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概要

NNA_kanpasar_vol.25

KANPASAR 17未踏の地、思った以上に潜在市場市場攻略の視点インドから攻めるブータン市場を攻略する上で欠かせないのがインドとの関係だ。ブータンが自由貿易協定(FTA)を結んでいるのはインドだけで、国境を接した隣国でもあるため、日用品や食品、自動車などが陸路で運ばれている。ブータンが加盟する南アジア地域協力連合(SAARC)も加盟国間の関税引き下げなど貿易の自由化を進めている。だが、インドほど高い水準で関税は撤廃されていないのが現状だ。公共交通機関が無く自動車が必須のブータンでは、こうしたインドに近い「地の利」を生かし、スズキのインド子会社マルチ・スズキや現代自動車のインド法人が、関税の税率を抑えて車両を輸出している。現代自の正規販売代理店の関係者によると、インド以外から車を輸入すると、2倍の税率になることもあるという。もう一つ、商機が見込める分野は農作物だ。日本や欧州などの国際機関が支援してきた歴史があり、農業の近代化が進みつつある。インドでは街中で売られている農作物の品質が良いとは言えない。そんな状況の中で富裕層を中心に健康志向が高まっているため、新鮮な農作物をインドへ売り込める可能性がある。一方、インドとのFTAがもろ刃の剣にもなっている。ブータンはインドへの貿易依存度が高く、政府は米ドルよりもインドルピーの外貨準備に神経をとがらせている。燃料や食品など必需品の輸入を同国に頼っているためだ。インドルピーが通貨安に振れれば、ブータン政府はあらゆる経済活動の規制に動く。12年にインドルピーの通貨危機が発生した際には、自動車の輸入が14年7月まで禁止された。ティンプー市内にある日産の販売店日系企業の進出状況日系企業、日産はEVを展開他国と同様に、ブータンでも日本車への信頼は厚い。スズキのインド子会社マルチ・スズキの小型車はタクシーに使用されるほどポピュラーだ。日系以外では韓国・現代自動車も街中に多い。ただ、最近になって話題を集めているのは電気自動車(EV)。ブータン政府は2014年にEV政策を発表し、税優遇策を設けた。車両購入には販売税、環境税、物品税などがかかるが、EV はこれらが免除される。政府は二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにする目標も掲げ、環境車の導入に力を入れている。これを商機とみたのが日産自動車だ。現地の提携相手サンダー・モーターズを通じ、EV「リーフ」を売り込んでいる。16年8月時点の累計販売台数は約70台で、うちタクシー車両が6台。ブータン政府は18年までに1,000台のEVをタクシー車両に導入する計画で、サンダー・モーターズは今年、タクシー車両向けに300台、一般消費者向けに50台の販売を目指している。現地の「食」を日本に売り込むユニークな取り組みもある。ブータン産マツタケの販売だ。放射線測定器の研究開発などを手掛けるエフユーアイジャパン(東京都港区)は14年から日本へのマツタケの輸入を始め、同年に300キログラムを販売。翌15年は前年比3倍以上となる1,000キロを売った。今年は1,500キロを販売する目標だ。インターネット通販で購入できるほか、伊勢丹新宿店やスーパーのフレスコキクチでも買える。価格はインターネット通販による直販の場合、1キロ当たり2万3,328円(税込み)。15年の売上高は約1,500万円だった。ブータン産のマツタケを扱うきっかけとなったのが、福島第1原発事故による日本の放射線量の増加だ。エフユーアイジャパンの植山宏哉研究員によると、菌類はセシウムに汚染されやすいため、より安全なマツタケを求めて輸入を開始したという。空港でタクシー車両として導入された日産のリーフエフユーアイジャパンがマツタケを仕入れている現地会社の看板ここを見るべし!視察ポイント名称ブータン研究所概要政府から委託で国民総幸福量(GNH)の実態調査をしている機関見るべき理由数年に一度実施されるGNHは国勢調査のようなもの。数カ月間かけて資料を集めて調査結果を報告しているため、関連資料も多い。ブータンの生活体系を知ることができるアクセス首都ティンプーの中心部から車で約15分住所:Langjophakha, Thimphu, Bhutanブータンは人口が約76万人と少なく、国民全体の約6割が農業に従事しているため、外資企業が利益を出せるほどの経済活動は見込みにくい。インドとの貿易協定は魅力的で活用次第では巨大市場の開拓を狙え評価:C る。だが、インド経済に左右される側面も大きく、実際はマイナス材料の方が多い。(NNA編集局 竹内悠)ブータンの進出魅力度名称開始時期概要新日本科学2011年ブータン政府系投資会社ドゥルック・ホールディング・インベストメントと畜産物加工の合弁会社を設立丸新志鷹建設11年ブータン公共事業・定住省の発注、アジア開発銀行の融資による道路工事を受注駒井ハルテック14年ブータン電力会社の発注、アジア開発銀行の資金による同国初の風力発電所建設工事を受注日鉄住金建材14年ノンフレーム工法の共同プロジェクトを開始。ブータン公共事業省の協力を得て、ティンプー郊外のドチュラ峠でノンフレーム工法を使った実証実験を実施ブータンに展開する主な日系企業NNA調べ