NNAカンパサール

アジア経済を視る June, 2019, No.53

【アジアエクスプレス】

中国の人気キャラクター、日本へ
「長草くん」に見るIPビジネス

長草くんを囲むMCのすーみーおねえさん(左)と公式イメージガールの嶋梨夏さん(右)。嶋さんは昨年12月に開催された『長草くんの公式アンバサダーイメージガール決定戦』で見事1位を勝ち取った。すーみーおねえさんは2017年の名古屋栄三越でのイベントで初登場。長草くんのTikTokへの登場やグリーティングでMCを行う(NNA撮影)

生まれたての赤ちゃんのような丸く白い体、大きな頭には若葉とつぶらな瞳。「長草くん」(中国名「長草顔団子」)は、中国の20歳から30歳の女性を中心に爆発的な人気を誇る国民的キャラクターだ。2017年9月から東京のヨドバシカメラ秋葉原店でのグッズ販売が開始されたほか、東京タワーをはじめ全国各地でのコラボイベントも開催された。長草くんの版権元である北京十二棟文化伝播有限公司の王彪最高経営責任者(CEO)と、日本展開を担当する株式会社ミニチュアファクトリー(名古屋市)の恒川琢朗代表取締役に中国の人気キャラクターを日本で展開する狙いを聞いた。(文・写真=NNA東京編集部 片岡野乃子)

北京十二棟文化伝播有限公司(北京市、以下:十二棟社)は知的財産(IP)ビジネスで中国を代表する新興企業だ。長草くんの他、「制冷少女」や「小さなゾンビちゃん」など数多くの人気キャラクターを輩出し続けている。長草くんの中国版チャットアプリ微信(ウィーチャット)でのスタンプダウンロード数は延べ8億回を突破し、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」のファン数は300万人に上る。

長草くんのように人々に愛されるキャラクターを生み出すにはどうすればよいのか。王氏は「コンテンツの質」と、それを拡散させるための「メディア戦略」の2つが鍵を握ると話す。「今はスマートフォン全盛期で、中国では国民のほとんどがウィーチャットを使用している。昔は新聞や雑誌しかメディアがなく、拡散に時間がかかっていたが、現代はインターネットのおかげで爆発的に広まるようになった」という。

キャラクターに重要なのは、見た目の良し悪しではなく「第一印象で認識してもらえる、一目でそれと分かる特徴」で、長草くんの場合は愛らしい頭の若葉とシンプルな顔がそれだ。

ウェイボ上で長草くんの愛らしさに衝撃を受けた王氏は13年に当時高校生であった長草くんの考案者「两条毛腿肩上扛」氏を自社デザイナーとしてスカウトしウィーチャット用ステッカーを作成。瞬く間に評判となった。

常に新しいコンテンツを

絵文字から始まった長草くんは丸い顔だけの存在だったが、消費者の好みや需要を取り入れた結果、今のデザインが完成した。表現の幅を増やすため追加された体は、高い等身と細長い手足の時期を経て現在の赤ちゃんのような親しみのあるルックスへと落ち着いた。王氏は長草くんを「消費者とともに作り上げてきたキャラクター」と表現する。

中国市場で成功するには、「常に新しいものに更新していくことが重要」と王氏。消費者のニーズは日々変化しており、今日の表現も明日には古くなる。「IPには、ディズニーのような面と米動画配信ネットフリックスのような面の2つがある。かつてはディズニーのような大きく、重く、作り込まれたものが好まれていた。今の時代は『小さい』『出しやすい』『いろんなものがある』『消費しやすい』『変更しやすい』、いわばネットフリックスのようなコンテンツが好まれやすい」と話す。

十二棟社は長草くんを筆頭に、ウィーチャット用ステッカーの開発、アプリゲームでのコラボといったオンラインでのビジネス展開はもちろん、コンビニエンスストアの中国セブンイレブンや大ヒット映画とのタイアップ、絵本発売時は広州でのサイン会などオフラインのイベントも定期的に開催している。だが最も重視しているのは「一つ一つの利益を考えるよりも、とにかく継続していくこと。継続と累積によって消費者の支持を得ることができる」

多彩なイベントでファン獲得

ミニチュアファクトリーはグッズの開発製作を主事業とする企業。17年から十二棟社と提携し、長草くんの日本展開を担う。

左からミニチュアファクトリーの恒川琢朗代表取締役、十二棟社の王彪CEO、李超国際部長(NNA撮影)

十二棟社とミニチュアファクトリーが提携に至ったのはパートナーとしてお互いにベストだったほか、人間性や会社理念の合致からだという。「長年中国の工場や企業とつながりがあったから言えることだが、中国の方は信頼のある相手を絶対に裏切らない。彼らの誠意に報いたい」と恒川氏は語った。

中国で社会的現象まで巻き起こした長草くんも、日本ではまだ発展途上のキャラクターだ。ヨドバシカメラ秋葉原店でも当初は売り上げに伸び悩んだ。長草くんは中国のアプリゲーム「偶像梦幻祭」とのタイアップ経験がある。それをツイッターに投稿したところ、日本の同ゲームファンの影響で売り上げが大幅に増加した。恒川氏は「IPの成長に知名度とコア層の獲得は必須と実感した出来事だった」と話す。

長草くん公式イメージガール、嶋梨夏さんの登用や「SHOWROOM」「TikTok」などアプリの活用で、日本での知名度アップを図っている。

「実は、日本と中国であまり『かわいい』の基準は変わらない。欧米まで行くと事情は違うかもしれないが、『萌え』とかかわいいと思うものはアジア域内なら大体同じ」と王氏は言う。

今の中国は日本のアニメ文化に影響を受けて成長した1980、90年代生まれが成長し活躍している時代、文化産業が急速に発展している最中だ。王氏は「ぜひ中国の面白いことを日本でも体験してもらいたい」と語った。

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