NNAカンパサール

アジア経済を視る August, 2019, No.55

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─お片付け編─

(新華社)

タイ

最近友人から勧められた本がある。日本では「こんまり」と呼ばれる近藤麻理恵氏の片付けに関する著書だ。タイ語に翻訳されて人気なのだという。

今までタイの友人に「日本と聞いて最初に思い浮かぶものは何か」と尋ねると、アニメや日本食といった答えが多かった。しかし最近はこんまりの著書がタイで人気なように、日本文化の受け取られ方も変わってきているようだ。

より日本の精神的、哲学的、宗教的な文化に関心を示しているということだ。こんまりの断捨離も、禅と結びつけて考えられているという。友人は「片付け」「我慢をする」と言う代わりに、「家をこんまりする」「禅的な生活をする」と言う。

タイは仏教国のため、こういう発想を歓迎する。外国文化の普及の仕方は常に変わる。若者には良いと思った文化を受け入れてもらい、心豊かに生活してほしい。(ピ)


インドネシア

長蛇の列ができている化粧室の先で、混雑など気にも留めない様子で清掃員が熱心にトイレを磨いている。多少汚くてもいいから、一つでも多く場所を空けてほしいと思うこちらの気持ちは届かない。

インドネシア人の掃除や片付けに対するまじめさには目を見張るものがある。なかなか注文を取りに来ない飲食店でも、空いた皿だけは競うように下げていく。知人が会社のスタッフに業務を依頼すると、「会議室の掃除があるのでできません」と大まじめに断られたそうだ。

先日は昼時の飲食店で突如ワックスがけが始まった。せっかくの料理の味は薬品の強烈な臭いに負け、すっかり食欲がうせてしまった。清潔さを大切にする意識は素晴らしいが、何も今でなくとも。そう思って周りを見渡すと、存外みな平然と食事を続けている。少数派は我慢すべしと言い聞かせて席に座り直した。(希)


中国

「本当に面倒なルールだよ」。上海市内の美容院で働く美容師の李さん(26)は、ため息交じりにそうぼやく。「美容院で使っているものは分別が大変。髪染めの薬剤は有害ごみか、ボトルは資源ごみか、全然わからない」

上海でごみの分別を徹底する条例が施行されてはや4日。分別ルールがあまりに細かいため、これまでごみを丸ごと捨てていた市民からは混乱の声も相次ぐ。ペットのフンを拾ったけど、新聞紙は資源ごみでフンは生ごみ? ちまきの中身と葉は分けて捨てる? 会員制交流サイト(SNS)ではそんな質問が飛び交う。

ごみの分別くらい日本人にはお手の物と思いきや、そう単純ではなかった。たまったごみ箱から中身を取り出してせっせと分けるが、生来のものぐさにはなかなか面倒だ。まずはごみ箱を3つ買い足すところから始めよう。(佳)


オーストラリア

集合住宅の管理組合からメールが来た。共有場所に私物が多く置いてあるので、心当たりの住人はすぐさま撤収して欲しいとのこと。さもなくば、1,100豪ドル(約8万3,000円)の罰金を科すという。

撤収を要求される私物のリストには、わが家が玄関横に仮置きしていた段ボール箱も入っていた。たかが段ボール箱に1,100豪ドルも払わされては大変と、夜中だったが慌てて家の中に引っ込めた。そして翌朝、共有場所からは、放置されていた数台の自転車はじめ、私物は一切消えていた。1,100豪ドルが威力を発揮したようだ。

ところが最近、共有場所にはまた自転車が並び置かれるようになった。あのメールは脅しに過ぎなかったのか。いや待てよ、今度は隙を突いて2倍くらいの罰金を本当に科すかもしれない。状況を声を潜めて見守っている。(康明)


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