NNAカンパサール

アジア経済を視る February, 2018, No.37

2018年1月1日
製造革新に備えよ。

ドイツの「インダストリー4.0」に続き、アジアにも次なる製造業革新の波が押し寄せてきている。約20年にわたって製造業向け統合基幹業務システム(ERP)を提供し続けてきた東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)も、次世代のものづくりに備える製造業を支援するため、IoT(モノのインターネット)向けの製品群を強化。ERPとIoTの垣根を越えた「ものづくりデジタライゼーション」を提唱する。

B-EN-Gは東洋エンジニアリングのIT事業部だった1996年に、製造業向け生産・販売・原価管理ソリューションの「mcframe」をリリースし、国内外で500社を超える導入実績を持つ。

製造業の現場では、デジタル化やバーチャル化の水準を高めることで製造コストの極小化を目指す、生産革新の動きが強まっている。こうした動きは欧米及び日本だけでなく、中国政府が「中国製造2025」を掲げるなどアジアでも活発化している。

「タイでは1年ほど前、生産革新はまだまだという印象を持ったが、その後状況は急速に変わり、タイ版インダストリー4.0がブームになってきている」と、B-EN-Gの新商品開発本部・マーケティング企画本部の入交俊行本部長は語る。

同社はこうした時代のすう勢を見据え、製造業向けの新たなメッセージとして「ものづくりデジタライゼーション」を提唱している。同社の「mcframe IoTシリーズ」はその実現に向けたソリューションの一つで、「SIGNAL CHAIN」「MOTION」「RAKU-PAD」の3つの製品群から成る。いずれも海外工場のIoTへの入り口として、同社が太鼓判を押す。




生産現場の状況を正確に電子データで管理

このうち「SIGNAL CHAIN」は、製造現場のデジタルデータを管理できる稼働・製造モニタリングシステムだ。

最も基本的な機能は設備の稼働モニタリングで、設備に設置された信号灯から送信される無線によって運転・停止情報を記録できるものだ。情報はインターネットを通じて参照できるため、日本のマザー工場はもちろん海外の工場の様子もリアルタイムでモニタリングができる。

入交本部長は「IoT入門編としてうってつけ」と話す。信号灯が知らせるのはさまざまな情報の中でも一番求められる変化点であり、生産性の改善に直結しやすい。また、送信機の取り付けと簡単なセットアップだけで、翌日からでもほぼマニュアルいらずで直ぐに使える手軽さも売りだ。

mcframeがもともと得意とする、言語の切り替えや多言語対応の辞書機能も搭載しているので、海外での需要が大きいという。導入実績は約30社で、およそ半分をタイや中国、米国、フランス、メキシコ、インドネシアと海外が占める。自動機を持つ工場であれば自動車や食品など、業種を問わず採用されている。

SIGNAL CHAINのモニタリングは、単に設備が「動いた、止まった」という稼働状況にとどまらない。昨年11月には、設備から得られる非定形なデータを収集、格納、可視化し、より管理しやすくする「IoTプラットフォーム機能」を追加した。例えば、温度や湿度、圧力、品番、シリアルナンバー、ロットナンバー、処理時間、処理担当者といったさまざまデータから見たい項目を選択し、時系列で並べたり、グラフ化して見たりすることができる。設備が停止した時に可視化されたデータを並べて直感的に原因の絞り込みができるようになれば、予知保全につなげていける。

現場の人の動きを分析

「MOTION」は、作業現場に設置したモーションセンサーで人の体の動きを3次元で測定し、動作・姿勢を分析できるシステムだ。例えば、腰の位置から手首の先の距離や、手の軌跡、歩行特性などを可視化・データ化することで、作業の効率化を実現する。危険な場所に手が近づいたらブザー鳴らしたり、作業指導としてベテランと新人の動きをデジタル化したりできる。

最近では応用的な利用も増えている。3次元の設計データと組み合わせて、仮想現実(VR)空間を作り、工場や生産設備、生産ラインの新設、製品の設計開発段階での操作や作業のシミュレーションができ、設計の最適化を図れる。

国内では大手自動車メーカーなどですでに採用されているが、入交本部長はむしろ海外の工場でこそ、その効果を発揮できるとにらむ。言語や文化の壁がある中で効率的な動きを現場の従業員に伝えるのには困難がつきものだが、MOTIONを使えば数値化した具体的なデータを使っての指導が可能になる。

紙帳票を手軽に電子化

紙帳票の電子化への関心が高まる中で需要が増えているのが「RAKU-PAD」だ。同製品は、ユーザーがそれまで使用していた紙帳票のイメージのまま、タブレット端末でデータを入力できるのが特徴で、使い慣れたフォームそのままにデジタル化できるため利用の教育が少なくて済む。

従来の紙の帳票は一度報告された後に、ファイリングして埋もれてしまうようなケースが多いが、これをデジタル化し共有することで、見たいタイミングで簡単にグラフ化できるなど、データの利活用につながる。離職率が高い海外でも、一度デジタル化して共有すれば担当者が変わっても簡単に必要なデータを抽出できるので安心だ。

さらに、RAKU-PADは手描き入力や数字・日付入力、選択入力、音声入力など32種類のデジタルインプットに対応。普段使っているタブレットやスマートフォンと同じ操作でデータ入力ができるので、日本人も現地人スタッフも同じ感覚で使えるのが嬉しい。

入交本部長は「紙帳票を電子化する際に余分なインターフェースを作らなくてすむことや、入力後すぐにデータを見られるのが時代のニーズに合い、お客様から高い評価を頂いている」と手応えを感じている。

これまでの導入実績は約20社で、昨年からは海外でも「R-PAD」の名称で展開。日本語のほか、中国語と英語に対応している。

ERPとIoTの垣根をなくす

B-EN-Gが打ち出す「ものづくりデジタライゼーション」は、これまで実績を重ねてきたERPや、現在強化を進めているIoTを含む大きな概念だ。ERPは結果論的で、正しい数値を管理することが大切だが、IoTはデータの正確さよりもいま現在のデータを見られることが重要視される。「この点で双方は両極端にあるが、もともとエンジニアリング会社で複合価値を生み出すことに長けているB-EN-Gは、ERPやIoTの垣根が無いものを供給していきたい」(入交本部長)


東洋ビジネスエンジニアリング株式会社

TEL:03-3510-7351
Email:mcframe-iot@to-be.co.jp
海外現地法人:中国(上海)、タイ(バンコク)、シンガポール、インドネシア(ジャカルタ)、米国(シカゴ)
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