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概要

NNA_kanpasar_vol.26

10 KANPASARパプアニューギニア(PNG)では、液化天然ガスの輸出などを背景に中産階級が育って来た。資源開発は都市部をはじめ、これまでは仕事がなかった奥地にも雇用を生み出しただけでなく、土地の所有権を持つ人々に相当な金額のロイヤルティー収入をもたらしている。都市開発も進む。首都ポートモレスビーでは2015年に実施した太平洋諸国の運動競技大会である「パシフィック・ゲームズ」に際し、ポートモレスビー・ジャクソン国際空港から日本大使館のあるタウン地区までを結ぶ4車線の幹線道路「フライオーバー」を完工した。国際的イベントの誘致も開発を後押しする。昨年11月にU─20女子サッカーの世界大会が開催されたほか、18年の11月にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)もPNGがホスト国となって行われることから、宿泊施設を含むインフラ整備を急ピッチで進めている。主役は「グラスルーツ」消費市場の中心となるのは自給自足で食糧を確保し、換金作物を栽培して収入を得るグラスルーツ(草の根)と自称する人々だ。彼らは、主に華人が経営する雑貨店で日用品や家電製品といった消費財を購入している。それらの店は価格が手ごろな一方で、中国製や東南アジア製の中でもさらに低品質な商品を流通させているようで、彼らの不満は絶えない。購買力を高めるPNG人を対象に、ポートモレスビーでは11年にマレーシア系の複合企業リンブナン・ヒジャウ(常青集団)がショッピングモール「ビジョン・シティー・ワイガニ」を開業した。先進国にも劣らない品数や品質の商品が入手可能だ。成長途上の中産階級に焦点を絞れば、小売り業やサービス業の市場には期待できるかもしれない。企業が進出を検討する上で大きな問題となるのが電力・ガス・水道などのライフラインだ。特に電力は、水力発電が主流のPNGでは干ばつによって停電することもある。犯罪も比較的多く発生しており、「ラスカル」と呼ばれるギャング団の動きが活発だ。警備のコストが余計にかかるのも悩みの種だろう。文・写真 NNA豪州編集部 小坂恵敬 西原哲也ここはアジアなのかワイルドすぎる大島国パプアニューギニアNEXTアジア PART2 現地ルポ④ポートモレスビーインドネシア1キナ=35.31円(2016年12月8日時点)ポートモレスビーで旅行代理店PNGジャパンを経営する上岡秀雄氏によると、小型商店と食品スーパーしか無かったPNGにモールが出現したことは画期的だったという。「これまでレストランは外国人や一部の金持ちのためのものでしたが、外食を楽しむ家族連れをよく見るようになりました。また、週末はスポーツ観戦のほか、庭や河原でバーベキューやピクニックという過ごし方が主でしたが、『映画を見に行き、モールで買い物をし、食事をして帰る』といった、西洋的な生活が浸透してきました」(上岡氏)。個人消費については携帯電話の普及拡大が目立つそうだ。背景には、ジャマイカ系で途上国市場を狙う携帯電話キャリア、ディジセルの進出がある。同社は、電話回線の無い辺地で積極的に電波塔を建設。携帯電話を1台購入すればもう1台を無料提供するなどの販促活動を行い、あらゆる地域に携帯電話を普及させている。課金方法はプリペイド式の利用が多い。インターネット接続も1日単位で対応するなど、現金収入の少ない人々でも予算に応じて利用可能だ。最近の人気は、携帯を利用したテレビ視聴だという。ディジセルは、昨年から専用デコーダーを格安で販売した。課金は携帯と同じプリペイド式。オーストラリアのラグビーリーグの試合など、見たい時に見たい期間だけ視聴できる方式が現地の人に受けている。上岡氏はまた、新興の中産階級の消費について「スマートフォンを購入し、交流サイト(SNS)の利用に熱心。自己資金で中古車を購入できるようになったこともあり、オンラインで個人輸入を行っています」とも語った。ジャマイカ系が狙うモバイル需要消費トレンド島しょ部の中心都市ココポには24時間営業のコンビニがオープンした市内のコキ市場。「かざすと、たばこの味が良くなるんだ」という怪しげな皿を売る男首都ポートモレスビー市のホホラ市場。近代的なショッピングセンターが建つ一方で、こうした市場もまだ残っているNEXTアジア書評パキスタンウラジオストク(ロシア)別府勇午は交渉を仕事とするフリーの交渉人。人脈と話術によって難題を解決する。ある時はパキスタンのイスラム武装勢力に捕われた日本人を解放しに、またある時はロシア革命で失われた隠し財産を求めて軍港ウラジオストクにと、世界中へ赴く。漫画通の麻生太郎元首相が「『勇午』を読んでない人は外交なんて語っちゃだめ」と評したほど、社会情勢の描写は精密だ。真刈信二(まかり・しんじ):ノンフィクション作家、漫画原作者。代表作『勇午』は1994年から21年にわたり長期連載を続け、2015年に完結した。赤名修(あかな・しゅう):京都府生まれ。主な作品に『勇午』シリーズ(原作・真刈信二)、『タナトスの使者』(原作・吉田穰、濵田研吾)がある。真刈信二 作/赤名修 画講談社1994年6月発行 485円+税『勇午』【著者】