NNAカンパサール

アジア経済を視る June, 2019, No.53

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ ─新元号「令和」編─

(新華社)

(新華社)

中国

日本では1日から新たな時代「令和」がスタートした。お祝いムードが日本列島を覆う中、新元号の由来となった歌集「万葉集」が一躍脚光を浴びている。

一方で、去りゆく時代「平成」にも注目が集まった。テレビを見ていると、平成の由来となった字句が記されている漢籍「書経」の石碑があるという西安の博物館が映し出された。「どこかで見たような覚えがある建物だな」と思い、よく見れば、なんと数年前に知人と訪れたあの博物館ではないか。当時はそのような石碑があるとはつゆ知らず。このことを知人に話すと、「知っていれば見ていたのに」と悔しがった。

次に西安を訪れる機会があれば、今度はぜひ平成の由来となった「地平天成」の文字が刻まれた石碑を見てみたい。ただし、あの博物館は石碑だらけなので、この4文字を探し当てるのはかなり骨が折れそうだが。(川)


香港

令和が幕を開けた5月1日。ここ香港でも多くの現地紙が前天皇の退位について大きく紙面を割いて伝えた。一面を使って掲載した新聞もあり、関心の高さがうかがえた。

平成を振り返ると、日本とアジアの結び付きが強まった時代だったことは間違いないだろう。香港の場合は日本からの農林水産物・食品の輸出が近年大きく増えた。大正の終わりと昭和初めに生まれた自身の祖父母はイチゴ農家だったが、海外のスーパーに日本産の果物が日常的に並ぶ時代が来るとは夢にも思わなかったはずだ。自分自身が海外で働いているなんてことも、平成を迎えた子どもの頃には想像もしていなかった。

日本の食品輸出・観光に関する戦略からも、関係性が強まっていく流れは今後も続いていくことだろう。令和は日本とアジアにとってどんな時代となるか。現地からウオッチしていきたい。(祐)


インドネシア

新元号となり新たな時代を迎えた日本の盛り上がりは、遠く離れたインドネシアにもその雰囲気が伝わった。1日の即位式にはインドネシアのテレビ局も皇居前の様子を生中継した。インドネシア各地で実施されたメーデーの集会と、即位を祝う人でにぎわう皇居前広場、それぞれの熱気を半日ほど交互に映すテレビ局もあった。

「令和おめでとう」「令和もよろしくお願いします」。インドネシアの知人から日本語でメッセージが届いた。新春のようなあいさつからも、改元が祝い事としてこちらに伝わっていることが分かる。

日本は10連休中。欲を言うとこの大型イベントの空気も少しお裾分けしてほしかったものだ。こんなに休んで日本は大丈夫なのかという気もするが、やはりうらやましい。1カ月後に待つ断食明け大祭(レバラン)の9連休についてついつい考えてしまう。(幸)


インド

「令和元年」という表記が早くもしっくり、なじみつつある。

新元号は「平和」「融和」の和の字が入っているところがいい。中国語を学んだ経験がある者からすると、元年の「元」の字も和み系。その中国語読みが、円を意味する「圓」と同じ「ユエン」で、響きが柔らかいからだ。そんなわけで令和元年の4文字からは、福福しい印象を受ける。

漢字っていいな。そう思いながら、全く異なる形状の言語も、学べばそれぞれに趣があるのだろうなと、想像する。ヒンディー語やタイ語の新聞を見ると、悲しいかな全ての文字が同じに見えてしまう。味気なく映るのは、文字が持つ意味や声に出した時の響きを理解できていないからだろう。

「僕の名前にはこんな意味があるんだ」と、うれしそうに教えてくれたインド人の顔が頭に浮かぶ。新しい語学の習得、まだ、間に合うかな。(天)


オーストラリア

日本では元号が変わり、インターネット上では天皇制に関する議論が飛び交っている。4月30日までの空気を閉じ込めた「平成の空気」なる缶詰が製造されるなど、令和元年は各方面で盛り上がりを見せている。

オーストラリアのメディアでも日本の皇室儀礼は大きく取り上げられた。公共放送ABCでは退位礼正殿の儀が同時中継され、1日付の地元紙オーストラリアンでは1面から2面にわたって、新天皇が青年時代にオーストラリアで休暇を過ごしたことが写真付きで紹介されていた。母国の重大な転機を他国のメディアを通して見るのは不思議な感覚だった。

オージーの知人に元号制度について説明してみると、西暦と和暦を併用するなんて非効率的だからいっそ統一すれば良いと言われた。およそ1,400年の歴史の重みは、メディアからの情報ではなかなか伝わらないようだ。(岩下)

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