NNAカンパサール

アジア経済を視る April, 2019, No.51

エチオピアの自動車事情

四輪は日本、二輪はインドメーカーが人気

エチオピアでは日本車の存在感が際立っている。大半は輸入中古車だが、日本からの中古車は程度が良いことからトヨタ車やいすゞ車を中心に人気が高い。一方、二輪車ではバジャジ・オートやヒーロー・モトコープ、TVSモーターのインド勢が目立った。(取材・写真=NNAインド編集部 天野友紀子、Atul Ranjan)


四輪

アディスアベバ市内の中古車販売店。程度の良い日本車が人気だ

アディスアベバ市内の中古車販売店。程度の良い日本車が人気だ

街中を走る車は、9割が日本車。乗用車はトヨタ、トラックやバスなどの商用車はいすゞが多い。トヨタ車は小型車「ヴィッツ」やセダン「カローラ」「カリーナ」、スポーツタイプ多目的車(SUV)「フォーチュナー」、ピックアップトラック「ハイラックス」、ワゴン車「ハイエース」などが走る。日本車以外では、韓国・現代自動車、かなり旧式のVWビートル、ロシアのラーダがちらほら。

同国では、新車を輸入する場合、100%以上の関税がかかる。エチオピアに詳しい中国人コンサルタントによると、米国製のトヨタの新車をエチオピアに輸入する場合は価格が3倍に膨れ上がる。中古車の輸入税は50%。ほかにもいろいろな税や手続き費用がかかるため、中古車も購入価格は2倍以上になる。

エチオピアでは、中国の力帆実業(集団)が工場を持つが、外貨不足によって、部品を輸入することができず、工場は開店休業状態が続いている。製品も日本の中古車に比べて、評価は高くない。

エチオピア人ドライバーによると、トヨタ車と力帆車の一番の違いは耐久性で、快適性にも差があるという。「トヨタの中古車は力帆の新車よりも高価だが、10年以上使い古された場合でもトヨタ車を選ぶ」と話した。

トヨタ車はメンテナンスコストの低さも人気の理由だ。車の購入コストと同様、エチオピア人はメンテナンスコストを重視する。燃費の良さに加え、スペアパーツが手に入りやすいトヨタ車への支持は高い。先の中国人コンサルタントは、「中国人の私も、力帆ではなくトヨタ車を選ぶ」と話す。「力帆の車はすぐに問題が出るから、アフターサービスや部品販売でもうけることができるのではないか」と語った。


二輪・三輪

インド車、価格と交換部品の入手しやすさで訴求

ヒーローの小型バイクに乗る男性

ヒーローの小型バイクに乗る男性

二輪車ではバジャジやTVS、ヒーローといったインドメーカー3社が重要な存在となっている。

地元の専門家によると、手頃な価格に加え、交換部品の入手しやすさなどが人気の理由だ。地方では若年層を中心に、バジャジの「パルサー」やTVSの「アパッチ」といった排気量150〜200ccの機種に人気が集まっている。

インドブランドは、市民の足として欠かせない三輪タクシー市場でも大きな存在感を示す。

地元メディアによると、首都アディスアベバでは、バジャジ製の三輪タクシーは5,400台ほど走っており、1台当たり1日60〜100人の客を運んでいるという。

バジャジの三輪車は、大半がインドで生産され、アフリカに輸入されている。インドブランド以外では、イタリアのピアジオが食い込んでいる。

地元の専門家によると、エチオピアでは都市化の進展と公共交通機関の整備の遅れが三輪タクシーに対する高い需要の背景にある。

バジャジ製の三輪タクシー

TVS(左)とバジャジのバイク


未舗装目立つ道路

首都アディスアベバは、中心地でも大通り以外は未舗装の道路が多い。路面はでこぼこで、自動車が通るたびに砂ぼこりが舞う。郊外のある工業団地では、大通りに出る道だけは広く平らになっていて通れる状態だったが、その他の周辺道路は大きな穴が空くなど、とても運転できたものではなかった。ただし、アフリカ連合(AU)本部から空港まで続く直通道路は中国企業が建設中であるなど、主要な建物をつなぐ大通りに関しては、整備がだいぶ進んでいる。

市民の足として馬車も活躍している

運転マナーは中国やインドに比べて良い。大通りの信号なしの横断歩道では、渡るタイミングを見計らっていると、ライトを点滅させて歩行者を優先させる車が必ずあった。エチオピア人ドライバーによると、「植民地化された国の人たちはマインドが他国の影響を受けているから、すぐに怒ってクラクションを鳴らすが、エチオピア人は違う」のだとか。

自動車の速度も過剰に飛ばすことはほとんどなく、路面状態の悪い未舗装の道はゆっくりと走る。馬車やロバも通っているので、そういうものにも気を使いながら運転しているようだ。

アフリカ市場、主流は中古車

「最後のフロンティア」として注目を集めるアフリカ自動車市場だが、現在のところ販売の主流は中古車だ。 日本中古車輸出業協同組合のまとめによると、2018年に日本から海外に輸出された中古自動車(乗用車・商用車)は132万6,597台。うち4分の1以上に相当する34万146台がアフリカ向けだった。

一般的に1人当たり国内総生産(GDP)が3,000米ドル(約33万6,000円)を超えると乗用車の普及が本格化するとされるが、アフリカでその水準を満たしているのは、南アフリカ共和国などごく一部にとどまる。ガソリン価格も高いことから、大半の人々にとって新車はまだまだ高嶺の花だ。

状態の良い車両の多い日本の中古車は、アフリカで人気を集めている。日本から輸入した中古車は、走行距離が10万キロメートルでも「ニューカー」と呼ばれる。いわゆる新車は「ブランニューカー」だ。

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