NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2022, No.84

【香港】
良いものだけを握る
ドンキ本気のすし店

総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)はあす29日、グループで初となるすし専門店「鮮選寿司」を香港にオープンする。海外における新業態として複数店舗の展開を視野に、世界で最も日本の食材が受け入れられている和食激戦地の香港に「日本のおいしいをそのまま海外に」のコンセプトで挑む。(NNA香港 編集長 福地大介)

冷凍せずに空輸するサーモンは自慢のネタの一つ(NNA撮影)

冷凍せずに空輸するサーモンは自慢のネタの一つ(NNA撮影)

鮮選寿司の1号店は、新界地区・セン湾(セン=くさかんむりに全)の「ドンドンドンキ 海之恋本店」に併設する。香港鉄路(MTR)セン湾西駅に隣接する大型商業施設「海之恋商場(OPモール)」内という立地だ。

日本産または日本市場向けに開発された商品を主力ラインアップとするアジア向け業態「ドンドンドンキ」ではこれまでもパックずしを販売してきたが、店内飲食のすし専門店を出すのは初めて。日系、地場を問わず多くの和食店、すし店が林立する香港市場へ進出するに当たっての決意は店名に込めた。鮮度と、選び抜いた素材で勝負する。

PPIHグループの現地法人、泛亜零售管理(香港)の生鮮部門シニア調達マネジャーで鮮選寿司の責任者を務める山口晋治氏によると、世界中から旬のネタを仕入れており、特に一押しのマグロは、生育環境に優れたクロアチアのアドリア海産。香港人に人気のサーモンも、冷凍せず新鮮な冷蔵でノルウェーから空輸している。ウニは北海道産。「良いものだけを握る」方針のため、漁場の状況などによっては人気ネタを出さないこともあり得るという。

シャリは自家精米

ネタを引き立てるシャリにもこだわった。北海道産の「ななつぼし」に合わせるのは、日本の高級店で使われる赤酢。コメは精米してから時間がたつほど味が落ちることから、鮮度を最大限に保てるよう玄米のまま香港へ輸入し、今月稼働したばかりの自社精米所で精米する。さらにワサビは香りを生かすため伊豆産を少量ずつ個包装で提供し、しょうゆも一般的なさしみしょうゆと九州の甘口しょうゆの2種類を用意する徹底ぶりだ。

本場のおいしさをとことん追求しつつ、営業形態も香港の人たちが日本らしさを感じる回転ずしスタイルとなっている。タッチパネルでの注文にも対応し、価格は皿の色ごとに12HKドル(約175円)、17HKドル、27HKドル、37HKドルの4種類。1人150~200HKドル程度で本格的なすしをおなかいっぱい味わえる。

 29日にグランドオープンする「鮮選寿司 海之恋店」(NNA撮影)

29日にグランドオープンする「鮮選寿司 海之恋店」(NNA撮影)

2年前から構想

PPIHグループの常務執行役員(香港・台湾・マカオ事業責任者)で現地法人社長の竹内三善氏は、香港で新業態に挑む理由について「香港のドンドンドンキは、食を中心とした日本商品のスペシャリティーストアという位置づけ。日本の本当においしいすしを香港の人たちに食べてもらうことで、『和食の伝道師』として当社の立ち位置を広げていきたい」と説明。「香港は世界中のおいしい食が集まる場所であり、香港の人においしいと言ってもらえれば自信になる」と話す。

竹内氏によると、香港にすし店を出すアイデアは、九龍地区・尖沙咀にドンドンドンキの香港1号店を立ち上げた2019年7月当初からあったという。「香港人にすしが人気だということは分かっていたので、ずっとすしの研究を続けてきた」。グループとして蓄積したユニー、長崎屋といった傘下企業の食のノウハウも生かし、2年越しの準備を経ての出店となる。

海之恋商場は、香港にあるドンドンドンキの立地の中でも幅広い世代の客層が集まる商業施設。「香港の家庭に和食を広げていきたいというコンセプトがあるので、ファミリー層が多いこのエリアは1号店にふさわしい」(竹内氏)と判断した。

グランドオープンを間近に控えた店舗では連日、オペレーションの確認を兼ねた試食会が開催された。参加した30代の女性会社員は、NNAに対し「シャリもネタも新鮮でおいしく、グランドオープンが楽しみ。でも、長い行列ができそう」と語った。

現地法人責任者の竹内氏(左)と鮮選寿司の責任者を務める山口氏(NNA撮影)

現地法人責任者の竹内氏(左)と鮮選寿司の責任者を務める山口氏(NNA撮影)

 

商材の卸売りも

ドンドンドンキが香港に進出した19年は大規模な反政府運動で社会が混乱し、続く20年は新型コロナウイルスの流行で市民の行動が大きく制限された。そうした逆境下でも「驚異的な売り上げ」(竹内氏)を実現し、香港の店舗数は既に8店に拡大。都市型店、郊外店、大型店、小型店とさまざまな出店フォーマットを持つグループの強みも生きている。

今後は24年度をめどに香港で24店舗まで増やすことを目指しており、その中で鮮選寿司を含めさまざまな業態を試していく計画だ。9月に1号店が開業したばかりのマカオでも2店舗目の出店を探る。鮮選寿司については、ドンドンドンキへの併設と独立店舗の両にらみで複数店展開を狙っている。

グループとしてはこのほか、香港で商材の卸売り業務にも力を入れていく構え。香港のドンドンドンキでは年間150トンのサーモンを販売しており、マグロの取扱量も大きい。こうした自社流通の規模を背景に、価格競争力のある高品質商品を自社以外の小売店などにも積極的に卸していきたい考えだ。自家精米を始めたコメも、近く自社の販売、使用分を全て自家精米に切り替えた後に他業者への提供を視野に入れている。

同社にとって、他市場と比べても新しいことを始めやすい事業環境という香港。竹内氏は「なんでもチャレンジしてみたい」と力を込めた。

(2021年10月28日 NNA香港版より)

出版物

各種ログイン