NNAカンパサール

アジア経済を視る October, 2021, No.81

ビジネス書から語学本まで

アジア本NOW

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心に紹介。NNA編集スタッフが選んだ今号の本は、『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』(岩間一弘著、慶応義塾大学出版会)。


中国 歴史 グルメ

中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて

岩間一弘著

中国料理の世界史

世界史と中国料理のおいしい関係性をひもとく

「中国料理はなぜ世界中に広まったのか?」という素朴な疑問にとことん向き合い、世界史を絡めて解説したグルメな学術書だ。

著者は慶応義塾大学文学部の教授で、東アジア近現代史の他、食の文化交流史、中国都市史を専門とする岩間一弘氏。前作にあたる『中国料理と近現代日本 食と嗜好の文化交流史』では、日本における中国料理の進化の歴史を解き明かしたが、本書では範囲を世界に拡大。中国料理の発展の解説から始まり、アジア、欧州、米国に進出した中国料理がいかに各地で大衆化されていったのかを、索引を含めて約630ページにわたって紹介した。

特に心が躍ったのが「アジアのナショナリズムと中国料理」と題されたパート。華人が東南アジア各地に移住し街を形成していく中で、中国料理が現地の国民食として発展していく過程をシンガポールの「海南チキンライス」、マレーシアの豚肉スープ「肉骨茶(バクテー)」、フィリピンの春巻き「ルンピア」といった実例をたっぷりと取り上げながらつづる。

タイの焼きそば「パッタイ」は、1930年代にタイ政府が主導して中国料理を改良し、発案した比較的新しい料理だそうだが、その背景には同時期に起こったナショナリズム(国家主義)の高揚と、反華人感情の高まりがあったという時代背景も丁寧に記されており、近現代史の書としても楽しめる。

まさに食に歴史あり。本書を一読すれば、中国料理の味わいが何倍にも豊かに感じられるはずだ。

『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて

  • 岩間一弘 著 慶応義塾大学出版会
  • 2021年9月20日発行 税込み2,750円

その他のBOOK LIST

※書籍の紹介文は各出版社の宣伝文から引用(原文ママ)。記載の発行日、発売日、価格(消費税込み)は紙版の情報


経営学

『グローバルビジネスと企業戦略
経営学で捉える多国籍企業』

岩谷昌樹 著 法律文化社
2021年8月20日発行 2,640円
なぜサムスン電子はアジア最大のグローバルブランドになれたのか?なぜシャープは業績不振に陥り、鴻海精密工業の子会社となったのか?……さまざまな多国籍企業の成功と失敗の事例から、世界でビジネスを展開し成功するための戦略を学ぶ。

アジア 情報通信

『アジアの情報通信産業と産業クラスター』

税所哲郎 著 白桃書房
2021年8月31日発行 3,900円
調査の対象とした国・地域として、後発開発途上国であるバングラデシュ・ラオス、新興国であるベトナム、そして日本の沖縄県を中心に取り上げる。そして情報通信産業と産業クラスターに焦点を合わせ、日本とアジア地域との共創としてのビジネスのあり方を考察する。

中国 政治 批評

『ハロー、ユーラシア
21世紀「中華」圏の政治思想』

福嶋亮大 著 講談社
2021年9月15日発売 2,200円
帝国化する中国、香港の苦境、深刻な国家対立、ウイグル弾圧、一帯一路構想―― イデオロギーとしての”ユーラシア” があなたの世界認識を変える。政治・思想・文学の地平から激動の根源を探る日本と東アジアを架橋する画期的論考!

中国 経済

『ミクロデータからみる現代中国の社会と経済』

厳善平 著 勁草書房
2021年8月25日発行 5,500円
日本ではあまり利用されていない大規模調査のデータを活用し、教育、就業、階層、格差といった現代中国の抱える諸問題に焦点を絞り、戸籍、党員、民族、ジェンダー、地域など中国固有の要因が有意な影響を与えているか、時間の経過と共にどのように変化してきたかなどについて実証的に解明し、その結果を様々な制度に絡めて分析する。

インドネシア イスラム教徒(ムスリム)

『インドネシア
―世界最大のイスラームの国』

加藤久典 著 筑摩書房
2021年8月5日発行 1,012円
インドネシアに計8年間暮らし、その文化と宗教を研究してきた社会人類学者が、綿密なフィールドワークで得た多様なムスリムの声とともに、教義と実践の狭間で揺れる大国の論理と実態を描きだす。

インド 農村ビジネス

『インドビジネス ラストワンマイル戦略
SDGs実現は農村から』

松本勝男 著 日経BP
2021年9月15日発売 2,970円
本書では、インドの開発状況を踏まえながら、これまで日本では伝えられてこなかった農村ビジネスの実態やラストワンマイルの克服方法、また、困難を乗り越えた起業家らの活動を現地インタビューや写真で鮮やかに伝えます。

ノンフィクション

『アジアのある場所』

下川裕治 著 光文社
2021年8月25日発売 1,430円
「アジアがある場所」の片隅に座り、ビールを飲み、アジアの味を口に運ぶ。もうそれだけで満足するようなところがある。なぜこんなにも穏やかな気持ちになれるのだろうか。(「はじめに」より)
スコールで思いだすタイ人の流儀、ミャンマー人の作るスパイシーな寿司、ケバブで感じるイスラムの夜……
今日も僕は、「アジアのある場所」にいる。

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