NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2020, No.68

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─ソーシャルディスタンス編─

中国で開業30年の餃子店がテイクアウトを強化すると同時に、周辺マンション住民向けの出前食品の取り置き場としても活用してもらうことで商いを成功させている=陝西省西安市(新華社)

上海ディズニーランドの入場ゲートの様子。順番に並ぶ人たちの足元には、一定間隔を空けることを指示するシールが貼られている=中国・上海

中国

営業を再開して3カ月がたった上海ディズニーランドを訪れた。入園時の検温や健康状態を示す「健康コード」のチェックといった新型コロナウイルス対策は続けているものの、再開当初の「厳重警戒」感は薄れつつある。

世界でいち早く営業を再開し、感染対策を徹底している上海ディズニーへの信頼の表れだろうか。「密」を防ぐために地面に貼られた「ソーシャルディスタンスシール」はほとんどの人が素通り。マスクなしで園内を歩く人も多い。

ただ、小さな変化もあった。いくつかの人気アトラクションは完全予約制になった。いまだ営業を停止しているレストランもちらほら。キャラクターとの写真撮影は今も、再開されていない。

夏休みシーズンを迎え、観光地には徐々にかつての活気が戻り始めた。でもいつかやってくるコロナ終息の日まで、油断は禁物。観光地も手探りが続く。(佳)


インドネシア

新型コロナが流行して以来、あちこちで聞くようになったソーシャルディスタンス。エレベーターやエスカレーターに乗る際には、他人との間隔を気にするようになった。飲食店でも客同士の距離を保つため、席数を少なくしている。規則とはいえ、「空席」があっても入店できず、お腹を空かせて待つのは結構つらい。

先日入ったあるレストランの対応は、さらに一歩上をいっていた。席に着くや否や、店員が提示したのはQRコード。スマホで読み取るメニューだという。不特定多数との接触を避けるための配慮なのだろう。コロナ禍でのハイテク対応は当地でも進んでいるのかと感心した。

ただ、通信環境のせいか、スマホの性能のせいか、メニュー表示が遅い。ノロノロ起動する画面を店員と共に見つめるだけの気まずい時間が続く。かくして空腹はますます募るのである。(角)


韓国

「最後に映画館に行ったの、いつだっけ」。新型コロナウイルスの感染拡大から映画館に行かなくなって6カ月。巨大なスクリーンとサウンドによる臨場感を味わいながら話題の映画を見るトキメキが恋しい。

映画業界では業績がコロナ流行前に比べ約70%下がったという。しかし、ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の続編『半島』の公開を皮切りに、ファン・ジョンミン主演の『ただ悪から救いたまえ』がまもなく公開されるなど、下半期には注目タイトルも多い。

映画館大手メガボックスは、非接触の体温測定器を導入。他社もQRコードを使った身元確認や1席空けた座席配置、徹底した換気などの対応を急ぐ。あとは国民の不安をいかに解消できるかだ。韓国映画産業はコロナと共に生きる「ウィズコロナ時代」をどう乗り切るか。自由に映画を見られる世を望む。(智)


台湾

台東県で開催された熱気球フェスティバルの初日、会場は色とりどりのレジャーシートがびっしりと敷き詰められていた。この日の来場者は計12万人。海外からの来場者がほぼゼロにもかかわらず、初日の過去最多となった。

「ここに座りなさい」。子連れの女性が椅子を置いたのは、われわれが数時間前から陣取っていたスペースと前の客との間、わずか30センチメートルの隙間。あっという間に視界は遮られ、気球は見えなくなった。少しでも陣地を確保しようとじわりと足を延ばす。運動会や花見の席取りのようだ。

数センチ単位での攻防を繰り広げながら、6月まで呼び掛けられていた「屋外で1メートルのソーシャルディスタンス」を思い出す。規制は緩和されたが、今、1メートルの間隔があればどんなに快適だろう。そう思いながら撮った写真には、やはり前の人の頭が見切れていた。(妹)

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