NNAカンパサール

アジア経済を視る July, 2017, No.30

ようこそ、わが州へ!

グアナフアト州

日系の自動車関連企業約90社が進出するグアナフアト州はメキシコ自動車産業の中心地ともいえる。ティア1(一次下請け)までの進出が一服し、裾野を広げるためティア2(二次下請け)、ティア3(三次下請け)メーカーが必要とされる今、州経済開発局日本代表のロドルフォ・ゴンザレス氏は「中小企業にこそ進出してほしい」と呼びかける。

グアナフアト

雇用増の成果を訴える州政府の看板

ゴンザレス氏

ゴンザレス氏が強調するのが州立の職業訓練センターIECA(スペイン語でINSTITUTO ESTATAL DE CAPACITACIÓN=イエカ)だ。元々農業従事者が多かったグアナフアト州の労働者を工場で働けるように訓練する機関で、全州に28カ所ある。レオン市、セラヤ市、サラマンカ市など自動車関連メーカーが多い場所でも新たに建設中だ。

特徴は企業のニーズに基づいた訓練プログラムを組めること。グアナフアト州進出を予定する企業が自社の生産設備を使用できるようなプログラムを作成し学生を訓練する。また、工業高校最終年の生徒を対象に、卒業後に雇用することを前提にその企業専用の訓練プログラムを実施できる。プログラムは有料で実施するが、州政府が一定の割合を補助する。

タイヤ大手、イタリアのピレリは既存のセラヤIECAでプログラムを実施。高い効果が得られるとしてセンター内に自社専用の訓練施設を立ち上げたという。

毎年6.5万人

イラプアトIECAでの訓練の様子(グアナフアト州政府提供)

自動車産業が集積し、人材不足になっているとも言われるが、ゴンザレス氏は「州の人口約580万人のうち労働力は約220万人。サンルイスポトシ州やアグアスカリエンテス州、ケレタロ州の労働力を合わせた数と同じだ。平均年齢は24歳と若い」「州の労働力は毎年6万5,000人増えている」と話す。

もちろん、全員が即戦力というわけではないだろう。ただ「この2〜3年で企業が一気に進出してきたので一時的に人材不足になった側面はあるかもしれないが、(自動車産業が集積する同州で働き口を求めて)州外から移動して来る人や、出稼ぎに行っていた米国から戻って来る人も増えている」という。特に米国からの帰国者は英語ができ、米国流ビジネスのやり方も知っており戦力になる。

競合はまだ少ない

北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉は8月にも始まる見込み。交渉の行方は注視すべきだが、ゴンザレス氏は投資を進めるよう呼びかける。「この2〜3年で進出してきた日系企業は工場を大きくするところが多い。グループ企業だけでなく、新しい顧客とも取引できるようになるからだ。さらに、アジアと異なり、ここには競合はまだ少ない。メキシコへの投資を検討してほしい」。


ハリスコ州

グアナフアト州に隣接するハリスコ州は近年、自動車産業誘致に力を入れている。州貿易振興庁ゼネラル・マネジャーのルーベン・レセンディス氏、州国際プロモーションオフィスのヘスース・デ・ロス・サントス氏が州を紹介する。

ハリスコ州ラゴス・デ・モレノの教会

ハリスコ州にはホンダや旭硝子、大同メタルなど日系の自動車関連企業が19社、自動車以外では花王やヤクルトなど15社が進出している。ジョブホッピングが多いのは中央高原(バヒオ地域)共通の悩みだが、州の離職率は全国的にも非常に低い年間約2.5%だ。以前は高かったのだが、10年ほど前からIT産業が州都グアダラハラ一帯のグアダラハラ・メトロポリタン・エリアに集まり始めて、下がってきている。

州から航空直行便が米国の多数の都市、ドイツ、韓国、香港などに飛んでいる。中国〜グアダラハラ〜チリ便も交渉中だ。

インセンティブ

レセンディス氏(右)、サントス氏

州政府は進出する企業が土地を購入、またはリースした場合、インセンティブを付与している。メキシコには、会社が従業員の給与の総額の約2%相当を納める従業員給与税(地方税)があるが、ハリスコ州は会社設立1年目の負担はゼロ、2年目は1%、3年目から2%としている。

また、会社を運営するにはさまざまな許認可を取得する必要もある。州は企業に対して各種サポートを行う人員を無期限で派遣し、連邦政府や州政府の適切な窓口をワンストップで紹介する。

ワーカーの研修用として補助金も支給する。雇用者数や投資額、工場の場所などにより支給する額は異なっている。

近隣の州では人材獲得が難しくなっている所もあるが、ハリスコ州には全国的な有名大学が12校あり、毎年、工科系の学生約7,700人が卒業している。このうち約5,500人がハイテクエンジニアリング系であり、人材は豊富だ。

調達率引き上げはチャンス

乗用車の場合、北米自由貿易協定(NAFTA)域内で62.5%以上の部品を調達すれば域内関税はゼロ。再交渉によって現地調達率が引き上げられれば(「原産地規則」の見直し)、域内、特にメキシコでは調達需要が高まるため、日本のサプライヤーにとっては進出のチャンスだ――。

今回の取材で会ったメキシコ側関係者の多くがそう話したが、最も強く主張していたのがレセンディス氏だった。日系完成車メーカーに20年以上勤め、日系企業の仕事ぶり、製品の品質は熟知している。NAFTAの再交渉は8月に始まる見込みで結果がどうなるかまだ分からないが、調達率が引き上げられればピンチとみる向きが少なくない日本側とは好対照だった。

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