NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2018, No.44

【アジメシ】

池袋で発見、広西のタニシ麺

日本・中国

アジアの昼メシ風景を紹介する、新連載「アジメシ」の第2回。中国・広西チワン族自治区は南寧出身のキュートな女性が、タニシを使った郷土料理、螺蛳粉(ルオーシーフン)を紹介してくれました。

中学時代、宝塚歌劇団をきっかけに日本に興味を持ったというリラスさん。演劇業界を志し、留学先の日本大学芸術学部では演劇を専攻。「人見知りなので、仕事中は女優になったつもりで社交的な店員を演じています(笑)」

中学時代、宝塚歌劇団をきっかけに日本に興味を持ったというリラスさん。演劇業界を志し、留学先の日本大学芸術学部では演劇を専攻。「人見知りなので、仕事中は女優になったつもりで社交的な店員を演じています(笑)」

正宗柳州螺蛳粉980円。広西チワン族自治区の町、柳州が発祥の地とされている。レシピは現地の専門店から譲り受けた正統派。タニシには、解熱、解毒、むくみ改善などの効能があるとか。右は鴨脖(カモの首)500円。しょうゆベースの濃厚な味付けでお酒のつまみにぴったり!(価格はいずれも税込み)

「故郷の味が恋しくなった時、池袋に食べに来るんです」と、大きな瞳をさらに見開き、郷土料理の螺蛳粉について語るリラス(仮称)さん。出身は、中国南西部の広西チワン族自治区の首府・南寧市。東南アジア経済圏との重要拠点であるこの町で生まれ育ち、高校卒業後、「中国の詰め込み式教育ではなく、好きな勉強ができる環境にあこがれて」来日。大学留学を経て、現在はアパレルショップの店員として東京都内で勤務する。日本生活は今年で6年目を迎えた。

「キラキラしたイメージのアパレル業界ですが、身体的にはハード。10センチヒールで立ちっぱなしですので、足の痛みで夜眠れなくなることも。でも、お客さんから『リラスさんに選んでもらった服がすごく良かった』と言ってもらえるだけで元気が出ますし、やりがいも感じます」と話す日本語は驚くほど流ちょうだ。

17年12月にオープン。清潔感があり、女性ひとりでも気軽に立ち寄れる雰囲気

休日はミュージカル教室に通ったり、ひとりカラオケを楽しんだり、公私共に日本生活に溶け込んでいる様子のリラスさん。けれども、故郷の味はやっぱり格別だ。「螺蛳粉というタニシを使った麺料理が私の大好物。南寧に帰る度に、インスタント麺を買いだめしていたんですが、日本でも食べられるお店があればいいのになぁとネットで必死に探しました(笑)」。そしてたどり着いたのが、池袋北口の中華料理店「好辣鴨(ハオラーヤ)」だ。

メニューには、重慶名物の春雨料理、酸辣粉(サンラーフン)、成都のピリ辛麺、冒菜(マオツァイ)といった郷土料理のほか、アヒルの首を煮込んだ鴨脖(ヤボー)など、一般的な中華料理店では見ない料理名がずらり。その中でも、螺蛳粉はお店の看板メニューだ。

中国語で螺蛳(ルオーシー)と呼ばれるタニシを粉末にしたものを、八角、シナモン、クローブ、トウガラシなど、数種類の香辛料と煮込むこと数時間。タニシのエキスがたっぷりと入った濃厚スープができあがる。「独特の匂いは中国人でも好き嫌いが分かれます」とリラスさん。確かに土っぽい香りがプンと漂うが、口に運ぶと絶妙な旨味に変身! 淡白&モチモチとした米粉の麺との相性も抜群だ。

新興チャイナタウンとして注目を集める池袋駅北口エリア。ランドマークとなっている雑貨店「陽光城」の2、3階が好辣鴨の店舗

好辣鴨のスタッフ、翟(たく)さんに聞けば、彼の義理の親であるオーナーも、調理担当のシェフも中国東部の江蘇省出身。「地理的に縁のない螺蛳粉を出すのは、ライバル店との差別化を図る狙いもあるが、日本で暮らす多くの地方出身者に、故郷の料理で元気を出してもらいたいから」と熱く語る。

その横で、大きなどんぶりを抱えるようにして勢いよく箸を進めるリラスさん。「いつもペロッと完食しちゃいます(笑)」とテレ笑い。螺蛳粉のおいしさの秘密は、タニシの旨味成分と、同胞を思う“優しさ”の配合にあるのかもしれない。


好辣鴨(ハオラーヤ)外観
DATA
好辣鴨(ハオラーヤ)
住所:東京都豊島区西池袋1−25−2 カイダ第6ビル 2、3F
電話:070-3622-6804(混雑時は不通)
営業時間:10:00~00:00(深夜)
定休日:なし
最寄り駅:池袋駅、北口から徒歩1分

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