NNAカンパサール

アジア経済を視る May, 2021, No.76

【アジア・ユニークビジネス列伝】

「アプリで気軽にヘリ移動」
「海峡を横切る巨大パネル」

それを売るのか、そんなサービスがあってもいいのか。アジアは日本では思いもよらない商品やサービスに出会う。斬新で、ニッチで、予想外。「その手があったか!」と思わずうなってしまう、現地ならではのユニークなビジネスを紹介する。


【インドネシア】
アプリで気軽にヘリ移動
空港から都心わずか15分

ホワイトスカイは昨年8月、スカルノ・ハッタ空港隣地にヘリポートを開設した=インドネシア・ジャカルタ、2021年3月(NNA撮影)

ホワイトスカイは昨年8月、スカルノ・ハッタ空港隣地にヘリポートを開設した=インドネシア・ジャカルタ、2021年3月(NNA撮影)

移動中は上空からジャカルタ首都圏の街並みを楽しめる=同

移動中は上空からジャカルタ首都圏の街並みを楽しめる=同

インドネシアでチャーター便事業を手掛けるホワイトスカイ・アビエーションは、ジャカルタ首都圏の空港送迎や都市間の移動など個人向けサービスの需要拡大を目指す。ヘリコプターをスマホの専用アプリからチャーターできる手軽さや、渋滞を気にせず移動できることなどを武器に顧客層の拡大を狙う。

同社は2017年、アプリを通じたヘリチャーターサービス「ヘリシティー」を開始。スカルノ・ハッタ国際空港からジャカルタ中心部までは陸路で1時間半以上かかることもあるが、ヘリなら渋滞を気にせず約15分で移動できる。

離着陸地点はジャカルタ首都圏を中心に、東は西ジャワ州バンドン、西はバンテン州チレゴンまでの72カ所のヘリポートから選べる。昨年8月には国営空港運営会社アンカサ・プラ(AP)1と共同でジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ空港隣地に自前のヘリポートを開設し利便性が向上した。

日系企業の工場が多い西ジャワ州ブカシ県チカランからジャカルタ中心部への移動も車は渋滞にはまると数時間掛かることもあるが、ヘリなら10~15分で行き来できる。

利用料金はヘリポート使用料を除いて800万ルピア(約6万円)から。ヘリポート使用料の相場は数百万ルピアという。保有機は「ベル429」と「ベル505」の2種類で乗客の定員数はそれぞれ4人と6人。

デノン最高経営責任者(CEO)は「新型コロナの影響でいくらか緩和されたが、渋滞は深刻なので工場とオフィスの往来時などの需要は高い。利用者の多くは大手企業の役員クラスで、日系企業からの依頼もある」と述べた。

また、国家災害対策庁(BNPB)などから緊急医療用や災害対策用としての需要があるほか、新型コロナウイルス感染症への不安から他者との接触を避けるため利用する人もいるという。

ホワイトスカイの本業はチャーター便の長期契約で、売上高の大半はカリマンタン島などで操業する鉱業系企業からの受注が占める。ただ、政府による鉱業分野の外資制限や輸出規制の影響で、15年ごろから受注が低迷。これを受け、多角化の一環として17年にアプリを使ったチャーターサービスを開始した。同サービスの売り上げはまだ全体の5%にも満たないが、将来の潜在性は大きいと考えている。


【シンガポール】
海峡を横切る巨大なパネル
世界最大級の洋上ソーラー

サンシープがジョホール海峡に設置した世界最大級の浮体式洋上太陽光発電システム(同社提供)

サンシープがジョホール海峡に設置した世界最大級の浮体式洋上太陽光発電システム(同社提供)

シンガポールの太陽光発電事業者サンシープ・グループは3月23日、マレーシアとの間にあるジョホール海峡に世界最大級の浮体式洋上太陽光発電システムの設置を完了したと発表した。

設備はパネル約1万3,300枚を3万個以上の浮体を使って海上に展開。発電容量5メガワット、年間発電量6,023メガワット時(推定)の電力を海底ケーブル経由でシンガポールの電力網に供給する。

設備の横にはビジターセンターが設けられ、エアコン付きの展望デッキから見学することも可能だ。新型コロナウイルス感染症の流行で外国人作業員による工事への影響は出たものの、1年をかけて完成にこぎつけた。

海、貯水池、湖など水上での太陽光発電は国土に乏しい国でも利用可能なクリーンエネルギーで、パネルの盗難や破壊といった被害のリスクが低いのも利点だ。

サンシープによると、環境の変化が激しい洋上での太陽光パネル設置には難しさもあるが、天候の変化にも耐えられ、全ての設備が常に水面に保持されるよう工夫を施したという。これを機に、今後は東南アジアや太平洋で洋上太陽光発電の設置需要を取り込んでいきたい考えだ。

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