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概要

NNA_kanpasar_vol.25

18 KANPASAR最大都市カラチの空港を出ると視界に飛び込むのは米ハンバーガーチェーン、マクドナルドの店舗だ。空港から中心部までの道路の両側には新規オープンしたバーガーキング、サブウェイなど米系ファストフードチェーンの店が次々と現れる。街を走る自動車はほぼ100%日本ブランド。1億9,000万人の巨大市場とその潜在性を買い、消費財・外食・流通の外資ブランドの進出が拡大している。イスラム圏最大の人口へ1人当たり国内総生産(GDP)が1,000米ドルを超えると経済発展が加速し、耐久消費財の販売が増えるといわれる。パキスタンは現在1,300ドル強。年間1.9%で成長する人口は2030年にはインドネシアに肉薄する2億6,600万人に達し、50年にはイスラム圏最大の3億3,500万人となる見通し。しかも人口の半分が35歳以下という人口ボーナスを今後40年以上は享受できるという。「パキスタンは親中派の国─」。国際政治のニュースをみるとそうした印象を受けるだろう。しかし、実際に現地を訪れるとイメージは大きく覆される。「父の世代は英系ブランド。われわれの世代はソニーやナショナルなど日本ブランドに親しんできた」(ファルク・アーミル駐日パキスタン大使)。人々は米国の文化に憧れを持ち、日本製品に愛着を持つ。日系がほぼ100%の自動車市場の昨年度の販売は22万台超だった。一方、現在170万~ 180万台のバイク市場は、かつて日系100%だったシェアを、この十数年間で半分に落とした。街中を走るバイクのほか、ショッピングモールで人々が買い求めるテレビなどの家電は中国製が目立つ。ハイアールはラホール近郊に巨大工場を構えており、ボリュームゾーンの拡大を謳歌(おうか)。現地生産をしていない日系家電は太刀打ちできない。アーミル大使によると、今の若い世代も日本ブランドが好きだが、「品質さえ良ければ、ブランドの国籍にはこだわらない」という考えに変化しているという。テロ・強盗での日本人死者ゼロ「パキスタンは危ない国─」。ビジネス上の最大のリスクは治安だろう。毎月のように数十人が死亡する爆弾テロ事件が日本でも報じられている。実際、ショットガン付きの護衛を同乗させて車で移動する駐在員は多い。しかし、日本人に限っていえば、テロや強盗事件に巻き込まれた死亡者はこの十数年間、一人もいない。パキスタンの経済成長率の4%台は新興国としては低いが、急速な治安回復と物価の安定を背景に好景気の循環が続いカラチ市の近代的ショッピングセンター「ドルメンモール」。米系ファストフードがテナント出店している(ジェトロ提供)ている。街の人々のフレンドリーさと工場での職人気質。日本人との親和性も意外に高い。この国に対する誤ったイメージを修正することが、アジア最後の巨大市場に踏み出す第一歩となろう。人口2億人 意外な巨大市場パキスタンNEXTアジア 現地ルポ④カラチの海岸沿い、富裕中間層が多く住むクリフトン地区にあるマクドナルドの旗艦店。ドライブスルーもある(安藤公秀氏提供)文・写真 NNA編集局 遠藤堂太消費財大手のユニリーバ、ネスレ、コカ・コーラなどが現地生産を行っており、欧米ブランドはパパママストアをはじめとする市場の隅々まで浸透している。 仏カルフール系や独メトロ・キャッシュ&キャリーなどの流通業も進出。ファストフード店のダンキンドーナツ、サブウェイ、ピザハットなども店舗を順調に拡大している。インドとの核実験競争で経済制裁を受けた1998年、パキスタン第1号店を開設したマクドナルドは全国14都市に展開。今年4月には、タリバンなどの武装勢力が残存するアフガニスタン国境に近いクエッタにも進出するなど、米国文化が地方へと広がりつつある。食生活の変化や経済水準の上昇に伴う健康意識の芽生えもあり、都市部の中間層の間ではダイエットブームも起きている。タリバン地域にもマック進出消費トレンドイスラマバードラホールカラチクエッタ1パキスタン・ルピー=0.96円(9月8日時点)