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概要

NNA_kanpasar_vol.26

KANPASAR 11前時代の秘境か、次世代の市場か日系企業の進出状況極めて少ない日系 まずは大手が切り込むPNG国民の日本に対する意識は非常に好意的だが、治安の悪さ、物価の高さ、汚職の横行などを敬遠して日本企業の進出は進まないようだ。進出企業が極めて少ない中、豊田通商が展開する「エラモーターズ」は代表例となるだろう。1998年に豪企業から事業買収した会社で、トヨタ自動車や日野自動車などの代理販売を行う。同社の最高経営責任者(CEO)である阿辺剛氏によると、PNGの自動車市場はトヨタのシェアが圧倒的で年間約1万台弱を販売。約760万人の人口も毎年7%ほど増えており、今後も有望な市場だという。その他の大手では、双日がPNGの国営石油公社(NPCP)と同国産の天然ガスを利用したメタノール生産事業の合弁会社を設立し、事務所をポートモレスビーに置く。また、住友林業のグループ会社が山林事業を、太平洋セメントが韓国企業から取得したセメント製造事業を現地で展開している。名称進出年事業豊田通商1998年自動車の販売代理店、エラモーターズを展開。トヨタ自動車、日野自動車、ヤマハ発動機(ボート)の製品などを扱う太平洋セメント2000年セメント工場を操業。1991年、PNG唯一のセメント一貫工場を目指して設立されたPNG─ハラセメント社が前身。韓国ハラグループの破産に伴い、PNG政府および韓国・ハラセメント社から全株式を取得。セメント販売事業を展開するほか、パラオ、バヌアツなど周辺国にも輸出。「パラダイスセメント」のブランド名で知られる住友林業07年植林などの山林事業。グループ会社の晃和木材が100%出資する現地法人オープン・ベイ・ティンバーが運営を行う双日15年メタノール生産。国営石油公社との合弁NNA豪州調べポートモレスビーの街並み。背後はトヨタ車のディーラー、エラモーターズ「この国の自動車市場はまだまだ伸びるでしょう」と、エラモーターズの阿辺剛CEO施設内でフードコートを利用する地元の男性暮らしを変えた 近代的モール名称:ビジョン・シティー・ワイガニ概要国会議事堂や各国大使館、国立大学UPNGや国立博物館が集まるワイガニ地区で2011年に開業した総合ショッピングモール。3階建て、敷地面積3万1,435平方メートル。代表的なテナントは常青集団が運営するスーパーマーケット「RHハイパーマーケット」。52カ所の店舗スペースには服飾、化粧品、家電、書籍、薬局などの国内有名店が出店。郵便局や銀行も併設されている。アクセス方法ポイントタクシー、バス、レンタカー、ハイヤー市場のターゲットとなる中産階級が好んで集まり、彼らの最新の消費動向をうかがうことができる。どのような価格帯で勝負できるかなど、彼らの懐具合に注目すると良いだろう。ここを見るべし!視察ポイント大使に 豊富な観光資源を生かせるか聞く─ニューギニア航空が日本便を週2便に増やした。日本人の観光客は増えるのか統計では毎年3千数百人の日本人が来ている。傾向を見るとこの約5年間で横ばいか減少。多くは、ここで乗り換えて他の島国に行ってしまうようだ。遺族会のような方々は来るが、観光客はあまり増えていない。治安が悪いことが何より大きな課題だ。今は約800の民族がいて、みな言語が違うといわれる。それぞれのコミュニティーが閉鎖的で民族紛争などが起こることも問題だ。国内の物価が高く、格安航空で日本から豪州のケアンズに行ったほうがずっと安いこともある。ただ、サンゴ礁に囲まれた島々はもとより、ハイランドといわれる標高の高い地域には4,000メートル級の山があり、普通の島国にはないとても住みやすい高原地域もある。そういう地域には手つかずの自然があり、観光資源にはとても恵まれている。それを生かす手立てがないのが問題。─日本企業にとって液化天然ガス資源以外にPNGの経済的な意義は直接的にはマグロや資源。PNG周辺の海域は世界有数のマグロ漁場として注目されている。また、昔から南洋材といって木材を輸出してきた。今、住友林業が唯一の大きな林業企業としてラバウルで植林を行っている。銅、ニッケル、金といった鉱物資源もある。このほか、豊田通商がエラモーターズを展開したり、太平洋セメントが生産工場を操業、商社では双日が国有企業と石油化学の合弁事業を始めている。在パプアニューギニア日本国大使館 特命全権大使 松本盛雄─中国の影響は大きいか通信大手の華為技術が、この国の通信インフラを握ろうとしているほか、中国の国有企業が道路建設などに参入している。しかし、世間で言われているほど中国人が大量に進出しているようには見えない。現時点で中国が国策としてPNGを重視しているということはないようだ。(中国とは2016年に外交40周年を迎えたが)これまで中国の最高指導者は来ていない。「パプアニューギニアは極めて親日的な国」と松本大使飲食はカフェのほか、イタリアン、中華、日本食レストランなどがそろい、映画館では先進国とほぼ同時期に新作が公開されている。NEXTアジア書評東ティモールなど中国やインドといった巨大市場から、東ティモールなど、その先の新興アジアまで。著者は2年がかりでアジア20カ国・地域、100社超の日系現地法人を訪問、実地調査を行った。本書で報告されるのは、礼賛一辺倒ではない、泥臭い「アジア路地裏経営」の実態だ。安積敏政(あさか・としまさ):甲南大学経営学部教授。1971年に東北大学経済学部を卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。同社アジア大洋州地域統括会社の副社長などを経て2007年から現職。著作に『激動す安積敏政 著 日刊工業新聞社 るアジア経営戦略―中国・インド・ASEANから中東・アフリカまで』など。2014年8月発行 3,000円+税『実態調査で見た中堅・中小企業のアジア進出戦略「光と陰」』【著者】治安の悪さ、人件費や不動産など事業コストの高さ、為替相場の不安定な通貨キナなどが問題。ただ、大幅な人口増加でいずれ人口約2,400万人のオーストラリアを超えるとの予想もある。天然資源の開発が順調に進めばさらに所得水準が上昇する可能性もあり、消費・販売マーケットとして大きなポテンシャルを秘めているかもしれない。(NNA豪州編集部 西原哲也) C理由評価進出する主な日系企業パプアニューギニアの進出魅力度