NNAカンパサール

アジア経済を視る February, 2021, No.73

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─耐え忍ぶコロナ禍の冬編─

中国では1月に入り華北・東北地域で新型コロナウイルスの感染者が拡大。河北省の省都・石家荘市では全市民を対象に一斉スクリーニングを展開し、幼い子どももPCR検査の検体採取に臨んだ=1月6日、河北省石家荘市(新華社)

中国では1月に入り華北・東北地域で新型コロナウイルスの感染者が拡大。河北省の省都・石家荘市では全市民を対象に一斉スクリーニングを展開し、幼い子どももPCR検査の検体採取に臨んだ=1月6日、河北省石家荘市(新華社)

中国

冬に入り新型コロナウイルスの感染者が増加する中、会食をアレンジするにもいろいろと苦労がある。1月8日午後、「来週予定していた会食は延期」とのメールを主催者から受け取った。広東省政府が同日午前に開いた会見で、防疫対策のため会食の人数を10人以下に抑えるよう呼び掛けたためだ。

広東省では昨年5月以来、コロナの国内症例は確認されていないが、当局が対策を強化する理由はよく分かる。河北省では1月に入りPCR検査の結果、360人超が陽性と判明した。河北省も少し前までは感染が収まっていたはず。ひとたび広まったらあっという間なのだ。

昨春を思い出すと、会食どころか店内飲食もできない状態だった。それを思えば人数制限への協力など、どうということはないのかもしれない。寒さが和らぐころには、制限も緩和される――。そう願ってこの冬を乗り切ることにしよう。(川)


香港

香港で新型コロナの感染者が初めて確認されてから丸1年となった1月23日、九龍地区の市街地の一部で、香港政府による初の地域封鎖が行われた。新型コロナの感染者が多数確認されたためだ。全員の検査結果が出るまで自宅から外出できない厳しい内容だ。

封鎖された一帯は、高齢者、低所得層、ネパールやパキスタンなど南アジア系の出身者も多い。旧式アパートが密集し、居住環境の面で感染リスクが高いと判断したという。

当日、現場の様子を見に行くと、多くのメディアが集まり、現場の様子を伝えようと「密」な取材活動を続けていたが、警察から注意される様子はなかった。封鎖対象外のエリアでは、政府の集合制限令に反して複数人で出掛ける市民の姿が目立った。一部の人への負担が顕著となり、当事者意識の差がますます広がっているように見えた。(輝)


韓国

「3密」を避けられる野外スポーツとして、ゴルフ人気が高まっている。韓国でも数少ない男性キャディーの知人は、冬場でも多忙を極めている。

本来、繁忙期の春・秋は月平均80万円前後を稼ぎ、冬のシーズンは仕事がないため旅行に行くなど休養期間としていた。ただ、今冬は1日2ラウンド回る日もあるほどで、休みたくても休めない状況だ。

キャディーは1年通して働き続けるのは厳しい職業といわれる。体力的な疲労に加え、プレーヤーからの暴言やパワハラも少なくない。収入が減っても、働く環境が良い職場への転職を考えるキャディーがかなりいるという。

春になればゴルフ場には多くのプレーヤーが訪れる。知人は「今年は大手企業の社員並みの年棒になる可能性が高い。ただ、それまで体が持っていればの話だが…」とうつむき加減で話した。(公)


タイ

アストラゼネカ製の新型コロナワクチンが近くタイで承認される見通しという。だが、信頼性の高い欧米製ワクチンを巡っては、先進国が自国の人口を大幅に上回る量を確保。途上国への供給が不足し、批判が高まっている。

こうしたニュースを見るにつけ、新型コロナが人類にもたらしたのは、単なる感染症にとどまらないと感じる。それまで覆い隠されてきた人間本来のエゴをあらわにしてしまったように思う。タイ政府が新たに始めた現金給付でも、デジタルスキルに長じた層が先んじて申請し、本当の困窮者は行き渡らない問題が指摘されている。

限られた資源をいかに公平に分け合うか。貧富や国籍、宗教、性別などの違いがさまざまなあつれきを生んでいる昨今。「自国第一主義」を前面に押し出し、対立を助長した大統領は去った。人々は再び協調の精神を取り戻せるだろうか。(須)

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