NNAカンパサール

アジア経済を視る November, 2020, No.70

【アジア・ユニークビジネス列伝】

「空きスペースで昼寝を事業化」
「“車中泊”用品貸します」

それを売るのか、そんなサービスがあってもいいのか。アジアは日本では思いもよらない商品やサービスに出会う。斬新で、ニッチで、予想外。「その手があったか!」と思わずうなってしまう、現地ならではのユニークなビジネスを紹介する。 


【タイ】
空きスペース活用
「昼寝」を新事業に

安定した寝姿勢を保つマットレスを用いたベッドや、抱きまくらなどが置かれた仮眠室兼会議室「ナップステーション」=8月24日、タイ・バンコク(豊田通商タイランド提供)

安定した寝姿勢を保つマットレスを用いたベッドや、抱きまくらなどが置かれた仮眠室兼会議室「ナップステーション」=8月24日、タイ・バンコク(豊田通商タイランド提供)

会社での昼寝=サボりというのは過去の話。今や昼寝は仕事のパフォーマンス向上につながると推奨され、「パワーナップ(積極的な仮眠)」なるワードも登場。そんな中、豊田通商のタイ法人、豊田通商タイランドが、新型コロナウイルス感染症の影響で増えているオフィスの空きスペースを活用した昼寝のビジネス化に取り組み始めた。

8月下旬にバンコクにある豊田通商タイランドグループの自社ビル内に、広さ30平方メートルほどの仮眠室兼会議室「ナップステーション」を設置。ここで650人のグループ社員を対象に、半年程度をかけて事業化に向けた実証を進める。

照明なども工夫を凝らしリラックスを演出。15分の交代制で、最大4人が同時に利用可能(西川提供)

照明なども工夫を凝らしリラックスを演出。15分の交代制で、最大4人が同時に利用可能(西川提供)

参考にしたというのが、寝具メーカーの西川が東京オフィスに設置した「ちょっと寝ルーム」。短い時間で質の高い仮眠の機会を提供できるよう、仮眠用のベッドや椅子のほか、照明やアロマ、ヒーリング音楽などにもこだわった社内施設だ。

「近年、就業中に眠そうにしている社員が増え、労働生産性の低下を憂慮していた。昼休みに交代で仮眠できる部屋を作ったらどうかというのが最初の発想だった」と語るのは、豊田通商タイランドの子会社で、自動車関連以外の事業強化のため設立された「TOYOTSU L&C(タイランド)」の市原暁ゼネラル・マネジャー。

「社員の生産性の向上はどの企業にとっても課題だ。また、新型コロナの感染予防のため在宅勤務が増えており、各社のオフィスには使われていないスペースが増えている。その有効活用という意味でもニーズはあると考えている」と期待を見せる。

「ナップステーション」では西川製のマットレスを採用。部屋の施工も、ちょっと寝ルームの内装、施工を手掛けているアディスミューズのタイ法人に依頼した。「社員の利用頻度や生産性向上への効果などを実証した上で、対外向けのビジネスとして立ち上げたい」(市原氏)と意気込む。(NNAタイ 須賀毅)


【韓国】
「車中泊」ブームを後押し
宿泊用品をレンタル

現代自は車中で用いる宿泊用品のレンタルを開始。サービスの名称「ホイールピング」は車(Wheel)とキャンプ(Camping)を掛け合わせた造語(同社提供)

現代自は車中泊で用いる宿泊用品のレンタルを開始。サービスの名称「ホイールピング」は車(Wheel)とキャンプ(Camping)を掛け合わせた造語(同社提供)

新型コロナウイルス感染症の流行で「3密」を避ける傾向が強まる中、韓国では乗用車で寝泊まりしてキャンプを楽しむ「車中泊」が人気だ。

そこに目を付けたのが完成車最大手の現代自動車。同社のスポーツタイプ多目的車(SUV)「サンタフェ」または「ツーソン」をレンタルすると、日除けテントや椅子、ベッド代わりのマット、車用の蚊帳といった各種用品を1泊2日で貸し出す新サービス「ホイールピング」を開始した。10月から11月にかけての期間限定で、計7回・計140組280人が対象となる。

背景には、「車中泊旅行」の増加がある。旅先で宿を気にする必要がなく、宿泊代がかからない点はキャンピングカーと同じだが、一般の乗用車で寝泊まりするのが車中泊の最大の特徴だ。不特定多数との「3密」を避けることができるため、新型コロナの感染リスクを抑えられるメリットもある。

現代・起亜自動車のアン・ユギョン・グローバル広報担当はNNAに対し、「海外旅行に行けない状況に加え、社会的距離を維持しなければならないため、人との接触を最小限に抑えられる車中泊人気はしばらく続くだろう」とコメント。「電気自動車(EV)が普及すれば車中泊用品に使う電力供給も容易になり、寝泊まりするためのさらなる環境改善も期待できる」との見方を示した。(NNA韓国 清水岳志)

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