2021年12月1日
アジアで存在感、大田区企業の技術

切削、穴開け、曲げ、溶接、プレス、研磨、めっき、組み立て、設計──
ものづくりに関わるさまざまな技術力を持った製造業4,200社が集積する東京都大田区。
現代のグローバル化したものづくり時代にあっても、その創意工夫と高い技術で縁の下の力持ちとして存在感を示し続けている。
成長するアジアでの高度なものづくりを支え、アジア市場に挑む大田区企業の活躍を追った。

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「困ったときの栄工舎」リーマの品ぞろえは世界一。
樹脂素材用のリーマ開発で海外市場を見定める。

株式会社栄工舎

代表取締役 越智宏晃


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活性アルミナ(アルソ)に着目した
「絶縁油浄化」を皮切りに世界へ進出。
語学を活かした外国人社員の活躍が事業拡大を支える。

株式会社三美テックス

代表取締役社長 田丸久喜

きっかけは月面探査ロボット。
高トルク・小型・軽量・長寿命化を実現した
「ピエゾソニックモータ」で2兆円市場に参入。

株式会社Piezo Sonic

代表取締役 多田 興平

シールドマシーンからソーセージカット機の設計・製造まで。
米国、タイの食品大手も認める食品加工技術で海外展開を拡大。

株式会社共栄エンジニアリング

代表取締役社長 太田 尚良

株式会社アイオイ・システム
製造・物流現場の「ポカミス」をデジタルで解決支援。
コロナ禍においてもアジア展開を加速する。

株式会社アイオイ・システム

代表取締役 多田 潔

三和デンタル
「金具のない入れ歯」で業界の常識を打ち破る。
デジタル×歯科技工技術で新たに切り拓く東南アジア市場。

株式会社三和デンタル

代表取締役 菅沼 佳一郎

小松ばね
創業から79年、様々な形状のばねの製造を支える熟練の技術。
デジタル化の波が押し寄せる中、新たな市場を見つけていく。

小松ばね工業株式会社

代表取締役 小松 万希子

PT. KOMATSU BANE INDONESIA

ディレクター 小松 久晃

ネジ1本で世界に挑む
大手メーカーが探し求める高いねじ加工技術。
自動車大国・中国でも安全性・品質で応える。

株式会社葵精螺製作所

代表取締役 関 信也

アジアの防災・減災に技術で貢献へ、山小電機製作所
活発化するアジアのインフラ事業や不動産開発に「安全」を。
自社開発製品で海外の防災・減災を目指す。

株式会社山小電機製作所

代表取締役社長 小湊 清光

ネジ1本で世界に挑む
東京・蒲田から海外販路開拓、カシメ機をアジアへ。
中国、アセアン各地にサービス拠点、販売代理店の展開に成功。

株式会社弘機商会

代表取締役社長 高原 隆一

ネジ1本で世界に挑む
リーマン・ショックからの起死回生の一手は「自動化」。
自動車バッテリー部品「液口栓」の低コスト生産をタイでも実現。

株式会社ヤシマ

代表取締役社長 箕浦 裕

ミクロン単位の加工から EV、ロケットまで ── 大田区産業振興協会

日本の製造業をリードしてきたと言ってもいい大田区のものづくり。「東京都内である大田区は地価などが高く、ものづくりの操業コストは比較的高い。にもかかわらず、4,200社の製造業が活躍できているのには、付加価値の高い技術力が背景の一つ」と、大田区産業振興協会のものづくり連携コーディネーターは指摘する。大手企業が求める厳格なものづくりにずっと応えてきたため、家電から自動車、航空宇宙、医療分野などの高度技術分野でも世界が驚くほど、高品質で精巧な部品を作り出すDNAがある。

小ロットの試作品のように、何らかのものづくりを実現したい発注者は、まず窓口である大田区産業振興協会に相談する。4,200社それぞれの社長や技術者らの顔だけでなく、工場の導入設備や手持ちの受注状況などを知っているコーディネーターらが、そのような加工はどの工場が最適かを判断して打診する。大田区では「仲間まわし」と呼ばれる、専門技術を区内企業が相互に活用して分業で製品を完成させるものづくりの高度な連携体制が機能しており、案件によっては複数の企業が連携して受託する。発注者からの依頼は、年間およそ1,000件に上る。

中国やタイにも200社超の大田区企業

低価格競争が激化していた中国でも、中間層の増加とともに、高品質な商品への需要が高まり、産業の高度化が進みつつある。日本全国はもとより、海外にも出向いて大田区企業の売り込みに邁進している同協会海外取引相談員によると、中国の技術者が「日本製は価格が高いのは知っているけれど、高い品質が求められる基幹部品だから」と言い、これまで受注を奪っていた韓国製や中国製などから日本製に戻す動きも一部で出てきているという。大田区の高度なものづくりのDNAが国内外で求められるという第2波が来ているとも強調する。

大田区からは中国やタイを中心に200社以上が海外進出し、工場を構えるなどしている。「海外の日系企業からサプライヤーはできれば日系企業にしたいという引き合いも増えています。また昔は日本で製品開発して海外で生産する流れだったが、近年は現地で開発する動きが加速している。試作で悩んでいるなら気軽に問い合わせて欲しい。大田区企業が応えます」とものづくり連携コーディネーターは呼びかけた。


〈問い合わせ先〉

公益財団法人大田区産業振興協会
経営支援セクション
東京都大田区南蒲田1-20-20 大田区産業プラザ(PiO)
TEL:03-3733-6126 E-mail:kaigai@pio-ota.jp
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