アジア通
ヨガのカリスマが経営する企業に北朝鮮の最新スマホ事情、そしてミャンマー人が支えるなじみの味。その先のアジアを満載したNNA倶楽部会員向けの月刊Webマガジン
【アジア取材ノート】ミャンマー成長の星 産業化支える若人
2016年9月号
ミャンマー東部カイン州(旧カレン州)の州都パアンは岩山が点在する風光明媚な観光地だ。近年はタイへつながる「東西経済回廊」の要衝として経済も活性化している。この町で日本の非営利組織(NPO)が運営する職業訓練校が現地の若者にさまざまな技術を教えている。
八木悠佑=文・写真
スーパーの内装工事が進むパアン市内の建物。はしごに登って電気配線の埋め込み作業をする若者3人を、電気工事業を営むソー・ハチュリー・リンさん(43)が見守っていた。
市内ではホテルなどの建設ラッシュで、自動車やバイクの交通量も増加している。スーパーの前には新しいホテルの電気工事も手掛けた。軍事政権時代は電力の供給される時間帯に制限もあったが、今は制限がなくなり24時間供給される。電気工事は引く手あまただ。
「人や物資の往来が増え、電気工事の需要が増している。この5年は仕事が多くて断ることも少なくない」(ソーさん)
作業する3人は日本のNPO、ブリッジエーシアジャパン(BAJ、東京都渋谷区)がパアン郊外で運営する職業訓練校の電気科で学んだ。
息の合った働きぶりにソーさんは、「学校で基礎知識は学んでいるし、当初と比べて動きも良くなってきた」と満足げだ。
若者の一人、チョー・マイク・トッさん(19)は今年3月に訓練校を卒業した。「学校での実践的な教育が役立っている。良い技術者になって、将来は電気工事業で独立したい」と表情は明るい。
華のヤンゴン就職も狙う
BAJは2014年に訓練校の運営を開始。今年で3年目に入った。開校当初は建設科のみだったが、電気科、自動車整備科、溶接科も加えて現在は4科から人材を輩出。今年6月までに300人弱が卒業、8割ほどが就職した。経済開放で栄えるパアン周辺で就職する人が多いが、高い技術を身に付けてヤンゴンで日系の自動車や建設関連企業を狙う人も出てきた。
BAJはミャンマー国境省との覚書を結び、同省の教育訓練局の技術訓練学校としてパアンの学校を運営する。ミャンマーでは教育省下の機関を中心に、多数の省が管轄分野で職業訓練を実施。国境省下の訓練校は少数民族が多い辺境地の若者に教育機会を与える役割を担う。
BAJは科により3〜6カ月の全寮制で、無償の技術訓練を施している。入学者の選抜は、やる気や将来の展望を重視。貧しかったり片親だったりして学業を断念した若者や、正規教育を受けられなかった少数民族の若者もいる。
ヤンゴンからパアンまでは車で6時間もかかるが、技術者不足に悩む在ヤンゴンの日系企業関係者の学校訪問は増えている。高い技術を身に付けてヤンゴンで就職をかなえる優秀な卒業生も増えてきた。