カンパサール

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NEXTアジア ウラジオストク

日系企業にとって有望な消費市場はどこなのか。カンパサール編集部は中国やシンガポールといったおなじみの市場ではなくアジアの限界にまで視野を広げ、まだよく知られていない10カ国を選定した。

現地ルポ2 ロシアの東アジア玄関口、存在感示す日系商品

成田から飛行機でわずか2時間。こんなところに「アジアの、その先」があった。ロシア極東の都市ウラジオストクは、町並みは完全にヨーロッパだが、中国や韓国、日本に近いことからアジアの商品が身近な市場だ。その中でも日系商品は品質の高さが評価され、ビールからインスタント食品、トイレタリーまでさまざまな分野で存在感を示していた。(NNA カンパサ-ル編集部 大石秋太郎)

人口が希薄でモスクワからも遠いため、ウラジオストクを含めた極東地域はソ連崩壊後、東の果ての地として開発が遅れていたが、2012年のAPEC(アジア太平洋経済協力)の開催を契機にインフラ開発が一気に進んだ。中国の東北地方に接し、韓国や日本など巨大市場にも近いことなどから、現在もロシアの東アジアへの玄関口として重要視される地域となっている。

プレミアム市場で認知度ばっちり アサヒビール

「アサヒスーパードライ」のほか、黒ビールの「ドライブラック」、発泡酒の「アサヒ本生アクアブルー」と、ウラジオストクのスーパーではほぼどこでもアサヒビールの商品が買える。ロシアでは「発泡酒」の区分が無いため、いずれも同じ価格(500ミリリットルで139ルーブル=約220円)だった

「アサヒスーパードライ」は、ウラジオストクを含む極東ロシアで最も知られている日本ブランドの一つといえるだろう。

アサヒビールは1998年からハバロフスクを通じてビールを輸出。輸出事業の範囲はウラル山脈より東側のアジア・ロシア※だが、主な市場はウラジオストクを中心とした極東地域だ。スーパードライは350ミリリットル缶、500ミリリットル缶、小〜大びん、10リットルたるなど、幅広いラインアップを展開している。ウラジオストクのスーパーマーケットでは、ほぼどこでもスーパードライが売られている。

アサヒビール経営企画本部国際部の深山清志部長は「プレミアム市場で日系ビールの中では非常に高いシェアを維持している。極東はもともと日本の製品が普及し、理解度が高いため、日系商品にファンが付く環境が整っている」と話している。

同社はウラル山脈以西の欧州ロシア※では異なる事業戦略を展開。2008年には地場大手バルチカとライセンス契約を結び、現地産のスーパードライを販売している。ただ、欧州ロシアは競争が激しい上にアジアの商品が身近ではないため、「アジアロシアとは市場が全く異なる」(深山部長)。ここ数年は欧米諸国からの経済制裁やルーブル安を背景とした消費の弱まりが響いているが、今後の日露関係の改善などが進めば、ロシアでの日系ビールは伸びる余地が大きいと同社はみている。

最新かつ最大のSC「セダンカ・シティー」

ウラジオストクの中心部から北へ約10キロメートルの自動車専用道路沿いに今年7月、新しいショッピングセンター「セダンカ・シティー」がオープンした。

総面積は9万4,000平方メートルで、ウラジオストクでは最新かつ最大の複合商業施設だ。100以上の店がテナントとして入居できる。取材当時はまだ半分くらいがオープン予定の段階だったが、案内してくれたウラジオストク在住のロシア人男性は、「中心街から車で30分程度とそんなに遠くない。これほどの規模の店は無かったので、今後ウラジオストクで主要な商業施設になるに違いない」と話していた。

セダンカ・シティーにはスーパーマーケットのほか、家電量販店や衣料ブランドのショップ、フードコートなどが入居する。特に必見なのは地下の広大なスーパーで、生鮮食品から加工品、酒類、輸入品、トイレタリーといったそれぞれの売り場が大きい。輸入品も充実しており、日本や韓国などアジアの商品も多く見かけた。

ダイドードリンコ、ロシア自販機事業の足がかりに

海辺につながるアドミラーラ・フォーキナー通りでは、ケバブなど軽食を売るキオスクが立ち並ぶ一角にダイドードリンコの自販機が設置されていた

ウラジオストクの空港や港湾施設、商業施設が集まる道路を歩いていると、おなじみのダイドードリンコの自動販売機が姿をあらわす。飲料は全て日本からの輸入で、商品カテゴリーは日本のものと変わらない。

値段は、「デミタスコーヒー」が最も安く70ルーブル(約120円)。最も高い商品は果汁飲料「さらっとしぼったオレンジ」の100ルーブルだった。街中にある小型の売店(キオスク)で売られているコーラ(500ミリリットルで60ルーブル)などに比べて割高だが、「おいしい」「ヘルシー」と現地の消費者に好評だ。同社によると、売れ筋は、炭酸飲料「ミスティオ グレープ」。現地消費者の健康志向が高いことから「エナジージム」も好調という。

ダイドードリンコは2008年からこれまで、ウラジオストク市内に自販機を百数十台設置している。日本の中古車を輸入している現地の業者から自販機ビジネスをしたいと申し出があったのがきっかけだった。ロシアではウラジオストクでの事業が契機となり、モスクワ市と自販機を設置する契約を交わしている。

身近な日本ブランド

市内にはメード喫茶風の日本食レストランもあった。女性従業員がみなメード風の制服を着るなど、店は日本的な「カワイイ」要素がふんだんに取り入れられていた

ウラジオストクを歩いていると、日本の商品が現地で確実にブランド力をつけていることがいろいろなところでうかがえる。スーパーでは、アサヒスーパードライのほか、日清の即席めん、UCCのドリップコーヒーなど、日持ちのする日系食品が当たり前のように売られている。日本のトイレタリーを専門に扱うチェーン店もあった。地場メーカーのほか、欧州や韓国の企業もしのぎを削る中で、日本の商品もしっかりと存在感を示している。

情報配信事業や貿易事業を手掛けるJSN(新潟市)は、日系企業の中では早い時期からロシア極東への輸出を展開している。扱うのは、コーヒーやカップ麺、しょうゆ、その他菓子などが主で、商品は現地資本のスーパーや日本食材専門店など小売店に並ぶ。

同社が極東への輸出事業を開始したのは2000年。当初はトイレタリーや日清の「カップヌードル」などを扱っていた。2000年代前半は中古車やエンジンオイルなど自動車用品以外はほとんど日本の消費財は出回っていなかったが、アジアに数年後れる形で、紙おむつやトイレタリー、インスタントラーメンが急激に伸びた。

現在は、リーマンショックから続く景気の落ち込みで苦しい時期だが、一番景気が良かった頃は、「モノを持って行ったら何でも売れる状況」だった。こうした日系企業の輸出業務によって、高品質な日本ブランドは現地に根付いていった。

世界大手チェーンの進出まだまだ

バーガーキングは、ウラジオストクに進出する外資大手チェーンの代表格だ。ラッピングバスも走らせるなど力を入れている

ウラジオストクには欧米の大手消費チェーンの進出があまり進んでいない。現在、市内に出店している国際的なブランドチェーンは、米バーガーキングやスペインのザラ、フィンランドのヘスバーガーなど一部に限られる。ロシア極東地域の最大都市とはいえ、首都モスクワからは約9,000キロメートルも離れていることから、欧米の企業だけでなく、モスクワの企業の進出も多くないようだ。

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