アジア通

ヨガのカリスマが経営する企業に北朝鮮の最新スマホ事情、そしてミャンマー人が支えるなじみの味。その先のアジアを満載したNNA倶楽部会員向けの月刊Webマガジン

【アジア取材ノート】ミャンマー成長の星 産業化支える若人〜

2016年9月号

基礎学力が欠かせない

最も人気が高い学科は自動車整備科だ。民政移管後の自由化で中古車の輸入規制が緩和され、流入台数が急増。整備工場や技術者の数が追いついていない。4月に現地入りしたシニア専門家の械塚是秋(かいづかこれあき)さんは「ミャンマーは法律も資格制度も未整備。自動車が一気に増えたが、この周辺にはカーエアコンの修理屋もない。だが、みんなやる気はある」と笑う。

自動車整備科で学ぶソー・モー・トゥンさん(24)は、西部のチン州出身だ。11年生(日本の高校2~3年)卒業試験に合格できず、マンダレーの自動車整備工場で働いた後、新聞を見てBAJ訓練校を知り入学した。卒業後は「ヤンゴンの日系自動車整備工場で働いて経験を積み、将来は独立したい」と話す。

アウン・ゾー・ウーさん(23)も、建設現場や農機整備の仕事を経験してから入学した。「卒業後はヤンゴンの自動車整備工場で修行を積み、将来は故郷のザガイン管区で、農機の修理工場を開きたい」と語った。

期末試験が終わり、教室ではテストの解説が行われていた

ただ、最近増えている年式の新しい車は電子制御システムが多く、整備士も古い技術では対応しきれなくなっている。インストラクターとして働くチョー・ミョー・ウーさん(29)は「電子制御システムの理解が日本企業への就職では課題」という。教える立場では「研修生の基礎教育レベルによる吸収力の差が、実践にも表れる」という悩みを抱える。

学校は意欲があっても教育の機会に恵まれなかった若者を積極的に受け入れている。自動車整備科の選考基準は8年生(日本の中学2~3年)修了レベル。技術が高度になるほど基礎学力が問われる。

自主継続できるか

ヤンゴンの日系企業への就職実績も上がってきた。直近までで自動車関連にインターンを含め7人、橋梁メーカーに3人、土木建設会社に4人、電気工事会社に5人を送り出した。

町外れにある倉庫建設現場では、溶接科の卒業生が働いていた。市内は木造の建物が目立つが鉄筋建築も増えている

パアン事務所の吉田伸也所長は「ここは高等教育機関ではないが、特に自動車整備ではミャンマーナンバーワンを自負している」と胸を張る。日本人専門家の指導に加え、BAJは2000年代に西部ラカイン州で職業訓練校を運営した実績もあり「長く日本人と働いてきたミャンマー人が、質の高さを支えている」という。

最大の課題は、ミャンマー政府への学校運営の引き継ぎだ。学校は今年末までの3年間、日本外務省の「日本NGO連携無償資金協力」から資金を得て、来年から3年間は別の資金を確保してBAJが継続運営することになっているが、その後はミャンマー国境省に引き渡す予定だ。

ミャンマー側が十分な資金と能力の高い人員を確保して現在の教育のレベルを保ち、人材を輩出し続けられるか。経済発展の加速で技術者の需要が拡大する中、BAJの支援は、その後も見据えた新たな段階に入っている。

ブリッジエーシア ジャパン(BAJ)

1993年設立。当初はベトナム戦後復興を支援。ミャンマーでは95年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の委託を受けラカイン州で活動を開始。ラカインやマンダレーなどの中央乾燥地帯で職業訓練や女性の生計改善、学校建設、井戸修繕なども手掛ける

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