NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2018, No.36

鉄道・インフラ編[1〜3位]

アジアでは経済成長に伴い鉄道をはじめとする社会インフラ整備の需要が膨らみ、情勢は短期間で大きく動くことも多い。日本勢も売り込みに力を入れる中、最近のNNAのニュースから関連ランキングをまとめた。

首都地下鉄に日本のODA
19年着工予定、東南アにくさびをNNA POWER ASIA 2017年11月16日付

フィリピン

安倍首相(左)とドゥテルテ大統領は、強固な二国間関係を確認=17年11月13日、マニラ(フィリピン大統領広報推進戦略企画局=PCOO)

日本・フィリピン両国政府は11月13日、マニラで安倍晋三首相とドゥテルテ大統領の立ち会いの下、マニラ首都圏の地下鉄計画(フェーズ1)第1期への日本からの政府開発援助(ODA)供与(限度額1,045億3,000万円)について、交換公文に署名した。2018年第1四半期(1〜3月)にも国際協力機構(JICA)が円借款貸付契約(L/A)を締結する。事業総額約8,000億円の地下鉄計画フェーズ1は、2025年の開通を目指す。安倍首相が17年1月に表明した向こう5年間での日本の官民による1兆円規模の支援の一環となる。

日本の外務省によると、首都圏の地下鉄計画(総延長60キロメートル)のうち、フェーズ1ではケソン市ミンダナオ通りからタギッグ市の工業団地「フード・ターミナル(FTI)」にあるフィリピン国有鉄道(PNR)の駅までの25キロを整備する。開通から2年後の27年には、1日当たりの乗降者数は約50万人を想定。所要時間は、自動車による現行の約2時間から急行列車で30分ほどに短縮される見通しだ。日本政府は、フェーズ1の総事業費のうち約6,000億円の円借款供与を検討している。

円借款の供与条件は、日本タイド(調達先を日本に限定)で、金利は年0.1%(コンサルタント部分は0.01%)、償還期間は据置期間12年を含め40年となる。

両国政府は同日にこのほか、◇ブラカン州プラリデル市のバイパス道路(約25キロ)整備計画(21年完成予定)への最大93億9,900万円の円借款(一般アンタイド)供与◇ミンダナオ島周辺のテロ対策や、治安当局と反政府勢力との戦闘が続いたマラウイ市の復興に必要な資機材を日本から調達するための25億円の無償資金協力◇海上自衛隊がフィリピン海軍に貸与していた練習機「TC90」5機の無償譲渡─について、交換公文に署名した。

600キロのリニア開発推進
製造業3年計画、世界先端目指すNNA POWER ASIA 2017年11月30日付

中国

高速鉄道車両「復興号」。発改委は3年計画で鉄道車両技術のさらなる引き上げを進めるとしている=2017年11月、江蘇省無錫市(新華社)

中国国家発展改革委員会(発改委)はこのほど、軌道交通や船舶、ロボット、スマートカーなど今後の発展が期待できる製造業で、技術力をさらに引き上げる3カ年計画を打ち出した。時速600キロメートルのリニアモーターカーの開発などを推進する。ほか産業ロボットなどの分野で技術水準を引き上げ、世界先端の競争力をつけることを目指す。

発改委が11月27日に「製造業核心競争力増強の3年行動計画(2018~2020年)」として発表した。計画の対象となった産業分野・製品を見ると、軌道交通では時速600キロクラスの高速、160キロクラスの中速のリニアの研究開発(R&D)推進や、最高時速250キロ版といった高速鉄道の速度ごとのシリーズ化を目指すとした。ほかモノレール、鉄道の自動運転システム、運行管理システムのスマート化、ハイブリッド式の動力車両、時速160キロの貨物車の産業化、量産化を図るなどとしている。

工業分野を中心に近年市場が拡大しているロボットは、共通の操作システムといった核心技術の開発能力の引き上げに業界を挙げて取り組むとした。産業用ロボットは運搬や溶接、塗装、洗浄といった主要製造工程をすべてカバーするラインアップを整備する。

清水・前田の地下鉄トンネル、1本目が完成NNA POWER ASIA 2017年11月1日付

ベトナム

シールド機を使ったメトロ1号線の地下トンネル掘削工事の1本目が完成した=17年10月31日、ホーチミン市

清水建設と前田建設工業は10月31日、ホーチミン市都市鉄道(メトロ、地下鉄)1号線(ベンタイン―スオイティエン間)で車両が走行する地下トンネルの片側1本目の掘削工事を完成した。ベトナム国内の掘削工事で初めて使われた「シールド機」と呼ばれる日本製の大型掘削機がホーチミン市中心部の地下を781メートルにわたり掘り抜いた。

清水建設と前田建設工業からなる共同事業体(JV)は、ほぼ工期通りの約5カ月でバーソン駅(ホーチミン市1区)予定地からオペラハウス駅(同)予定地までのトンネルを掘削した。

地下を掘り進めるシールド機を使えば道路を封鎖して地上に穴を開ける必要がない。このシールド工法により交通量が多い市中心部の車両の通行を確保するとともに、軟弱な地盤の上に建つオペラハウスなど歴史的建造物への工事の影響を抑えた。

シールド工法は、国土の狭い日本で地盤や地質に合わせた掘削技術が発達を遂げた。JVの河合信之プロジェクトマネジャーはNNAに、「考えていた以上に地下水が多かった」として地盤の安定に配慮しながらトンネルを掘ったと明らかにした。1号線の事業主であるホーチミン市都市鉄道管理局(MAUR)の代表者も10月31日に開かれた式典で、「ゼネラル・コンサルタントのNJPT(日本工営が幹事会社)とともに清水建設と前田建設工業のJVの多大な努力を認めたい」と称えた。

直径6.8メートル、長さ8.5メートルある円筒形のシールド機はいったん解体された後で組み立て直され、来年テト(旧正月)前後に2本目の掘削工事に入る。2本目の完成は来年6月ごろを見込む。

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