NNAカンパサール

アジア経済を視る January, 2019, No.48

ラフティング国際大会で町おこし

徳島県三好市の挑戦

スポーツの国際大会の開催を通じて、地域の活性化に取り組む自治体が増えている。徳島県の三好市もその一つだ。過疎の進む地域を元気づけようと、自治体や民間ボランティアを巻き込んで、2017年にラフティングの国際大会の招致に成功。地域に活気と自信をもたらした取り組みは、新たな外国人旅行者を呼び込んだ成功例といえる。

23カ国・地域が参加

三好市で開かれたラフティング世界選手権に参加したインドネシアチーム(同市提供)

三好市で開かれたラフティング世界選手権に参加したインドネシアチーム(同市提供)

徳島県の最西端に位置する三好市の人口は2万6,000人余り。過去5年で1割ほど減少し、過疎化が進む。吉野川沿いで観光施設RiverStation West-Westを運営する西村洋子氏は、大歩危・小歩危峡で有名な吉野川の激流を活用したスポーツの国際大会を招致することで、街を盛り上げたいと考えた。

「こんな小さな市にそんなことができるわけがない」と西村氏の提案に対する行政の答えは当初冷ややかだった。三好市の市長や観光課の担当者にねばり強く訴え続ける一方、毎年行われているラフティングレース「大歩危リバーフェスティバル」を通じて、大会運営のノウハウや人脈づくりを進め、およそ10年をかけて行政を動かした。

国際大会招致に当たっては、宿泊施設や輸送手段、観覧者の安全確保、大会予算の工面、海外からの参加者に対する言葉の問題など課題は山積みだったが、西村氏を中心とした民間と行政が一体となって一つずつ課題をクリアすることで、2017年にラフティング世界選手権の開催にこぎつけた。

吉野川の激流はラフティングの競技会場として高い評価を得た(三好市提供)

7日間にわたる大会には、23カ国・地域から選手・関係者合わせて約800人が参加。大会期間中の来場者は3万人で、宿泊や移動、観光などによる経済効果は約8億円と試算されている。西村氏は「何より地域が主体となって国際大会を開催できたことが、人々の自信となり、地域の良さを再認識できたことが大きい」と語る。ラフティング世界選手権の成功は、18年8月のウェイクボード世界選手権大会の開催へとつながった。

西村氏は、スポーツを通じて地方活性化に取り組む団体や企業へのアドバイスとして、「自分の地域が『何で勝負できるか』を客観的に考えること」と「地元の人々をいかに巻き込んでいくか」を挙げる。

スポーツ産業の海外展開
日本政府が後押し

日本のスポーツビジネスの海外展開が本格化しようとしている。経済産業省、スポーツ庁、日本貿易振興機構(ジェトロ)、日本スポーツ振興センター(JSC)は2018年7月、スポーツビジネスの国際展開の促進を目的に基本合意書を締結。経済成長によって、健康意識が高まる東南アジア諸国連合(ASEAN)を重要市場と位置付けている。

日本のスポーツ関連市場は15年時点で5兆5,000億円。国際競技大会の招致・開催や関連産業の国際展開などを通じて、20年までに10兆円、25年までには15兆円に拡大することを目指している。

ジェトロは18年3月、インドネシアのジャカルタで「健康長寿広報展・商談会」を開催。日本の健康長寿を支える、53のヘルスケア関連企業や団体が商品やサービスを紹介した。著名なスポーツ選手らがパフォーマンスを披露したり、来場者に運動を体験してもらったりしてスポーツの魅力も伝えた。今年3月8日〜10日にはフィリピン・マニラでも同様のイベントを開催する予定だ。スポーツ体験を売りにした訪日の促進も支援する。

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