NNAカンパサール

アジア経済を視る March, 2018, No.38

2018年3月1日
信頼のIWASAKIブランド訴求

照明機器を主力とする電機大手、岩崎電気(東京都中央区)は海外での売上高を伸ばすべく、東南アジア諸国連合(ASEAN)と北米市場の開拓に力を入れている。特に、これからインフラが整備が加速し、LED道路灯などの需要拡大が見込まれるベトナムで、これまで培ってきたIWASAKIブランドの信頼性を訴求し、これを取り込む構えだ。

ライティングソリューション事業本部 海外営業部長の二瓶賢太郎氏

2020年3月期までの中期経営計画で、売上高の25%以上を海外(照明と光・環境事業)が占めるよう目指す岩崎電気。特にASEANの北部の開拓に注力中だ。有望市場と位置付けるのがベトナムやタイ。ライティングソリューション事業本部 海外営業部長の二瓶賢太郎氏は「ベトナムではインフラがどんどん整備されていくのに伴い、道路灯の需要が発生している」と話す。「ベトナム政府は従来型の置き換えや新規設置する道路灯は全てLED灯にする方針を打ち出している。ホーチミン市だけでも20万~30万基の需要があるとみられる」とし、大きな可能性があるとの見方を示す。

ASEANでは経済成長に伴い電力供給が追い付いておらず、域内でインフラが最も整っているとされるタイでさえ、一部の電力は周辺国から調達している。この状況の下、従来型より4~5割の電力消費を削減できるLED灯の需要は非常に大きい。

タイで10万本販売

岩崎電気の渡邊文矢社長(現会長、左から2人目)、タイ法人アイ・ライティング・タイランドの阿部社長(同3人目、15年設立時)

シンガポール法人のアイ・ライティング・アジア・パシフィックを設立したのは1988年。以後、中国や米国、オーストラリアなどで拠点を設け、15年にはASEAN市場開拓に本腰を入れるためアイ・ライティング・タイランドを、16年にはマレーシアでELMライティングを立ち上げた。タイやマレーシアの日系企業は「やっと進出したか」と歓迎。現地法人を作ったことで認知度は上がり、日系や地場系企業の工場、オフィスなどに製品は導入されている。オフィスで使われる蛍光灯型LEDランプ「T8」はこれまでにタイで10万本が売れた。イオンのマックスバリュ(タイ・ナワミン店)でも駐車場用の大型LED投光器が使われている。同国での売上高は設立から2年間は堅調に伸びている。今後2年でさらに増やす計画だ。



道路灯、受注相次ぐ

カンボジアでは、日本の外務省・国際協力機構(JICA)による「国道1号線改修計画」での道路照明を16年に受注。1号線の始点から4キロメートルにわたりLED道路灯238基が導入された。

また、電子機器部品大手ミネベア(現ミネベアミツミ)との協業により、同社の持つ無線ネットワークを生かした次世代制御システムに対応する無線機能付き高効率LED道路灯・街路灯5,800基以上を、カンボジア国内で15年から納入。無線ネットワークで結ばれたこれらの照明は自動的に調光制御し、電力消費を大幅に削減できるという。

照明は空間で設計

照明は単に高出力であればいいというものではない。照明機器が信頼できるものであることは大前提だが、どのように設置すれば物がよく見えるか、まぶしすぎないかという、3次元の空間における照明の設計をする必要がある。

例えばゴルフ場のグリーンがきれいな緑色に見えることが良い照明の条件であるとは限らない。アジアに駐在するビジネスパーソンなら心当たりがあるかもしれないが、ゴルフのプレーヤーにとってその照明は、ボールが見えにくい照明である可能性もある。どの機器をどう設置すれば最適に見えるのか。長年ノウハウを積んできた同社が選ばれている理由が分かる。

その場ですぐに提案

ライティングソリューション事業本部 ソリューション事業企画推進部長の武藤学氏

タイの場合、最近はショールームを設ける日系企業が増えてきた。工作機械メーカーなどが工場の一角に自社製品の展示場を作っているのだ。「タイには“営業技術”の人員を配置して、パソコンを使って照明光の当たり方、影のでき方などをその場でシミュレーションしてすぐに提案できるようにした」とライティングソリューション事業本部のソリューション事業企画推進部長 武藤学氏は語る。

まずは、独自に開発した光環境評価システム「QUAPIX(クオピクス)」により、「輝度分布画像」を作成。この画像を処理し、人間の感覚量(クオリア=明るさ、目立ち、視認性)をイメージ化して出力する。これによって、これまでの照度のみの照明設計に比べ、より人の感覚に近い尺度で光の環境を診断できるという。

人間の感覚をビジュアル化

また、個別の顧客向けに内覧会という形で製品をじっくり見ていただく機会を設けている。その顧客に適すると思われる照明機器やサービスを展示するのだ。通常の展示会などではなかなか落ち着いて話すことはできないが、内覧会は「ゆっくり見られ、話ができた」と好評を得ている。

タイやマレーシア、シンガポールなど各国の拠点ではきょうも営業技術者たちが顧客のために走り回っている。







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