェア(数量ベース)はチリが30.0%を占め1位。チリと欧州3カ国で輸入量全体の86%を占める。インドは輸入先の上位10カ国にも入っていない。

グローバーがインド西部ナシクに持つワイナリーでの搾汁の様子(NNA撮影)

アンビカのヒンガル・ニッティン代表は、インドワインがインドカレーのように日本でブームになる可能性は「十分ある」としながらも、関税が障壁になっていると指摘する。

チリや欧州から輸入するワインは日本との経済連携協定(EPA)によって輸入関税がかからない。チリ産ワインが日本で輸入先1位に躍り出たのは、関税廃止で価格が手ごろになったためだ。一方、インドと日本の間では協定がなく、750ミリリットル入りボトルであれば購入価格(運賃・保険料含む)の15%または1リットル当たり125円の関税がかかる。

前出のソムリエは、愛好家仲間と試飲したグローバーの数量限定の赤ワイン(インドで約2,000ルピー=約3,100円)を「上品でバランス良く、(仲間に)インドのワインもおいしいと認識してもらえる1本だった」と評価した上で、他国のワインと比較した場合、コストパフォーマンスは課題になるかもしれないと指摘する。インドワインへの輸入関税が撤廃されればコスパ圧力は軽減され、流通拡大の追い風になるだろう。

アンビカのニッティン氏は、関税を減らす動きはあるものの「数年単位の時間がかかる」とコメント。関税撤廃への期待を持ちながら、日本人がインドの食を知る玄関口であるインド料理店を中心に、地道な売り込みを続けていく方針を示した。販売(出荷量)は「向こう3~5年で現在の2倍となる年間10万本を目指す」としている。

(2021年11月18日 NNAインド版より)

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