2018年2月15日
国境を越えた「超高速アジャイル開発」の実現

アジアの人件費高騰で優秀なローカル営業人材の確保が難しくなっている。「自分で考え、自分で動いて新規開拓できる優秀な営業人材もいないのに、自社商品やサービスを売っていけるのか?」と、現地での新規開拓の伸び悩みに直面している日系企業も少なくない。だが、こうしたアジアの営業人材難時代にこそ求められる営業戦略があることが分かってきた。

営業人材の給与が高くなるワケ

 

NNAがアジア各地に進出している日系企業に対して2017年9月に実施した給与動向調査(有効回答2,238社)によると、18年はアジア各国で営業の非管理職の昇給率が、営業全体の昇給率をほぼ上回る見通しだ。各国別では、ベトナムの営業の非管理職の昇給率は8.2%と、営業全体の7.0%を1.2ポイントも上回った。インドネシアも非管理職が7.2%と、営業全体の6.8%より0.4ポイント高い。タイやミャンマー、マレーシア、シンガポール、インドなども同様の傾向となっている。

NNAグローバルリサーチグループの早川明輝氏は「現場の前線で動くジュニアクラスの営業人材は、日系企業間でも取り合っている。競合他社からの引き抜きを阻止しようと昇給せざるを得ない状況になっていることが背景にある」と分析する。

調査では、「現在の人件費が許容限界点を既に迎えている」と答えた企業は49%に達した。高騰する人件費対策として、売り上げ向上で乗り切ろうとする企業が34%、続いて業務効率化が33%に上った。早川氏は「東南アジアで営業力の強化や体制の見直しが求められている」と指摘する。

“動かない”ローカル営業

インフラなどの評価が高く日本企業が多数進出するティラワ経済特区=2017年、ヤンゴン郊外(NNA)

事実、「ローカルの営業が動いてくれない」と、東南アジア各地の日系企業からも嘆きが聞こえてくる。タイ・バンコクでIT機材を販売するある日系企業の営業人員は8人。日本人のマネージャー1人を除き、7人全員がタイ人だ。営業先は日系企業とローカルと半々ずつ。日本人マネージャーは「20代の若い営業人員が中心だが、日本では当たり前とされている地道な営業を彼・彼女らは嫌がる。新規受注に対してボーナスなどのインセンティブを与えても効果はなく、さまざまな言い訳をして動こうとしない」と話す。

同じバンコクで20数年余りにわたって工作機械を販売する日系企業の日本人担当者も、「ローカル営業の教育は非常に難しい。ローカル人材を幹部に登用する現地法人の現地化など遠い先の話だ」とため息をつく。

日系企業の日本人管理者は、既存顧客へのフォローのほか、経理や日本本社への報告など日々のマネジメントにも忙しく、手取り足取りローカルの営業人材を教育する時間も十分に取れない。こうした現状は日本本社からはなかなか見えにくく、「いい商品なのになぜ東南アジアで売れないのか」と疑問に思ってしまうが、現地での新規開拓の大きな壁となっている。

アジアでは、地理的な要素も営業にとってのネックとなっている。アジア各国では、さまざまな工業団地が郊外に分散してあり、車で往復3~4時間という距離も珍しくない。深刻な道路渋滞もある。1社だけのアポイントで営業に出かけるのは効率が非常に悪く、「最低でも2~3社をまとめて回らないと意味がないが、アポがまとまって取れるのはまれ」(日本人担当者)だ。

タイでは工業団地ごとに日系企業がまとまって活動しているが、窓口の担当者はほとんどがタイ人。自社製品の潜在的な顧客となりそうな日系企業の電話番号とタイ人担当者の氏名などが分かり、さらに面談のアポが取れれば、「営業の突破口となるのは間違いない」と前出の日系企業の日本人マネージャーは話す。

現地営業の第一歩に

「アジアでの営業の第一歩をアウトソーシングする意義は大きい」と語るネクスウェイの藤川省吾さん

情報通信提供サービスのネクスウェイ(東京都港区)はタイやベトナム、インドネシアなど東南アジアの日系企業1万2,000社以上、ローカル企業も30万社以上のリストを保有する。タイの日系企業だけでも6,000社のリストがある。顧客の求めに応じてこのリストを製造業や小売業、病院、学校、レストランなど業種ごとに細かく分類し、ある特定の製品やサービスに対するニーズの聞き取りやアポイント取りなどまでも行う、営業・マーケティングサービス「AS-aP(アサップ)」を日系企業向けに提供し、好評を博している。

製造業向けにITシステムを販売しているバンコクのある大手日系企業は、「現地営業が見込み顧客となりそうな日系企業とのアポが取れず、営業の入り口すら確保できない」のが最大の課題だった。相談を受けたネクスウェイは、同社の顧客となりうるタイの日系製造業を自社データベースから500社抽出。現地パートナー企業のタイ人オペレーターによるアウトバウンドコールを通じて、各企業の連絡先だけでなく、IT部門のマネージャーの名前や直通の電話番号なども集め、リスト化して提供した。

さらに500社に対しITシステムに関するニーズもヒアリング。自社でITシステムを構築しているか否か、競合のITシステムを使っているのかどうか、ITシステム導入の決済権がタイ法人にあるのか日本本社にあるのか——などを聞き取った。ニーズの強弱をスコア分けし、現地営業の優先順位も明らかにした。その上、ニーズの高い企業に対してはアポイントの取得まで実行し、営業の入り口の確保に貢献している。

ネクスウェイ・グローバル事業推進室の藤川省吾氏は「本来、各国拠点で新規顧客の開拓まで実行できるのが理想だが、現実は既存顧客のフォローやマネジメント業務に追われそこまで手が回っていないのが実情。実際に企業訪問に行くまでの段階を弊社にアウトソーシングしていただければ、現地での営業の第一歩を確実に踏み出すことができる」と強調する。

拠点ない国でも営業サポート

ネクスウェイは、顧客企業が営業拠点を持たない東南アジア周辺国での営業展開もサポートしている。

タイに拠点を持つある日系企業は、新規の進出が好調なベトナムに自社製品に対するニーズがありそうだとみて、現地へ出張を企画した。限られた日程で効率よくヒアリングしたいところだが、訪越経験がなく現地のネットワークも乏しかったためネクスウェイに相談した。ネクスウェイは自社でリストを保有するベトナムの日系企業300社近くにアウトバウンドコールを実施。見込み客企業のリストを作成しただけでなく、同社の担当者が1週間の出張で回ることができる訪問先企業のアポを取った。「顧客企業様はベトナムまでの往復のチケットとホテルだけ予約しておいてもらえれば、あとはアポ先を回るだけ。効率的な営業活動が実現でき、非常に喜んでいただけた」と藤川氏。

潜在顧客への電話と訪問は、営業の基本中の基本だが、東南アジアではそんな基本が後回しになりがち。藤川氏は「営業の入り口をしっかり確保できるかどうかが日系企業の東南アジアでの成長のカギを握っている。人材難の時代だからこそ、新しい営業戦略を選択して欲しい」と話した。



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