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概要

NNA_kanpasar_vol.23

8 KANPASAR心で守る「本物の味」飲食業の海外展開は難しい。味の統一が難しいことに加え、同じ味が受けるとも限らないからだ。ホテルオークラ東京の山里で5代目の総料理長を務め、国内外で展開する10 カ所の山里を統括する澤内恭氏(61)は、伝統の味は守りつつ、現地の方に受け入れられるよう変化を加えることは織り込み済みだと語る。「よく味の統一をと言いますが、そのままでは現地の方たちには受けいれられないこともあります。そこで私がよく言うのは心、ということです。ホテルオークラ東京では7割の人においしいと言っていただける決まった味があり、残りはお客さまに味のお好みをお聞きし、それに合わせて提供するのが基本です。だから、味が変わっていくのは当然の話なのです」(澤内氏)同じ味を出すのではなく、お客に合わせて3 割を変えると明言する。味とは相手により変えるもので、相手に合わせる心が大切だというのだ。「ですので、海外にはホテルオークラ東京で経験を積み、山里のハートを持った者を派遣するのです」(同)高い技術で7 割の確かな味を備え、残りはお客に寄り添う心で完成させる。それが山里が揺るぎなく守る味の秘密なのである。バンコクは巨大な「アジアの食都」だ。和洋中、ファストフード、ローカルフード、そのバラエティは世界中のあらゆる料理から広く深く限りなく、今や最新鋭のレストランがひしめく一大グルメシティとなった。その地で、2012 年に開業した「オークラ プレステージバンコク」は日本人の心ともいえる和食の飲食事業をリードする。ホテルオークラの旗艦ホテルであるホテルオークラ東京は言わずと知れた日本のホテル御三家の一つ。1962 年の開業時より、和食料理店「山里」をはじめとするレストラン・バーの運営を直営で行い、「食のオークラ」としての地位を築きあげてきた。また、九州・沖縄サミットやAPEC 首脳晩餐会などでの料理とサービスも担当し、伝統を受け継ぐ料理と極上のおもてなしで日本のみならず海外からの国賓や政府要人などを迎えてきた。近年、ホテルオークラは積極的なアジア進出で知られる。山里が守る和食の味は海外でも「本物」と評判だ。バンコクで物理的な品質に優れる「上物」が豊富といっても、そこに本物があるかは別の問題である。本物とは、その料理の味が秘める歴史や文化、精神性などを踏まえながら、さらに興味や驚き、感動などの心理的な満足感を与えてくれるものだ。ホテルオークラが目指す価値は、その高みにある。ぶれない七割合わせる三割18歳でホテルオークラ東京の山里に入社して以来、30年以上にわたり和食一本のエキスパート。グアム、上海など海外での経験も豊富。日本の澤内総料理長いわく「海外向きの人材」と信任は厚い─バンコク赴任の経緯は総料理長から「お前しかいない」といわれ赴任しました。タイは初めてでしたが、海外勤務の希望もありましたので抵抗はありませんでした。タイでも日本のホテルオークラの味を守るため、東京と同じメニューを基本的に提供しています。味はわずかに濃いめにしています。暑い国で汗をかくため、濃い味が好まれる傾向にあります。また、盛り付けや添えるものといった見せ方ではアジアのテイストを意識して行うこともあります。和食を提供する上でバンコクは素晴らしい都市萩原 繁(54)オークラ プレステージバンコク和食堂「山里」料理長金目鯛とあさりの酒蒸し(同社提供)地元タイ人客が好む山里の人気単品メニュー銀睦むつ西京焼き煎いり銀ぎん杏なん白魚から揚げ123タイ人は甘い味付けを好む。「みそ漬け料理は通年で人気があります」(萩原料理長)750バーツ350バーツ300バーツ「一年中、好評です。特に現地の方が好みます」(同)市内では中国産が多いが、山里は旬の日本産を真空保存して使っている。「タイ全土で人気のメニューのようです」(同)タイ人が好むメニューは脂のうま味が濃厚なものという、やや分かりやすい傾向があるようだ。「魚の中ではマグロも人気だが、一番はサーモン。刺し身の他、照り焼きにした焼き物を好みます。またマグロのトロ、A4・A5クラスの上等な牛肉も大好物」(同)オークラ プ レステージバンコク