【アジメシ】
シンガポールの若手クリエーター
老舗アワビ料理に舌鼓
昼食をはさみながら、アジアに生きる人々の生活や夢を垣間見る連載企画「アジメシ」。今回はシンガポールの若手クリエーター、ケント・チア(30)さんが「アワビ麺」の老舗レストランを紹介してくれました。経済成長とともにシンガポールの街並みが均質化していくことに寂しさを感じているというチアさん。クリエーターとしての立場から社会に一石を投じたいと考えているそうです。(取材=NNAシンガポール編集部 久保英樹)
「均質化した社会に風穴を開けるようなクリエーターになりたい」と話すケント・チアさん=シンガポール(NNA撮影)
「商業施設にあるレストランは似通っていて面白みがない」。こう語るケント・チアさんが紹介してくれたのは、シンガポール中東部のレースコース通り沿いにある中華レストラン「Lam’s Kitchen」。1975年創業の「アワビ麺」で有名な老舗飲食店の本店だ。
看板料理のアワビ麺は7.3Sドル(約580円)。ショッピングモールの中華レストランにある同様の料理に比べると破格の値段で、アワビが入った麺類を食べることができる。このほかにも、アワビと鶏肉がふんだんに入ったスープ(18.8Sドル)、塩漬けした鳥もも肉の蒸し焼き(5.8Sドルから)をすすめてくれた。
チアさんは8年前に父親にこの店に連れてきてもらって以来、しばしば訪れている。同じ通りにある独立系のカフェと合わせて、昔ながらのシンガポールの雰囲気が残っているため、お気に入りの場所になった。道路脇の開放された室外の空間で食べるのが趣があってよいという。同じ看板でも本店ならではの味わいが好みだ。
看板料理のアワビ麺(左上)、塩漬けした鳥もも肉の蒸し焼き(左下)、アワビと鶏肉がふんだんに入ったスープ(右)(ケント・チアさん撮影)
チアさんの職業はクリエーターだ。オーストラリアの大学でメディアを専攻後、シンガポールに戻ってきてから広告代理店などで数年間勤務。クリエーターとして独立を目指し、現在はプロジェクトベースで企業の契約社員を務める傍ら、フリーランスのデザイナー、フォトグラファー、ライターとして生計を立てている。
共働きの両親と中部ノベナ地区の公営住宅で暮らしている。休日は、趣味の写真撮影をしたり、友人とマレーシアへ旅行したりして過ごす。大きな海外旅行は年2回ほど。特に日本は大好きだ。独特な文化を持ち、クリエーターの自分にさまざまなインスピレーションを与えてくれる。これまでに8回訪れた。来年は冬の京都を訪れる予定だ。
均質化した現代社会に風穴を
チアさんは、シンガポールは都市開発に伴い、街並みがずいぶんと変わってしまったと感じている。商業施設に限らず、あらゆるものが均質化される中、自分が生まれ育ったノベナ地区も近代的なスーパーマーケットや商業施設が増え、昔ながらの店舗がなくなっていくことを寂しく思っている。
クリエーターという職業の魅力について聞くと、「一般的な仕事と違って、答えがないこと」。自らの作品を友人や地域社会に共有していくことで世の中にインスピレーションを与えていきたいという。
2年以内に起業し、クリエーターとしての活動を経済面で確固たるものにしていくのが当面の目標だ。老舗レストランと同様、独特なテイストを持つクリエーターとして、「近代化されたシンガポール社会に風穴を開けていきたい」と話した。
中華レストラン「Lam’s Kitchen」(ケント・チアさん撮影)
- DATA
- Lam’s Kitchen(本店)
- 住所:460 Race Course Road, Singapore 218700
- 電話番号:65-6398-1154
- ウェブサイト:http://www.lamskitchen.com/
- 営業時間:午前11時~午後9時
- 定休日:月曜日