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概要

NNA_kanpasar_vol.26

16 KANPASARアジア大貿易時代の幕開けメガFTAの活用とリスク対策NNAアジアカンファレンス2016NNAは2016年11月17日、東京で大型セミナー「NNAアジアカンファレンス2016」を開いた。4回目の開催となる今年は、「メガFTAとリスク対策」をテーマに4人が講演。世界で関心が高まっている大規模なFTA(自由貿易協定)に関する動向や、グローバル化に伴い重要性を増すリスク対策のあり方などについて語った。基調講演低温世界経済とアジア国際金融情報センター理事長/元財務官加藤隆俊氏特別講演いま求められる日本企業のリスク対策共同通信デジタル執行役員リスク対策総合研究所長小島俊郎氏メガFTAを活用したビジネス革新に向けて日本能率協会コンサルティンググローバル開発革新センター長野元伸一郎氏アジアから見た米大統領選とTPPエヌ・エヌ・エーNNAベトナム小堀栄之編集長加藤氏は、成長率などを世界と比較しながら、アジアの現状と課題を解説した。国際通貨基金(IMF)によると、世界の2017年の経済成長率は3.4%となる見通し。地域別では、東南アジア諸国連合(ASEAN)が5.1%伸びるとみられている。加藤氏は「全体として鈍いが、アジアは安心できる成長率を達成する」と解説した。加藤氏が特に注目するのはベトナムで、「政策運営にミスがない」と評価する。海外からの送金が安定しているフィリピンなども順調だとした。ただ、中国の成長率鈍化も注視すべきと指摘。中国での需要縮小や資源価格の下落で、ASEANなど幅広い国・地域が影響を受けるとみる。加藤氏は米国のトランプ次期政権についても言及し、「通貨安などの心配面も多いが、減税とインフラ投資が一緒に行われた場合、アジアからの輸出機会が増えるという面も想定できる」と語った。野元氏は、FTAとEPA(経済連携)について説明し、日本も今後、大規模なFTA(メガFTA)の一つである東アジア包括的経済連携協定(RCEP)に力を入れていくのではないかとの見方を示した。FTAとEPAの効果的な活用については、「あくまでも自身の分析」として複数の企業の事例を紹介。米アップルについては、中国と台湾の経済協力枠組協定(ECFA)や日中韓のFTAなどを有効的に活用している点を評価した。野本氏は、「FTAとEPAの発効が加速すれば、真の公正な競争社会がやってくると同時に、国際的で効率的な分業生産、ビジネスネットワークの発展にもつながる。最新情報をうまく入手し、戦略を随時見直すことが必要だ」と締めくくった。小堀編集長は、TPPからの離脱を掲げるトランプ氏が勝利したことを受け、米大統領選に対するアジアの反応を、取材を基に伝えた。小堀編集長によると、シンガポール以外のTPP参加国は米国に対して貿易黒字のため、米国が保護主義に傾けば大きな影響を受ける懸念がある。マレーシアとベトナムはTPPで最もメリットを受けるとされるため、発効の見込みが薄くなったことは大きな打撃だ。TPP非参加国も、重要な貿易相手国の米国が保護主義に走ることを懸念する。注目を集めているRCEPについて小堀編集長は、「ASEANを中心としたメガFTAで、非常に重要な市場になっていく。中国も参加するので、インドは中国との競争の激化を懸念している」と説明。一方で、「TPPが立ち消えになったとしても、発展途上国にとってはメガFTAに対する期待は大きい」と強調した。経済や社会のグローバル化が進めば、日本人が遭遇するリスクも高まってくる。小島氏によると、日本人が海外で事件などに巻き込まれて命を落とすリスクは、国内の交通事故で死亡する場合より10倍高いという。16年7月、バングラデシュで飲食店襲撃事件が起き、日本人が被害に遭ったが、国内で報道されているだけでもイスラム国の犯行声明は15年秋からテロまでに6件出され、過激派の逮捕事案も8件あった。日頃からの情報収集は有効なリスク対策になる。情報の中でも小島氏が最も信頼できるとするのが事件・事故の報道だ。こうした情報をどう見るかが大切で、テロの犯人や目的、標的、手法、被害の規模といったさまざまな側面で情報を読み取らなければならない。小島氏は、「バングラデシュのテロは、日本人も巻き込まれてしまったと一般的に言われているが、日本人はずっと狙われていた」と話す。情報を正確に読み取っていれば、日本人もテロの対象になっているという現実は認識できていたはずだと指摘した。国際金融情報センターの加藤隆俊氏日本能率協会コンサルティングの野元伸一郎氏NNAベトナムの小堀栄之編集長共同通信デジタルの小島俊郎氏NNAアジアカンファレンスはJA共済ビルで開催されたブース出展 4社アジアでのビジネスをサポート会場の一角には、企業の海外事業を支援する4社がブースを設けた。レオパレス21は、タイとベトナムで駐在員向けに運営しているサービスアパートメントなどを紹介。2017年にはカンボジアでもサービスアパートメントを開く予定だとPRした。日鉄住金物産は、1988年からタイでロジャナ工業団地の開発・運営に携わる実績を持つ。現在は造成中を含めてタイ国内の計6カ所に工業団地を所有、同国への投資を検討する企業にアピールした。FAX通信サービスを手掛けるネクスウェイは、企業の海外拠点や海外事業部の支援について、自社で収集した「東南アジア進出日系企業リスト」などの活用を訴求した。デジタル地図を提供するインクリメントPは17年からはASEANでデジタル地図を提供する予定で、災害対策などに活用できると紹介した。今年のアジアカンファレンスには約120人が集まった。参加した食品メーカーの担当者は「メガFTAの発効でどのようなメリットやデメリットがあるのかが気になって参加した。アジア経済の動向が分かる、大変興味深い講演だった」と話していた。