NNAカンパサール

アジア経済を視る September, 2018, No.44

【NNAコラム】各国記者がつづるアジアの“今”

テイクオフ─鉄道編─


中国

中国の高速鉄道は車掌が多い。在来線も同様なのだが、1編成ではなく、ほぼ1車両ごとに乗務している。自動券売機を導入し、改札を自動化してみても、なぜか車内では伝統の人海戦術を捨てきれないらしい。

で、どんなことをするかといえば、もっぱら受け持ち車両の通路にごみを捨てる不届き者に注意を与えたり、通路にはみ出した大きな荷物を取り締まったりといった仕事。他にもあるのかもしれないが、乗客に見えるのはそれくらい。先日乗った広州―深センの列車でも、1時間余りの行程をひたすら荷物の見回りに費やしていた。

中国自慢の高速鉄道を国内外にアピールする際、必ずといっていいほど登場するのが笑顔はじける女性車掌たち。ただ残念ながら実際には、荷物棚から数センチはみ出した荷物に目をつり上げて怒る彼女たちにしかお目にかかったことはない。(羊)


タイ

電車の中で便意を催した経験はあるだろうか。自分は以前、デトックス効果で人気となったタイ式ミルクティー店「チャートラームー」のローズティーを飲んだ時に高架鉄道(BTS)で催して、絶望的な気持ちになった。

先にBTSの座席の上に大便が乗り、隣の席の人らが手で鼻を覆う写真がネットに投稿され話題となったが、これもBTSに乗って苦労した人が多いから。BTSの主要な23駅は、トイレがあるものの、乗客はスタッフや警備員に使用を願い出なければならない。延伸した路線の駅では自由に使用できるのと対照的だ。さらに、BTSは公式に「使用可」と言っているのに、スタッフがトイレはないと言ったり、スタッフ用と回答することも多い。

日本や中国など海外に行くと、1駅に1トイレは常識。悩める乗客の問題解決のためにも、早急なアクションが必要だ。(蔡)


インドネシア

ジャカルタ首都圏の電車が、閉まらないドアから乗客がはみ出し、さらに車両に入り切らない群衆を屋根の上に鈴なりに乗せたまま走るというのは、もはや過去の話。それでも朝夕の通勤電車は、日本の大都市と同様に大混雑する。

日本民営鉄道協会の定義でいうところの、「体が触れ合い、相当な圧迫感がある」という混雑率200%はしょっちゅう。女性専用車両も例外ではない。電車の揺れに体を支えきれずに押された女性が、隣の人と押し問答になりけんかに発展。髪を引っ張り合う様子をとらえた動画がネットに拡散された。

インドネシアで長年、車移動に慣れた駐在員が、本帰国後の生活で不安になることの一つが日本の通勤列車。当地で予行練習を、とは言えない。だが毎日の通勤地獄にストレスを感じているローカル社員の苦労なら、想像することはできると思うのだが。(麻)

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