NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2019, No.51

2019年4月1日
世界を視野に、大田区3500社のものづくり

電気設備工事大手の九電工(本社・福岡市)が、発展著しい東南アジアで事業展開を加速している。統括拠点を置くシンガポールをはじめ、東南アジア各国に拠点を持ち、全拠点の総従業員数は約600人。日本水準の技術で、日系企業の工場やビル建物の電気、空調、配管などの設計から施工、メンテナンスを手掛ける。東南アジア各国で多岐にわたるプロジェクトそれぞれの原価など、採算性を把握しにくいのが課題だったが、その数字を「見える化」したのが東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供するグローバル経営管理ソリューション「mcframe GA」だ。

プラスαの付加価値

藤延昭弘 社長

藤延昭弘 社長

電気が点く、空調が動く、水が流れる─企業活動に必要不可欠な設備機能を備えた、完成品としての工場やビル建物を顧客企業に引き渡す。それだけにとどまらず、定期的なメンテナンスサービスによって「その後も20年、30年間と普通に動くようにするのが大事だ」と、九電工グループの東南アジアの統括拠点、九電工東南アジア(シンガポール)の藤延昭弘社長は強調する。日本で培った先進技術の設備・サービスを東南アジアに提供しているのが九電工グループだ。

数百万円以下の小額工事も丁寧に手掛ける。東南アジアの地場設備企業が「ここから先は会社のサービス範囲ではない」と相手にしない工事でも、「顧客の身に立って、『+α』の付加価値のサービスをやっていくことが激しい競争の中でより大切になっている」と藤延社長。「信用を得られれば、数億円という大型受注にもつながっていくと考えている」と語った。

海外事業展開

九電工グループは2012年にマレーシアとベトナムにそれぞれ事業会社を設立して東南アジアへの初進出を果たすと、13年にタイにも法人を設立。同年5月には、発電所や石油化学コンビナートなどの大型事業を手掛けるシンガポールの大手エンジニアリング企業、APECOを買収した。18年にはインドネシアに駐在員事務所も設けた。6億人という人口を抱えて経済発展する東南アジアで、高い品質の設備需要を取り込むのが狙いだ。まだ東南アジア進出は10年にも満たない、この地域では「若い企業」だが、近年は深刻な大気汚染に見舞われるタイを中心に、太陽光発電など再生可能エネルギー事業の展開にも力を入れるなど多角化も図っている。

東南アジア5カ国に拠点

大庭安正 副社長

大庭安正 副社長

シンガポールに東南アジアの統括拠点としての九電工東南アジアが設立されたのが14年11月で、設立から4年以上が経過した。東南アジア各国で進むプロジェクトは数多く、多岐にわたる。全拠点の年間プロジェクト数の合計は小額案件も含めれば200件以上にも上る。

だが、各拠点の経理システムは異なり、会計科目も書式もまちまち。各拠点でエクセルに出力してもらったデータを統括拠点でまとめるなどの煩わしい作業もあった。

そこで「各国拠点に統一したシステムを導入し、統括拠点として各国法人の資金やプロジェクトの動きを的確に把握する必要があった」と九電工東南アジアの大庭安正副社長は指摘する。

システム導入に向けて動き出したのが、九電工の本社国際事業部から異動してきた大庭副社長と坂井隆一部長だ。日本や欧米の大手ベンダーなどが提供する各種基幹業務システム(ERP)を入念に検討するなどした結果、B-EN-Gが提供するグローバル経営管理ソリューション「mcframe GA」の導入を決めた。

坂井隆一 部長

坂井隆一 部長

「mcframe GA は、日本語や英語はもとより、タイ語やベトナム語など多言語対応していたほか、プロジェクト一つ一つの原価管理ができること。そしてコスト競争力が非常に高かった。最終的には、どこよりも一番親身になって丁寧に対応してくれそうなことが決め手となった」と坂井部長は説明する。







将来に向けた「物差し」

18年1月にシンガポールの九電工東南アジアとAPECOでmcframe GA を先行して導入したのをはじめ、同年9月から19年3月にかけてタイ、ベトナムとマレーシアでも本格運用がスタートした。

「各国の拠点の経営状況が見られるだけでなく、各プロジェクトの原価など採算性という縦軸でも簡単に見られるようになった。企業の成長を支えるのは、信頼できるデータという物差し。データがしっかりしていないと経営や事業判断を間違える可能性もある」と藤延社長。数字が把握できれば課題や潜在的な事業リスクも見えてくる。東南アジアでの事業リスクを減らし、安定的に黒字化を実現していくことで、新たな事業チャンスも出てくるだろう。

「日本は20年に開催される東京五輪・パラリンピック後にはインフラの再開発は一段落する。五輪後、成長する海外でのビジネスチャンスを捉えていく。将来のための基盤づくりに信頼できる経営管理システムが欠かせなかった。東南アジアでも九電工としての独自性を発揮し、新しい業態にもチャレンジしていきたい」と意気込んだ。


◉企業プロフィール

九電工東南アジア
九電工東南アジア
Kyudenko South East Asia Pte. Ltd.
所在地:32 Penjuru Road, Jurong, Singapore 609136
事業内容:東南アジアでの事業展開の統括管理
Tel:(65)6602-0613
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