NNAカンパサール

アジア経済を視る August, 2017, No.31

インフラ編[7位〜10位]

台湾高速鉄路、日欧対象に車両など入札へNNA POWER ASIA 2017年7月4日付

台湾

台湾高鉄の現行700T型車両は川崎重工業、日本車輌製造、日立製作所が製造

台湾高速鉄路(台湾高鉄)は、車両や信号などの運行システムを更新するために国際競争入札(ICB)を行う方針を固めた。設備などの調達額は1,000億台湾元(約3,690億円)規模に上る見通し。高速鉄道を運行するドイツやフランス、日本を対象に関心表明要請書(REOI)を送付する予定で、日本企業にとっては新たな商機となりそうだ。

現地報道によると、台湾高鉄の車両や運行システムの契約をめぐっては、フランスとドイツの欧州企業連合と日本企業連合が激しく争った。当時は欧州勢が有利とされたが、1999年に台湾を襲った「921大地震」を機に、同じ地震多発国の日本に軍配が上がった経緯がある。

一方、車両と運行システムの更新に当たり、台湾高鉄は再び入札を行う考え。開業当時から現在まで日本製の車両や信号システムなどを使っているが、更新時に日本企業が価格を吊り上げる可能性がある点や、部品の交換や施設の維持修理を頻繁に求められかねない点などを考慮し、競争入札を行うのが得策と判断したもよう。

日立、ミャンマーで社会インフラ強化
エレベーター拡販、IT連携視野NNA POWER ASIA 2017年7月11日付

ミャンマー

社会インフラ整備とITを組み合わせた事業を強化すると語る日立製作所の東原敏昭社長=7月10日、ヤンゴン

日立製作所の東原敏昭社長は7月10日、ミャンマー最大都市ヤンゴンで記者会見し、ヤンゴンの今後の都市開発をにらみ、社会インフラ整備とITを組み合わせて事業を強化する方針を明らかにした。布石としてエレベーターや変圧器などの拡販を進めている。ヤンゴンでは13日まで社会貢献活動の一環として日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)7カ国の学生を集め、「持続的な街づくり」をテーマにした次世代リーダー育成の会議を開いている。

東原社長は、ミャンマーでの社会インフラ事業の展開について「交通渋滞やエネルギー不足といった問題に対し社会インフラの導入を考える一方、デジタル化が急速に進む中、同時並行して情報化の流れを組み合わせた価値を提供することが必要」と強調。日立が力を入れる社会イノベーション事業を「ミャンマーに適した形で提供していく」と語った。

ミャンマーでは2015年以降、日立産機システムの変圧器生産・販売合弁会社、日立ソー・エレクトリック&マシナリー(HSEM)や、昇降機販売合弁会社、日立エレベーター(ミャンマー)などを通じて社会インフラ事業に乗り出している。東原社長は「今後は社会課題をどう解決するかという大きな視野で事業を進めていく」と述べた。エレベーターを導入したビルでは将来、監視カメラの導入といった需要が出てくる可能性がある。

住宅地に変わるタイの港町
開発各社が先行投資、都市形成へNNA POWER ASIA 2017年6月29日付

タイ

低層住宅の建設が進むラヨン県

タイ東部ラヨン県の中心部で、住宅開発各社が投資に動き出している。同国は首都バンコク付近に人口が集中するが、経済特区(SEZ)「東部経済回廊(EEC)」構想により人が移り住んでいくことも予想される。

バンコクに比較的近い静かな港町──。ラヨン不動産協会(RREA)のナタヌン会長は、ラヨン市周辺をそう表現する。首都から自動車で3時間弱の距離にあり、海岸沿いを西に進めば工業団地、東に進めば手頃なリゾート地として有名なサメット島がある。

ただ、政府がEEC計画を打ち出した2年前、ラヨン市内のスクンビット通り(国道3号線)沿いの一部では、地価が30〜40%急騰。バンチャン郡でも、郡内のウタパオ空港の開発計画が示されたことで土地の価格が上昇しているという。

ナタヌン氏は「EECで思惑買いが発生している」と説明する。ラヨン市近辺で住宅を購入する人は従来、工場勤務のエンジニアとその家族が主流だったが、EECによりラヨンに移り住む外国人需要も増えていくとみている。

同氏は「ラヨンの工業団地に勤務する日本人では、チョンブリ県パタヤから通勤している人が多い」と指摘。ただ、ウタパオ空港開発で航空産業が集積していくと、ラヨンも発展し、居住場所としてラヨンが選ばれるケースが増えていくと予測する。

日系特区が資金調達を多様化
カンボジア、国連機関も融資へNNA POWER ASIA 2017年6月30日付

カンボジア

融資案件の組成に向け覚書を交わすプノンペン経済特区社の幹部と国連開発計画の関係者ら=6月29日、プノンペン

カンボジアで日系の経済特区(SEZ)運営会社が、資金調達に知恵を絞っている。プノンペンSEZが国連開発計画(UNDP)と融資案件で覚書を交わしたほか、タイ国境に近いSANCOポイペトSEZも日系金融機関からの資金調達を検討。地場の金融機関は金利が高く、事業拡大にはSEZ運営会社の負担が大きくなりがち。資金の調達先を多様化して安定運営に尽力し、日系など外資企業のさらなる投資を呼び込む狙いだ。

プノンペンSEZなどを運営するプノンペンSEZ社(PPSP)は6月29日、UNDPの社会インフラ事業に資金協力する「ソーシャルインパクトファンド」に選ばれ、覚書を交わした。カンボジアの事業が選ばれたのはPPSPが初めて。UNDPが投資家とPPSPの仲介役となり、社会インフラの支援に乗り出す。

プノンペンSEZ社は国連開発計画と協議しながら、来月にも事業計画をまとめる。再生可能エネルギーや排水処理、労働者研修などが柱となるが、詳細は今後詰める。事業規模は数十億円程度になる見通し。国連開発計画は、PPSPの事業がカンボジアの社会経済に大きく貢献していることを選定の理由に挙げている。

経済特区の開発は、多額の資金力が必要になる。土地や電力、水などのハードを一から整備する必要があり、運営開始後も入居企業が抱えるトラブルへの対応といったソフトの強化が不可欠だ。

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